弱点は意外に…
「いや〜入学式疲れたね」
「ああ、ほんと。頭痛が痛いって気分だ」
砂利の音を鳴らしながら、俺たちは帰路を歩んでいた
「つーか、なにお前元から友達だったみたいに一緒に帰ってんだよ!」
「いいじゃん別に!音無が怖くて僕にしがみついてた癖に」
「それはそうだけど…」
音無佳苗、そして名前を忘れたけど吸血鬼みたいな男、この二人には気をつけないと
じゃないと俺の命が学校生活が危うい
しかし、どうすればいいんだ
(阿東 黑充は頼れないし)
「んな?!あそこで蜂蜜舐めてるのは?お〜い」
一郎が手を振った方向に蜂蜜を指で掬って舐めている男がいた。頬に絆創膏を付けている
あの人は博康先輩だな確か
「ま〜た蜂蜜舐めてんすか。ボツリヌスにやられちゃいますよ」
「そりゃ赤ちゃんの話だろが…」
「えへ、そだった」
どうやら一郎と博康先輩は仲が良いらしかった
「博康先輩、ちょっと聞きたいことが」
「え?!誰おま」
「それは後で話しますから」
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「音無が隣の家に住んでたんですか?!」
「んだ、小さい頃は一緒に飯食ったりしてた」
わふわふした表情をして、博康先輩は蜂蜜をまた舐めた
「アイツ、一緒に過ごして大丈夫なんですか?」
「案外そりゃ、大丈夫なもんよ。親が側にいれば
途端大人しくなるんだぜ。それにアイツには弱点があってな…」
「弱点?」
「ああそれは…」
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「お〜い、話終わったぁ?」
「ああ、終わったよ」
博康先輩と少し離れたところで一郎が待っていた
「で、どんな話してたの?」
「それは音無のことをだな…」
「私がどうかしたかしら?」
聞いた事ある声に目をやると、音無が立っていた。
脇に麺つゆを抱えながら
「やだ、不味いのが隣にいる…なんでよ」
「不味いのとは何だ!僕はこんなにいい身体」
一郎が突如、全裸になった
「してんだ!!よ!!!」
そして、音無に近づいた
が、ぐいっと避けられてしまった
「今度こそ…バラバラにしてあげるねぇ。ちょうど
新しい麺つゆを買ってきたとこだよぉ」
彼女の口からは涎が垂れていた。目は蕩け、口は緩み、微かに身体が震えている様だ
「ふふふ…そうはいかないよ。ほら」
「そ、それは!?」
俺はポケットから一枚の小さな紙を取り出した。
渦巻きが書いてある紙だ。それを見ると音無は
「め、目がまわるぅ………ひきょう…あふぃ」
その場に倒れてしまったのだった
「だ、大丈夫なのかな!?」
「大丈夫だ、その内起きるらしい。それより」
「とりあえずお前は服を着ろ早く」
「え〜!?気持ちいいのに」
不貞腐れた顔で一郎が服を着ようとしたその時
「そこの変質者こっちに来なさい!」
スピーカから警察らしき声が聞こえた
「やっべ、逃げろ〜」
「こらあぁああ!!裸で逃げるなぁ!!!」
深夜、届いたメールによれば何とか一郎は逃げきったらしいです