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異世界漂流記  作者: YF-23
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 西暦2030年7月18日 航空自衛隊馬毛基地 基地司令室


 陸海空三自衛隊が駐留する基地の島、馬毛島は種子島の西方12kmに位置しており、米軍の空母艦載機がFCLP訓練地として使用してる他、航空自衛隊もヘリ空母【いずも】の空母化に伴い採用された『F-35B』の訓練、その他陸海自衛隊も南西諸島の有事に備え馬毛島を沖縄への中継地としてそれぞれ部隊を配備していた。

 そんな馬毛島の一角、航空基自衛隊馬毛基地の基地司令部が置かれてる建物の一室で基地司令官は報告に来た担当者からの報告を聞いていた。


「まだ連絡はつかんか・・・」

「はい。市ヶ谷との通信ケーブルは何処か切断してるらしく不通で、ウチの通信施設も民間の通信施設双方繋がりません。かと言って付近の鹿屋や新田原に連絡機を飛ばそうにも・・・」

「この霧か・・・」


 そう言って基地司令は海すら見えないレベルの霧に視線をやって溜め息を吐いた。

 外部との一切の連絡が取れなくなって約半日、まずは通信設備の故障を疑ったが、整備員曰く「問題無し。」何より全ての通信設備の一斉故障などまず有り得ず、こういう時の対処はマニュアルにも無いので、現状手探りであった。


「しかし海自の話はホントなのか?種子島が無くなってたって。」

「恐らく。」


 数時間前、痺れを切らした海上自衛隊の哨戒艦が馬毛島から15km程の距離の種子島西之港目指して出航したのだが、その報告は「種子島は発見されず」であった。

 視界制限状態ではあったものの、種子島の位置を間違える筈も無く、ただならぬ事態が起きていると判断して帰投した。

 ちなみに案の定哨戒艦のレーダーも使えなかった。


「一応、電力の問題も有りますが、陸自の移動式レーダーも一時的に稼働させましたが結果は同じでした。」

「電力の問題はどうしようもないな・・・」


 多数の航空機などが配備されている馬毛島には発電設備として火力発電施設や太陽光発電施設などがあるが、その施設は有事の際の施設として平時は近くの種子島から海底送電ケーブルで送られてきている。

 しかし、種子島が見つからず案の定送電も止まっている為、今現在は島内の火力発電設備を使い発電してたが、燃料であるアンモニアの備蓄は3〜4ヶ月程しかないし、基地の電気関連全てを賄うには出力がそもそも足りない。

 ちなみに燃料系統が異なる艦艇用燃料と航空機用燃料に関しては中継地点として整備されていたので艦艇用燃料は4個護衛隊群を満タンにする量が、航空機用燃料も2個飛行隊を全力戦闘で4ヶ月運用可能な量の燃料が備蓄されている。


「最悪は太陽光発電のみでの運用だな。」

「だとしたら基地としての運用は当然出来ませんがね。」


 基地司令はそう言うが、馬毛島内に設置されてるレベルの太陽光パネルではせいぜい基地内の照明と浄水設備の稼働が出来るぐらいのもので、航空機のエンジン稼働に必要なAPUや基地内のレーダー稼働に必要な電力は当然足りない。


「何が起きてるか分からん以上、捜索機を飛ばすのも艦艇を出すのも出来んなぁ。」


 一応、馬毛基地に配備されているF-35BやUH-60は全天候型なので視界の効かない霧の中でも飛行は可能であるし、護衛艦も小さくても航海用レーダーは搭載してるので航行は可能だ。

