友達を作らなきゃ
担任が居なくなったのを誰かが確認して、やっと
俺たちに休み時間が訪れた
「参ったねぇ、担任になるはずの人間がハワイから
帰ってこれなくなるなんて。芥川龍之…」
「夏目金之助!!誰が夏目漱石の弟子になった!」
「冗談だよぉ、怒らないでって」
吉田一郎 は俺の肩を軽く叩きながら笑った
こいつがまさか、最初の友達?嫌だなそれは
出来れば女の子とお近づきになりたいもんだが
ん?
窓側の一番後ろ、本を読んでいる女の子が目に入った。黒髪で銀縁メガネをした、もちもちの肌の女の子だ。あれはチャンスかも
「な〜に読んでるの?」
「小学校の卒業アルバム」
「へ、へぇ…」
その子が読んでいるアルバムには所々、丸が記されていた。何か目印なんだろうか
「えっと… 音無さん?何で、クラスの集合写真に丸が付けられてるのかなぁ」
「あ、これ。内臓を麺つゆ漬けにするの。きっと」
「麺つゆ漬け…??」
俺が思わず後ずさると、彼女は舌なめずりし
「そう、この人たちはそろそろ内臓が食べ頃だから。いつか絶対バラバラにして麺つゆ漬けにする」
と、言った
「じ、冗談だよね。変わったこと言うなぁ。あはは」
「冗談なんかじゃないわ。ちょっと失礼」
ぴとっ。
彼女は俺の腹に左手をそっと当てた
「あら〜素晴らしい内臓ねぇ。今すぐにでも麺つゆ漬けにしたいわ」
「ひっ、ひぃい…誰が助けて!そこの人!」
「えっ、僕?」
ガシッと、俺は近くにいた黒髪の背が低い男にしがみついた。よく見るとそいつは首に何かタトゥーみたいなもんがある
「な、内臓取られ、取られる!」
「ああ、内臓…ね。内臓…内臓がぁ」かぷっ
いきなり俺の右手に噛み付くと、とても
とてもその男は嬉しそうな顔を見せた
「ん〜いい血。ぜぇんぶ吸いたいなぁ」
「ひゃ、ひゃああぁぁ!」
まともじゃない、コイツら二人してまともじゃ無い
誰か、誰か、まともな
そうだ
「阿東 黑充っっ!!」
「え?!俺か?何だよ」
「助けてくれ…このままじゃ内臓と血が取られてしまう。あんたなら何とか出来るだろ」
「内臓…血…うぐっ…」
途端、入口の扉に頭をぶつけた音がした
「無理無理無理!!!グロいの無理!!ひぃぃ!」
…その見た目でナイーブなんかい!!心中で俺はツッコんでしまった
「ズルいズルい!金之助ばっかり!僕の内臓と血だって負けちゃいないのに!」
「一郎ぉ…」
一郎は俺と二人の間に入って、制服の腹の部分を捲った
「さあ、どうぞ」
「んっ…」ぴとっ
また音無は俺の時と同じ様に腹に手を当てた
しかし、すぐに手を離して
「ひっどい内臓…あんた最低ね。あっちいけ」と
手をひらひらさせ、自分の椅子に座った
「失礼な!じゃあ君ならいいよね?ほら」
「あ、ああ」
黒髪の男も左手を噛んだが、とても嫌そうな顔で
「まっず…い。おえぇ…君さぁどんな生き方をしてたらこんな血になるんだい。勘弁してくれ」
と、吐き捨てたのだった
「何さ何さ!勝手にすりゃいい!」
ぷんすか怒って、教室から一郎は出てった
んで
「内臓…やだよぉ…血も嫌だぁ…」
阿東 黑充はどうすりゃいいんだ
「ふぃ〜やっぱ入学式の後は乾くわ」
すると、教室の前方から筋肉質の男が入って来た
アイツは確か…和田那丹守当留
「ん?黑充どした?」
「血…内臓…アイツ…こわい…」
震えた指で阿東黑充は俺を指さしやがった
和田は何か察したみたいで
「後で何とかするからな」と耳元で呟いた
「ほら、上腕二頭筋だ。落ち着け」
「にく…きんにく…いい…」
黑充は和田の腕を触ると、落ち着いたみたいで立ち上がって、席に戻って行った
ところでどうして和田はマーマレードの瓶を抱えていたんだろう。謎は深まるばかりだ