妄想の帝国 その54 自称ニホン難民入国規定
新型肺炎ウイルスほかの対策に大失敗したニホン政府は、野党レイワン、共産ニッポンを主とした勢力によって倒され新政府が樹立。前政府を追従していた面々、ネト・ウヨヨン一行はI国にたどり着き、難民申請をしようとするが…
「はあ、はあ、や、やっと陸地にたどり着いた」
粗末な漁船で、故国ニホンを離れて幾千里、ようやくユーラシア大陸の某大国のとある港にネト・ウヨヨン一行が上陸した。その構成は元お役人だの、芸能人だの、SNSで発信した超有名右寄りインフルエンサーだが中の人はただの無職だのさまざまである。が、彼らにはある共通項があった。
「ううう、あの新型肺炎ウイルスのせいで、ニホン国はパヨクどもに乗っ取られ、われわれジコウ党支持者たちは国を離れることになったんだ、しかし、今やっと」
「そ、そうですよ、ネトさん。あのパヨクの野党のレイワンのヤマダノだの、共産ニッポンのシイノだのコイケダだのが、国際大運動大会の1部はおろか2部まで開催したせいでニホン国は医療崩壊だの言い出して。地方の知事どももそれに便乗して、パヨクどもの味方をしたせいでえ、ガース総理は、引きずりおろされ、野党どもの新政府が出来てしまうなんて」
「ガース総理も前アベノ総理も、アトウダ副総理ら、与党ジコウ党側は犯罪者扱いなんて!自宅待機で死者がでたのは、政府のせいでは、ないんだああ、自粛の甘い国民が悪い!赤ん坊が死んだのだって、お母さんが感染したのが悪いんだ!」
「そうです、内閣も政府も悪くない、全部パヨクのせいですう」
と異口同音にパヨク、今は新ニホン政府の悪口をいいだす面々。彼らは前ニホン政府および政権与党ジコウ党を盲目的に従い、野党や政府の政策に異を唱える人々をSNS、ヘイトスピーチほかで攻撃しつていたのである。そのせいか新政権下では居心地が悪いらしく
「ガース総理たちが裁判にかけられるなんて、そんなのニホンではない!我々は亡命して真のニホン政府を樹立だ」
「そ、そうですとも。なぜかジコウ党の議員の方々は賛同してくれない方がほとんどで、ニホン国残留…」
「きっと何かお考えがあってのことだ。ともかく、我々はだな、隣のハンニチ国家のK国だの、アメリカの潜在的敵国C国だのは避けて、ここI国の港に…」
と、ネト・ウヨヨンが大声でしゃべっていると、港湾関係者と思しき人々が近づいてきた。
「アーユージャパニーズ?」
「お、おお!イエース!エクスキューズ、アイ、キャンノット、イングリッシュ、ジャパニーズ、プリーズ。や、やはりニホン国民の気高さ礼儀正しさは世界中に伝わっている!K国民だのC国民だのとの違いがわかっているんだ!」
と喜ぶウヨヨン。その様子をみて港湾関係者のうち一人がニホン語で話しかけてきた。
「オハナシ、うかがってますと、今のニホン国から逃げた人デスカ?」
「そ、そうです。今のニホン政府は偽物です!前のガース首相をですな、正統な政府としていただくニホン難民です!」
「ニホン難民?」
「そうです!今の野党どもの政府ではなく、真のニホン政府を」
「前のニホン政府のやり方をシジいいますか、良いと思うんデスカ」
関係者の目が微かに冷たくなった。それに気が付きもせず、ウヨヨンは調子に乗ってまくしたてた。
「も、もちろんですとも、ここにいる全員、ガース総理らが率いるニホン政府の賛同者です!政府の政策を全面的に支持です!」
ウヨヨンの言葉が終わらないうちに港湾関係者らが何やら話始めた。上司とおぼしき一人がスマートフォンで何やら報告をはじめたが、現地の言葉がわからないのでウヨヨンたちはわけがわからずに立ちっぱなし。だんだん疲れてきたウヨヨンは思わず
「わ、我々はニホン難民なんだ!国際法上の保護とか、あるだろう、入国管理局とか、施設とかに連れってくれ!」
「シャラップ!」
と短髪の背の高い男に怒鳴りつけられ、縮こまるウヨヨン。
いつの間にか、ウヨヨンたちは武装した屈強な兵士たちに囲まれていた。
「ど、どういうことでしょう、ウヨヨンさん。わ、私らどこに」
「他、たぶん、あれだ、警備とかの関係上だ。そ、それに新型肺炎ウイルスとかの検査の関係もあるからな。て、手続きがすめば、きっと快適な宿に…」
引きつりながらウヨヨンが言うのを
「イイエ、あなた方は自称ニホン難民留置施設送りデス」
と、さきほどのニホン語で通訳した青年がきっぱりといった。
「な、なんだとお、わ、われわれは難民…」
