なにが起こるか分からない職業
2043年。
日本人女性が初めて魂の存在を確認した。
実験内容はなかなか衝撃で、医者だった彼女は患者に入院費用などを負担する代わりに、余命わずかな患者の家族の許可を得て実験を行っていたのだ。
後に大きな問題となり、更に衝撃な研究内容で世界を驚かせた。
患者の死後、特殊なゴーグルを通して観測されたそれに、彼女は日本語からとって「タマシイ」と名付けた。(彼女の実験方法が疑問視された結果、別名としてつけられたanimaと呼ぶのが主流となっている。)
英語で書かれたその論文は瞬く間に脚光を浴び、その日本人は歴史に名を刻んだ。その名は百年くらい経った今でもなお語り継がれている。
ちなみに、今その論文はどこを探してもないらしい。掲載された記事や書籍も今や絶版で禁書扱いだ。魂を扱うというのはそれほど重く重大なことだった。
当時は様々な「科学的根拠に基づく」グッズが発売された。霊を遠ざける水や霊を浄化する塩。最後には魂が見えるようになるゴーグルを売った人間が詐欺で逮捕された。彼の懲役が決まるころ、タマシイブームは過ぎていた。
今では性格が突然変わった、とか写真になにか映り込んでる、とかいうのはオカルトでもなんでもなく、ただの化学現象である。
それに付随して生まれた、霊に関する犯罪やもめごと。それらを収めるため、法整備やら取り締まりやらで、「それ専門」の職業が数多く生まれた。一時はなりたい職業ランキング堂々の一位を飾った霊媒師も、見えない人間からすればただの宗教ごとのようで、その人気が下落するのに時間はかからなかった。
しかし、魂という概念が当たり前になってから生まれた、いわゆるY世代には、最初からいるものとして教えられるおかげか、2048年頃を境に「見える」子供が急増する。
そうして今、再び脚光を浴びつつあるこの職業。
俺は今、魂…霊を専門に扱う探偵をしていた。