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側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。  作者: gacchi(がっち)


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26/29

26.卒業して二年

「ディアナ様、準備が終わりました」


「そう。じゃあ、出発しましょう。

 ルーイ、エミリー、いない間のことはよろしくね」


「はい。お気をつけて」


「いってらっしゃいませ」


ルーイとエミリーに見送られ、王都へ向けて馬車は出発した。


馬車にはジョイとリリアナが一緒に乗っている。

エミリーはルーイの妻、リリアナはジョイの妻だ。

二人とも地方貴族の子爵令嬢で、学園で出会って婚約し、

結婚後は私が学園にいる間の領地を守ってくれていた。


私が学園を卒業して戻ってきた後は、ジョイとルーイはそのまま側近として、

エミリーとリリアナは私の専属侍女として働いてくれている。


社交シーズンで王都に向かう際は、交代で私に付き添ってくれている。

今回はジョイとリリアナの順番だった。


「もう少しお祖父様とお祖母様へのお土産を用意すればよかったかな」


「あれだけ用意すれば十分だと思いますよ。

 何より、ディアナ様に会えればそれでいいと言われるかと」


「そうかな」


「それよりも、アルフレード様へのお土産は用意しなくてよかったんですか?」


「……用意したかったんだけど、何をあげたらいいかわからなくて」


「もう、ジョイってば。

 それこそ、ディアナ様に会えたらそれでいいと言われるでしょう」


「いや、ディアナ様は会う直前になって、

 やっぱり用意しておけばよかったって悩みそうで」


う……そうかもしれない。

何を渡したらいいのかと悩んで、アルフレードならなんでも持っていそうだし、

わざわざあげなくても……なんて思ってしまった。


「まだ新婚なんですもの。ディアナ様に会えるだけでうれしいと思いますわ」


「……そうかな」


そう思ってくれていたらいいな。


アルフレードと結婚したのは半年前。

結婚式は王都ではなく、アルフレードがカファロ領まで来てくれた。

国王になったお義兄様に一か月の休暇をもらい、

結婚するためだけに会いに来てくれたのだ。


あの時は領地をあげてのお祭りとなった。

心配していた領民たちの反応だが、あまり王族らしくないアルフレードは、

あっという間に領民たちの心をつかんだらしい。

帰る頃には領民たちが総出で見送ってくれるほどに仲良くなっていた。


「王都についてすぐにコレッティ公爵家での夜会があります。

 アルフレード様に会えるのはその時かと」


「結婚しているのに、夜会でしか会えないんですね」


「お互いに仕事があるんだもの。仕方ないわ。

 社交が落ち着いてくれば、ゆっくり会うこともできるはずだから。

 アルフレードも王弟として夜会をまわらないといけないし、

 私も侯爵としてあいさつ回りしなきゃね」


「そうですね。今回はディアナ様のお披露目でもありますからね。

 王都の屋敷にいる侍女を増員させたそうですよ」


「侍女を増員……」


お祖父様かな。いや、お父様かも。

侍女を増員ってことは、私をしっかり磨き上げるつもりなんだろうけど、

ドレス着るの苦手なんだけどなぁ。逃げるわけにはいかないか。


「ディアナ様、逃げちゃだめですよ?」


「わかってるわよ」


何かを察したのか、リリアナがにっこり笑う。


ジョイが選んだだけあって、リリアナは優秀でしっかりしている。

もうすでに二人の子がいるが、子育ては乳母に任せて、

私の侍女として働くことを選んでくれた。


ルーイのところは子が生まれていないが、気にしている様子はない。

ジョイに子が生まれれば問題ないと思っているようで、

リリアナが産んだ子たちが子爵家を継ぐことになっている。


私も結婚したからには子どものことも考えなくてはいけないが、

今のところは領主としての仕事を優先したい。

アルフレードが公爵になれば、もう少し会える時間が増えるはず。

それから考えてもいいかなと思っている。


「そういえば、宰相から報告が来てましたよ」


「え?なんだった?」


「あの三人の令嬢のうち、文官と結婚した令嬢がいたでしょう」


「えっと、ジャンナ様よね」


アダーニ伯爵家のジャンナ様は、あの後王宮文官の後妻として嫁いだ。

たしかジャンナ様の兄の勤める先の上司だったはず。

お父様よりも年上の方だと聞いて、少し同情した。


「それが、その令嬢の兄の不正を見逃してもらう礼として嫁がせたそうで、

 不正が見つかり、その結婚自体も無効となったそうです。

 令嬢の兄と上司はどちらも捕らえられ、令嬢は家に戻ったと」


「そうなの……ジャンナ様は離縁して戻ったの。

 じゃあ、夜会で会うこともあるかしら」


「自分の兄と夫が捕まったんですから、社交界には出てこれないでしょう。

 他に跡取りもいないそうですから、爵位を返上するかもしれませんね」


「そう」


王宮貴族は王宮に勤めていなければ爵位の意味がない。

ジャンナ様が王宮に勤められるとは思わないし、

屋敷などの財産でしばらくは生活できるだろうけど、

最終的には王家に返上してお金に換えることになるだろう。


「あの時の令嬢、他の令嬢は修道院に行ったのですよね?」


「ラーラ様はそうね。エルマ様は平民の商人に嫁いだと聞いているわ。

 ご両親も責任をとって仕事を辞め平民となったそうよ。

 何かあれば宰相から報告が来ると思うから、

 何もないというのは問題なく過ごしているのでしょうね」


「本当に……あのような令息と婚約解消できてよかったです。

 エルネスト様のおかげですわね」


「本当にそうね。エルネスト様がいなかったらどうなっていたか。

 コレッティ公爵家の夜会は実家だから会えると思うわ」


宣言通り、エルネスト様はアルフレードの側近として働いている。

普段王都にいない私にはわからないが、

私とアルフレードの結婚はそれなりに反発があったらしい。


それを飄々と受け流し、悪評はすぐに消えるよう動き、

アルフレードの仕事に支障がないように働いてくれている。

とても優秀なエルネスト様だが、令嬢たちからのお誘いにはこたえない。

公爵家を継ぐまでは結婚しないと宣言している。


「エルネスト様にもいい人が見つかるといいんだけど、

 それを言うとおせっかいになってしまうものね」


「令息はあまり人から結婚のことを言われたくないかもしれません。

 時期が来れば動くでしょうから」

 

「そうね。ジョイの言うとおり、私は何も言わないことにするわ」


感謝しているけれど、私にできることは何もなさそうだ。



一週間馬車に揺られ、ようやく王都の屋敷に着いた。

二日後の夜会のために忙しく準備が始められる。

アルフレードに王都についたと連絡したけれど、

向こうも忙しいようで、コレッティ公爵家の夜会で会おうと書いてあった。





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