「イイエ、前ニホン政府の関係者、賛同者は難民デハナイ。ヒューマンライツを無視する非人道的政府の仲間は同じく犯罪者デス」
「わ、我々は正当なニホン政府の賛同者なんだぞ!それが」
「罪もない人をたくさん死なせるような政府、国民の意見も無視して危険なスポーツイベントをしましたネ、前の政府」
「そ、それは、ウイルスが流行ったのはその、パヨクだの、その、自粛しないほうが悪いんであって、国際大運動大会は、その」
「選手さんはウイルスにかかったかどうかの検査受けられた、でも手伝った人はそうじゃない、ワクチンもしてない、外国人はぜんぜんデショ」
「ぼ、母国で受ければいいじゃないか、その国にかえって」
「帰れず働カサレタ人もイマス。入国管理局で死んだ人も。病気でもお医者もヨンデモラエナイ」
「そ、それはだな、N市の入管が、その」
「その入管のしたこと、ニホンの前の政府の法務省は隠そうとシマシタネ。書類、塗りつぶしマシタ。餓死した人、ワタシの友達の友達。留学生でも、白人以外はそんな目にアウ。ニホンの政府それを認めてマシタネ。他にも働きに来た人はヒドイ目にアッタ。技術おしえるとイッテ、少ないお金で働かせるだけ。国際大運党大会の後はもっと少ないお金で働かされるってイワレタソウデス。ニホン借金がいっぱいだから」
「ぎ、技能実習生のことか、そ、それは、その、政府だって、その」
「前の政府、口だけ助けるイウ。今のニホンの政府はいろいろなおしてくれたソウデス。ヤマダノさんもコイケダさんも、政府作る前から助けてくれたって友達イッテマス。前の政府はヒドイ、アメリカやヨーロッパの人以外、ドウデモイイ。政府の言うこと聞く人、おだてる人以外ドウデモイイ、民主主義国家といってるのにソウジャナカッタ」
「ご、誤解だー。いや、その、き、君は誤解してるんだ、そ、その証拠に、ほ、ほら、シンガポールとかに移住しようとした人も…。グ、グロゼさん、ほらコンドミニアム」
青年に責められタジタジのウヨヨンはインフルエンサーとして名の知られていたはずのグロゼに助けを求めたが
「いや、あれは、その…」
「その人、女の人にひどいことをいって裁判で負けた人デスカ、シンガポールだのの話、嘘だったミタイネ。もっとも、今のシンガポールはコンドミニアムとか買ってても受け入れないですよ、前の政府のお仲間は。今の政府のおかげで開発できた新型肺炎ウイルスの治療薬、欲しいデショウシネ」
「そ、そんなもの作れてたのか。そ、それは、前の政府からの」
「政府は小さい会社は助けてくれない、ウイルスの自動検査機もあったのに使ってクレナイ、今の政府は基礎研究とか、発明とか会社の規模だのシガラミとか関係なく採用してくれるソウデスヨ。外国人研究者の功績ミトメテモラエル、だから治療薬デキマシタ」
「そ、その、あの」
青年に論破され、うなだれるウヨヨン。そばにいたグロゼが最後の反論を試みた。
「し、しかし僕たちをこれからどうしようというんだ、下手なことをすればSNSで」
「アナタタチのアカウントはおそらく凍結デスネ。逃げ出した人々の中で誹謗中傷、および自他ともに虚偽の、き、記述アッタ人は開示サレマス、ひどい人は凍結、裁判にカケラレルソウデスヨ、裁判する前に逃げたから有罪ネ、たぶん。オハナシ聞いてるとそういう人ばっかりミタイネ、みな犯罪者。ダイタイ施設でスマホ、使えません。あなた方、一生働くか、帰るカネ。もっとも帰れるお金がアレバ」
「そ、そんな、我々の人権はー」
「ほかのひとの権利も命も尊厳もイイカゲンにしてた報いデスよ。あ、検査だけはうけられますよ、ワクチンも。C国製のあまりですが」
淡々という青年に対しウヨヨン一行は
「わー、ヒドイ」
「こうなると知ってたから与党の連中は来なかったのかー」
「これなら、パヨクに馬鹿にされながら残ったほうがましだー」
今までの行い、そしてこれからわが身に降りかかる出来事を思い、わめきだした。しかし、その言葉をわかるものはほとんどおらず、呆れ顔の兵士たちに促され、やがて諦めたように異国の地を歩きだした。
どこぞの国では国民の多くの反対にかかわらず、国際的イベント続行。賛同する人もいるようですが、国民の怒り爆発、追い出されたときどうすんですかね。それとも皆様、国民が死屍累々、大半が屍になっても、自分らだけはーとかおもってるんでしょうか。自分らが他者にやってきたことの報いはかえってきますよーというニホン古来の言い伝えとかあったはずなんですが、ご存じないんでしょうかねえ。