羊さん擬人化する。(バレンタイン企画)
ちょこっとね(チョコだけに)
こいつとの出会いは突然だった。牧場を経営しているウチでは乳牛や馬、羊等を飼育していた。そんな中ふと柵のウチを見ていると、こちらを涙ながらに見詰める二つの目があった。
「めぇ、めぇぇぇで」
「祈った!?」
それがこいつである。
羊が擬人化した羊少女らしく。いつも目立っていた(悪い意味で)ためそいつが少女の姿になったんだと暫くしてから気付いた。
「め、めぇ~」
「どうしてこうなった……」
母は『あら、丁度娘が欲しかったの♪ あんたも妹できて嬉しいじゃない!』
と気楽に言ってくれるが……そうじゃないだろう母さん。
そして、何故か数日後俺の部屋に羊少女は居た。屠殺場へドナドナされる家畜の様な目をこちらに向けながら。
……いや、おかしくない? お母さん一体ナニを吹き込んだの?
とって食おうって訳じゃないから。家畜なのは変わりないけど(非情)
「うぅぅ……」
俺はこの大人しい羊みたいな少女にどう接すればいいのか暫く頭を捻ることになった。
──そして1年後──
俺はこの羊な少女に呆れ返っていた。
ここ数週間ずっと部屋の中に籠りっきり。あの草原で暮らした野生はどこへいったのやら。
あれから仲を何とか繋ぐべくゲームやらYouTubeやら人間の遊びを教えていったんだが……間違いだったか。
これじゃ友達も出来んぞ、と言っても『ネットの友達たくさんいるからいいもーん』と聞く耳持たず。
そういや群れの中に馴染めずずっと独りで草を喰ってたな。
よく暗い洞窟の中に隠れては俺が探し回ってたんだっけ、……あれ?思えば現状とそこまで変わってなくね?
「ポテチとってー」
はあーーー。俺のベッドを自分の物の如く占領し、だらだらしている羊少女に深くため息をついた。
「ポーテーチー」
「ポテチは呼んでもこねぇよ」
「この前は来たもん」
「それは俺が取ってきてやったからだ」
「ぶー、けちー」
「けちじゃねぇ、当たり前のことだ」
「……」
ポテチは諦めたのか、二度ごろごろしだす羊少女。
俺はそろそろ怒っても良いんじゃないんだろうか?
部屋はポテチやらお菓子を食べたゴミで散乱し、読み終わったマンガもほったらかし、あまつさえ──────────────ピンポーン
「誰だこんな時間に?」
配達頼んだ記憶は無いんだけどな……。と俺が玄関に行こうとすると、羊少女が猛ダッシュで玄関へ向かっていった。
「お、おい!?」
そんな俺の声を無視して玄関に向かうと
「はい、ハンコお願いね」
「はいっ!」
と元気いっぱいにおじさんが渡した紙にハンコを押す羊少女。
っていつの間にハンコ手に入れやがったんだあいつっ!?
ったく!あのだらけっぷりはどこへいったのやら、キラキラした目で配達物を見て……っておいっ!?
俺は羊少女の肩を掴むと
「おいお前……」
「知らない……」
凄い勢いで目を反らす羊少女
「ったく何がしらないだっ!何だこの箱っ!」
「な、なんのこと?」
こいつっ……!?いい加減怒った。
俺は羊少女のフードを剥ぎ取った。
すると──────────────────────────
「いや~~~~~~~~~~~~!!!!!!!? フード返して~~~!!!!!!」
こいつはフードを取られる事をこよなく嫌う。だからいい加減に怒る時はこれを取るようにしている。
「だったらこれが何か正直に言ってみろ」
「うぅぅぅう~~!!?」
こちらを恨みがましく睨み付けてくるこの羊、涙目でプルプル震えながらこっちを睨む様子は正に狼に睨まれた羊って感じだが。
俺は羊の前でフードをひらつかせると
「ほれほれ、言うまでこれは返してやらんぞ」
「とうやのいぢわる……」
涙目でこちらを見上げる羊少女、その姿は嗜虐心をくすぐら───っ!?いかんいかん!変な気を起こすところだった。
「あ、あーすまんフードは返す。……だから怒らないからあれが何か正直に言ってくれ」
「……ちょこ」
「は?……すまんもう一回言ってくれるか?」
「……だーかーらー!チョコレート!」
「あー、チョコ!チョコレートねっ!そうかチョコレートかー」
……ん?何でチョコレート?それなら態々買わなくても家にあるのに。
「何でチョコレートなんだ?」
「……」
まただんまりか……。
「やっぱりフードかえすの止めよ「話すよ!?話すったら!?」
羊少女はぷるぷると震えながら顔を赤くし、
「……バレンタイン」
そういったのであった。
***
「なんでバレンタインにこれ頼んだんだ?」
「だ、だから……とうやに……」
「俺になんだ?」
羊少女はぷるぷると顔震わせながら俯く。なにやってんだ。
「……とうやが好きかと思って注文した」
「マジか」
「……コクリ」
俯きながら恥ずかしそうに頷く姿は正直萌えた。
パーカーに角ってよくないですか!?