クラス召喚ならぬ全校召喚されました。〜こんなに召喚しちゃってどうすんの〜
…高校生の夏。教室で授業を受けている僕たちは、いつの間にか教会のような場所にいた。
「おお!成功だ!」
黒いローブを着た男の人が、周囲にそう告げた。それを聞いた王冠を被っている何やら王様らしき人は、「おおおおおおやったあ!」といってローブの人と同じく感動の声を漏らしている。
そして僕の足元には、一つの大きな魔法陣が。
(もしや、これが噂の異世界召喚…?)
妙に状況を飲み込むのが早い僕は、瞬時にここが異世界であることを把握したようだ。っていうか…
「人多くね!?」
ローブの人や王様(?)も同じことを思ったらしく、「え、ちょっと、あれ?使徒が多いのはとてもいいことなんだけどさ、流石に多過ぎない?いや多いよね!?」と驚きの声を漏らしていた。そして僕と同じように召喚された人の中には僕が仲良くしている友達や先生、さらには違う学年の生徒までいた。まるで生徒が問題を起こして開かれる全校集会のようである。
…どうやら、異世界に召喚されたのは、僕の高校に通っている生徒千四百人。つまり僕たちは、クラス召喚ならぬ、全校召喚をされたようだ。
◆◆◆◆◆
それにしても人が多い。ていうかキツイ。そりゃそうだ。一つの魔法陣の中にこの高校の全校生徒が入ってるのだから。この魔法陣は通常四十人を収めて余りが出るぐらいの円なのだが、やはり千四百人を収めるのは無理があるようだ。
「あ、君魔法かけて!」
召喚された人たちがかなり騒いでるのを見た王様が慌てて言うと、ローブの人が杖を出して何やら魔法をかけ始めた。でも人が多いからかなかなか終わらないらしく、ローブの人がかなり疲れてそうだった。ようやく魔法をかけ終えみるみる騒ぐ声が鎮まっていく。そしてその視線が一気に王様へと集まる。
王様がゴホンと咳払いすると、口を開いた。
「すまない。少し鎮静化の魔法をかけさせてもらった。まずは我の自己紹介をしよう。我の名はベッカー、このヒューズ王国の王だ。君たちは今、元の世界とは違う異世界にいる。私が今、君たちをこの世界に呼んだのだ。」
何やら、この王国は今魔王による侵攻を受けていて、その魔王を食い止めるために、将来の勇者である異世界人を召喚したらしい。それでこの世界に召喚した異世界人が、僕たちだったということだ。
当然それに対する「どういうことだよ!」「早く家に帰りたいんだけど!」という抗議の声はあがっていた。
「困惑する気持ちはわかる。だが今はどうか魔王を倒すのに協力してほしい。魔王を倒したら、私が君たちを元の世界に戻すと保証する。」
「さて、いきなりではあるが、まずは君たちのステータスをチェックさせてほしい。」
その後も王様に対する抗議の声が鳴り止むことはなかったが、とりあえず生徒が順番に並んでそのステータスというものをチェックすることになった。
◆◆◆◆◆◆
ステータスチェックが終わった。これにも相当時間がかかってた。いかんせん一人のステータスをチェックする時間が長いため、気がついたらチェックだけで十時間も過ぎてたよ。
それでチェックの結果だが、驚くことに僕を含めて召喚された人全員が勇者の資質を持っていたのだ。この世界では勇者の資質を持った人は十億人に一人もいないらしいが、さすが異世界人パワーである。
その後なんだかんだで僕たちは魔王城に来ていた。もちろん魔王を倒すためである。もちろん魔王兵もいたが、全員で広範囲魔法撃って四十五秒で倒し終えた。と、奥の間から魔王と思わしき人物が出てきた。
「ほう、お前らが異世界からの勇者か…ってえ!?多くない?いやいや、一人や二人だと思ってたんだけど。流石に無理だよ?待って待って、タンマ…」
「行けえええええ!」
生徒会長の合図とともに、僕たちは一斉に魔王に飛び掛かる。その様子はまさしく巣にやってきたオオスズメバチに群がるミツバチのようであった。剣で魔王をメッタ刺しにし、魔王はみるみる元気がなくなっていった。流石に魔王が可哀想にはなる。
無事魔王を倒して、僕たちは元の世界に帰してもらうことになった。元の世界に帰ると、召喚される前の時間に戻るらしい。ここでの経験はなかなか不思議なものだったが、まあ楽しかったと思う。
「無事元の世界に戻ることができたわけだが、普通に授業はやるぞ〜」
「ええ、疲れたんだけど…」
そうため息を吐きながら、僕は窓の外を見るのだった。