2/96 水薦苅 信濃乃真弓 吾引者
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題詞:久米禅師娉石川郎女時歌五首
題訓:久米禅師(くめのぜむし)が石川郎女(いしかはのいらつめ)を娉(つまど)ふ時の歌五首
原文:水薦苅 信濃乃真弓 吾引者 宇真人<佐>備而 不欲常将言可聞 [禅師]
訓読:み薦刈る 信濃の真弓 吾が引かば 貴人さびて いなと言はむかも [禅師]
仮名:みこもかる しなぬのまゆみ あがひかば うまひとさびて いなといはむかも
校異:作→佐 [元][金][類]
うまひと(貴人):徳の高い人。
~さぶ:の様に振る舞う。
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原文:三薦苅 信濃乃真弓 不引為而 強<佐>留行事乎 知跡言莫君二 [郎女]
訓読:み薦刈る 信濃の真弓 引かずして 強ひさるわざを 知ると言はなくに [郎女]
仮名:みこもかる しなぬのまゆみ ひかずして しひさるわざを しるといはなくに
校異:作→佐 [元][金][類]
***私的解釈***
修正:三薦苅 信濃乃真弓 不引為而 強留<作>行事乎 知跡言莫君二
訓読:み薦刈る 信濃の真弓 引かずして 強ふるさ業を 知ると言はなくに [郎女]
仮名:みこもかる しなぬのまゆみ ひかずして しふるさわざを しるといはなくに
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原文:梓弓 引者随意 依目友 後心乎 知勝奴鴨 [郎女]
訓読:梓弓 引かばまにまに 寄らめども 後の心を 知りかてぬかも [郎女]
仮名:あづさゆみ ひかばまにまに よらめども のちのこころを しりかてぬかも
***メモ***
原文:梓弓 引者随意 依自友 後心乎 知勝奴鴨 [郎女]
訓読:梓弓 引きはまにまに 寄らじとも 後の心を 知りかてぬかも [郎女]
仮名:あづさゆみ ひきはまにまに よらじとも のちのこころを しりかてぬかも
目→自に。
思いのままに梓弓を引きなさい。寄り添わなくても、それは後のあなたの気持ちがどうなるか分からないからです。
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原文:梓弓 都良絃取波氣 引人者 後心乎 知人曽引 [禅師]
訓読:梓弓 弦緒取りはけ 引く人は 後の心を 知る人ぞ引く [禅師]
仮名:あづさゆみ つらをとりはけ ひくひとは のちのこころを しるひとぞひく
つら(弦)、を(緒):弓の弦、ひも。
取り佩く:腰に帯びる。
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原文:東人之 荷向篋乃 荷之緒尓毛 妹情尓 乗尓家留香問 [禅師]
訓読:東人の 荷前の箱の 荷の緒にも 妹は心に 乗りにけるかも [禅師]
仮名:あづまひとの のさきのはこの にのをにも いもはこころに のりにけるかも
校異:問 [元][類] 聞