よりみち
いつもより、部屋の奥まで差し込む日差しで
目を覚ました。
枕元の時計は午前9時半を指している
シーツを蹴飛ばして、一階に降りると
母親と目が合った
母親はぎょっとした顔をするので
「謹慎期間だよ」と一円にも満たない様な声で
伝えたら
「そうだったわね」と申し訳なさそうだった
炊飯器から茶碗にご飯を盛り、それに電子レンジの中にあったソーセージを一本乗せた
食べた
普通に美味しい
変わらない朝だ、料理を準備しなくていいから前世より少しだけ楽だが、何にもまだ分からない不安感でイーブンだ。机の上にあった新聞の一面に「大統領が代登場!?」とあった
ふざけ…っ!と、すぐさまツッコミそうになったが
母と目が合って、止めた
鏡で自分の顔を見た。この世界で初めて見る自分の
顔だった。
驚いた事にニキビも無い肌に耳が隠れるまで伸びた
黒髪、ぱっちりした瞳、それらが全てバランス良く並んでる顔、それが自分の顔だった
前世の顔と違いすぎる、中学生だからってこれは
流石にやり過ぎだ…いや
やっぱりこの世界はいいなあ
鏡にえへらえへらと笑う誰かさんが写った
外を歩くと、どこかの家で育てられている名前の知らない植物が太陽に手を振りながら、酸素を撒き散らしていた。鳥が鳴いている、喧嘩もしている
三毛猫が寝ている、腹を見せながら
ゲームセンターに着くまで何も起きないもんだ
ゲームセンターには平日の昼間だと言うのに沢山の人がいた。髪の毛が少ない人、髪の色が親子で違う親子、タバコを10本咥えてパチスロ打ってる人、
どの人も理由ありって感じだ
リーゼントヘアーの人もいる、あれは不良か?
「だから言ってるでしょ、うちはビールの自販機置く予定はありませんって!」
「ええ〜けちぃ」
よく見たら、店の人か。紛らわしい
パチスロコーナーにはパンチパーマのおばちゃんが
メダルの箱を積み上げていた。しばらく眺めていたら、まるで雀を捕まえた猫みたいに睨まれた
ここはあまり近づかない方がいいな
格闘ゲームコーナーにてやっと知ってる人を見つけた。着崩れたワイシャツに腕にシルバーバングルを巻いたクラスメイトの阿東 黑充である
俺が「よっ」と挨拶すると、こちらを向かずに
「邪魔しないで」と退屈そうに返した
「てかお前、学校は?まさか謹慎?」
「サボり。ダルいし」
そういや、コイツ不良だった。らしい事はやるんだな
画面を見るに腕はいいらしい、体力ゲージがほとんど減ってない
「つか、これ格闘ゲームだけど大丈夫なん?」
「何が」
「だって、お前グロいのダメだろ。これだって」
「グロ…」
途端、黑充の手先はぶるぶる震え出した
「変なこと…い、言わないで…これは…血とか出ないし」
さっきまでと打って変わって体力ゲージがどんどん
減らされていく
「でも攻撃したら骨とか折れてるかもしれないじゃん。ほら、相手も痛そうだし」
「ほね…おれる…」
夜中のトイレに行く時に親に一緒に行ってと頼むような言い方のち、ぐるぐる目を回して黑充はゲームの椅子から転げ落ちた
そんなつもりじゃ無かったんだけど…ごめん
と、俺が申しわけ無さを感じてたら
「てめぇ、黑充くんに何してるんじゃあ!!」
横にリーゼントヘアーの店員が血管を逆立て、立っていた
「いや、そんなつもりじゃくて…」
「うるせぇ!!!周り見てみろ!」
指さした方には怖〜い顔をしたみなさんが
おばちゃんも不良も小学生(?)も…
に
逃げろおおおおお!!!!
俺はすぐさまゲームセンターを抜け出した
━━━━━━━━━━━━━○
「はぁ…ぜぇ…ここまでくれば大丈夫か」
ゲームセンターから離れた離れた道端
俺は疲れて、座り込んだ
何なんだあのゲームセンター、何でみんなして黑充の味方なんだ。過保護じゃ成長しないぞ人は
「おや?君はもしかして」
誰かの声だ。まずい、逃げなきゃ
「ちょ、ちょっと待ちなさい!逃げなくていい!」
「だって…俺を酷い目にあわせるきでしょ!」
「違うって!」
見ると、カンカン帽を被った白ひげの老人があわあわした顔で立っていた。腕には高そうな銀時計、靴はぴかぴかに磨かれた革靴、首筋には太い血管
「君は学生だろ…こんな時間に何しとる」
「謹慎中です!それでゲームセンターに行ったら酷い目にあって来たところですよ!!」
「謹慎中か…そうだ」
「明日から三日間だけワシの学校に通わないか?」
「は?」