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パート2:少女との出会い(2)

 温和な笑顔と丁寧な態度。テオは終始それを維持し、ティアの爆弾発言を聞いてもそれを崩さなかった。


 しかし彼の目がほんの少しぐらついたのを、ティアは見逃さなかった。


「……創造神を愛してる、ですか。とても遠大な目標ですね。応援します……と言いたいんですが、あまりにも非現実的な愛じゃありませんか?」


「冷静ですね」


「気持ち悪かったら謝ります。だが、叶わない心をずっと抱きしめてばかりいるのも辛いことですからね」


「そんなに気をつける必要はありません。話にならないというのは私も知っていますから」


 話しながらも、テオの顔色をうかがい続けるティア。


 でもテオは暫く目つきが揺れた以外は平穏だった。その上、考えを察することも難しかった。ティアとしては少しは動揺してくれるんじゃないかと期待したが、やはり彼は冷静な人だった。恐らく彼の心は穏やかな水面のように澄んで透明だろう。


 ……というのはティアの盛大な錯覚だが。


 ――愛してるって? 誰を? 俺を? 何で? いきなり何だよ!?


 今テオの心の中は穏やかな水面どころか、噴火直前の火山の下でグツグツ動いているマグマのような状態だった。今にも盛大に爆発しそうな気持ちが表に出ないのは、ただ感情が強すぎて体が麻痺したからだった。


 だが感情はすぐ沈静した。そしてその座を疑問が代わりに占めた。


 ――何故その話を急に俺にする?


 転生者が創造神に出会うということは人間にとっても常識のようだが、創造神を愛するというのは、よくある話ではなさそうだ。


 見たところティア自身もそれがどれだけ出鱈目な言葉なのかは分かっているようだ。そしてテオは創造神本人である為、それがどれほど望みがないかをよく知っている。しかし、そんな夢のような話をあえて自分にする理由が、テオとしては到底分からなかった。


「その話は他の人にもしたんですか?」


「いいえ、人に言ったのは生まれて初めてです」


「ところで、何故それを俺に?」


「……」


 ティアは再び沈黙した。でもテオを眺める目つきは強かった。どんな感情なのかまでは分からないが、何か強い気持ちを抱いていることだけは、はっきりと感じられた。


 そんな感情を見せるのはやはりテオの正体を疑っているからだろうか。


 暫くの沈黙の後、ティアは再び口を開いた。


「どうしてだと思いますか?」


 唐突な問いかけだった。そしてテオにとってはめっちゃ気になる質問でもあった。


 でも答えること自体は易しかった。


「よく分かりません。会ったばかりの方の本心を推し量ることは、俺には難しいです」


 俺が知る訳ねぇだろ! を迂回的に伝えると、ティアは目を細くした。でもすぐにため息をつきながら、目つきを和らげた。


「……私はとても特別な加護を持っています」


 突然の話だった。


 けれども、何の理由もなく話を切り出した訳ではないだろう。そもそも加護とは間接的ではあるが、厳然と創造神と関連がある。そして転生者が強い加護に生まれつくのは、実際にテオが魂の力を強化してくれたからだ。創造神に対して何かを感じることができるとしてもおかしくはないだろう。


「私の加護は私に〝道〟を教えてくれます。私が望むことを叶える方法を提示して、それを成し遂げることができる能力を私に与えることができます。もちろんそれもあくまで人間の加護ですから、創造神を愛するというとんでもない目標までは叶えてくれないんです。ですが……」


 ティアは空を見上げて、しばらくしたら空に向かって手まで伸ばした。まるで空を手で掴もうとしているかのように。


「成し遂げられるか否かと別に、私の加護はいつも目標を指します。そして私は愛する創造神の傍に行くことを望んでいます。それで私の加護はいつもあの空の向こうを指しました。あの高い所、人間である私には神の恵みがなければ決して到達することができない天上のどこかに、私が愛している御方がいるということを知らせてくれる道しるべでした」


 ――彼女は……昇天を望むというのか。


 人間が神の領域に至ること。それが可能かどうかはテオさえも知らない。ただ彼が知っていることは、少なくともその前例はないということ。経験的には不可能だと言い切ることができるだろう。


 しかし、今重要なのは昇天の可否などではない。


 彼女の話が全て事実ならば、彼女の加護は神界にいたテオを指していただろう。ところが今はそのテオが地上に、それもティアの目の前にある。


 ティアが言ったことが嘘なら話は違うけど、もし本当だったら?


 他のことはともかく、あからさまに何かを暗示していることぐらいは創造神であるテオも容易に知ることができた。


 ティアが続けて口にした言葉は、まさにテオの予想通りだった。


「ところで……今はその加護が地上を指していますね?」


「そう……ですか」


「はい。具体的には誰を指すのか……そこまで私の口で説明しなければならないでしょうか?」


「でも俺はそういう加護があるというのは初耳です。そしてそれが具体的にどのように動作するのかも分かりません。私がお手伝いできるか自信がありません」


 ティアは眉を顰めた。テオの言い逃れが当然気に入らなかったようだ。


 でも、だからといってほんの少しの実力行使に出るとは、正直にテオも予想できなかった。


 〈仙法:洞察眼〉


 急にティアの目が輝いて、一瞬にしてテオの全身をくまなく見るような感じが彼を襲った。


 仙法は魔法の3つの分類のうち、術法と闘法のあとを継ぐ最後の一つ。自然が抱く魔力を自分の体に受け入れ、それを自分の魔力と融合して使う特殊な力だ。簡単に言えば、外部の魔力を吸い込んで使う強力な闘法だ。


 本来、仙法は強力だが弱点も明らかだ。だが〈洞察眼〉はただ外部の情報を吸収するだけだ。それだけ探知能力も格が違う。


 もちろん創造神を見つけ出すほどではないが……ティアは小さく鼻で笑った。


「……やっぱり」

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