学校を探検だ
「ここが音楽室、大した楽器は無いけれど」
担任に連れられて俺たちは校内を歩き回っていた
「ない…」不意に音無が呟いた
「ここの学校、第二図書室が無いんですね」
「そうなのよ。ごめんなさいね」
ビビり損だ。大体内臓を麺つゆ漬けするって何だ
食べるのか?内臓を?ホルマリン漬けなら分かるが、麺つゆ漬けは分からない
「で、ここが空白。目的も未来も存在していない
謎の教室、入れないから気をつけてね」
出たよ、意味の分からない教室。身構えてただけに
リアクションしづらいな
しかし明 灯が
「先生、それはデッドスペースと言うのでは?」
と、担任に言った
すると、担任は酷く呆れて
「あのね、この教室は余った空間では無いの。気づいたら存在してた謎の空間、それをデッドスペースとは言いませ〜ん」
「だったらそんな空間さっさと破壊すればいいのでは?」
「…あんた、真面目すぎるわ。人生いつか疲れてしまうわよ」
そうして、また元の通り歩き出した
しばらく歩くと、前から誰かがずんずん歩いてきた
その男は瓶に入った蜂蜜を舐めていた。腰にはチューブの蜂蜜をいくつか装備している
「博康さん、ま〜た蜂蜜舐めて。蜂蜜舐めるのは一日一回にしなさいって言ったでしょ」
「ハロー、刃っち。んなこと言っても舐めないと落ち着かないし、しょうがないっしょ」
「だからってあんまり舐めると虫歯のバイキンが暴れだしちゃうわ。心配よ」
「冗談キツいなぁ。俺、歯医者の跡継ぎすよ。虫歯になるわけないじゃ無いすか。あはは」
その博康と言うらしい男は確かに歯が綺麗だった
大きく笑うとぴっちり並んだ歯たちがエナメル質をきらんと輝かせている
しかし、突如
「ひろやすてめぇ!」
和田 那丹守当留が彼の胸ぐらを掴んだ
「卒業してどこに行ったのかと思えばまさか同じ中学で先輩張ってるとはなぁ」
「久しぶりだな、マーマレードボーイ。相変わらずマーマレードぺろぺろ舐めてんのか。そうだよな、お前マーマレード舐めないと怖くて泣いちゃうもんな」
「熊さんみたいに蜂蜜ぺろぺろしてる人間に言われたくないけどねぇ。あんまり熊さんしてると銃で撃たれちゃいますよ」
「んだとぉ!?」
「なによ!!」
二人は額をぶつけ合って、一触即発だった
「めんどくさいんで先に進みますか。じゃあおふたりさん仲良くね〜」
「あ、グッバイ刃っち。コイツはボコボコにしてくからな」
「んだと!その逆だぁ!!バキッ」
「やりやがったな!バキッ」
喧嘩する二人を置いて、俺たちは先に進んだ
最後にたどり着いた学校の端にある部屋には南京錠が付けられていた
「ここは禁断の部屋、解放すればあなた達にそこそこの災いがやって来る。絶対に開けちゃダメよ」
…なんでそんな部屋あるんだよ
と思ったが、ギャグ漫画とかだと普通か
「でも安心して、ここを開けるには鍵が必要なの。
鍵は職員室の金庫の中だけど、パスワードが20ケタ
だから絶対に開ける事は出来ない。そして、この学校でパスワードを知ってる人は誰が未だに分かってないわ」
「んなこと言ってどうせ、ある日何故か金庫が開けっ放しになってたとかそんなんあるんでしょ」
「な、なによその教師がうっかり屋さんみたいな
私たちは大人、うっかり金庫を開けっ放しにしたり
しませんから」
あ、これ多分開けっ放しにするパターンだ
何となく分かる。うん
「これで学校見学は終わり。後は各自教室に戻って帰りのしたくを…って」
「和田くん!?」
よろよろと和田が歩いてきた。その顔面は殴られて
腫れていた
「せ、先生…勝ったぜ。へへ」
「も〜ベルトは黒じゃないとダメって決まりでしょ!次からは気をつけるように」
この教師、世界に一瞬でもまともさを期待してはいけない。俺はそう確信したぜ