 一応、彼は基地司令なので彼の判断で航空機を飛ばす事は可能だ。

 ただ、レーダーや通信設備が使えないと言う前代未聞な事態が発生しており今後何が起きるか分からない今、貴重な燃料を失う事は避けたいという考えもあった。

 なので・・・


「取り敢えず警戒態勢は継続で霧が晴れるまで現状維持が無難かなぁ。」


 という当たり障りのない判断をするしかなかった。






 同時刻 ???? 海上自衛隊第5護衛隊群第5護衛隊 多目的イージス艦【たかお】


 BMD対処にあたる予定だったイージス・アショア代替として建造が決定した多目的イージス艦は計画段階から批判が絶えない船だった。

 マスコミからは令和の戦艦大和と揶揄された事もある多目的イージス艦だが、2027年に1番艦【たかお】2028年に2番艦【なち】が就役し、これまでBMD対応にあたっていた他のイージス艦が通常任務に戻っていくとその批判も少なくなっていった。

 陸上設置用のイージスシステムを艦載化した事で船体は巨大化し、結果的に【まや型】イージス護衛艦の2倍近くもの排水量となった。

 BMD対応の為、イージスシステムベースライン9を搭載し、護衛艦の中で最も高い防御力を誇る中で、新型の艦対空誘導弾や新開発の新型艦対地誘導弾、超射程の艦対艦誘導弾などの攻撃装備マシマシで搭載し、それによりVLSを128セルも搭載している。

 そんな多目的イージス艦【たかお】と海上自衛隊初となる空母である航空機搭載護衛艦【あかぎ】を中核とする第5護衛隊群第5護衛隊と一緒に行動していた第5護衛隊群第10護衛隊、補給艦2隻、潜水艦2隻、揚陸艦2隻の計14隻は現在、霧こそ晴れたが現在位置が掴めないという船乗りとして有るまじき状態に陥っていた。


「GPSは?」

「日米共に依然としてオフラインです。故障の類ではない事は確認済みです。ちなみに北斗やシグナス、ガレリオもです。」

「レーダーは?」

「本艦も【あかぎ】を含む僚艦もレーダーは依然として使用出来ていません。」


【たかお】のCICに入ってきた艦長の質問に対し主に情報・通信・整備などを船務長が報告した。

 本来の予定でいる筈だった場所では全世界で使えるアメリカのGPSと日本付近で使える『みちびき』の2種類がある筈だが、CIC内のGPSを表示するパネルの項目にはオフラインの文字が記載されていた。

 ちなみに北斗は中国、シグナスはロシア、ガレリオはヨーロッパの即位システムである。

 第5護衛隊群の中で最も高性能なレーダーを搭載しているのは弾道ミサイルの対処にあたる多目的イージス艦【たかお】であり、その探知範囲は約1500kmはある筈なので、そのレーダーが使えないのは非常に痛かった。


「取り敢えず艦長会議では第5護衛隊群として行動する事が決まったが、このままサンディエゴに行くのか真珠湾に戻るのかも現在地が分からない事にはどうしようもないからなぁ。」

「星が出て来たら北極星高度緯度法で緯度軽度が分かりますが、それまでは現場待機ですね。」


 そう言いながら久しぶりに使う六分儀の手入れをする航海士達だが、GPSなどの便利な航海計器が装備された現在、マトモに六分儀などを使える航海士など殆どいないのだから一応は使える自衛隊の教育は有事対応を考えていた。

 ちなみに昼でも太陽の位置で緯度軽度を測る方法はあるのだが、日も傾いてきている現在は誤差が大き過ぎるのでやらないだけだ。

 決して出来ない訳ではない。


「艦長、【いせ】【とうりゅう】【たいげい】の方も艦長会議が終わり、現在地が判明するまで潜水艦は浮上航行を行うと決定しました。」

「やはり海底データが分からん今は潜航するのは危険か・・・」


 艦長に報告した担当官が述べたのは高性能ソナーを搭載しており、海底の地形を把握するだけの能力を持った艦であった。

 最も、どの艦艇も性能の大小はあれどもソナーを搭載しているが、3隻の艦艇に搭載しているソナーだけは別格である。

 だがしかし、そんな事よりも今問題なのは潜航する事が最も大事な潜水艦を浮上させて航行させなければならない事であった。


「しっかし、旗艦の【トリエステ】を始め同盟国の艦艇はどこへ消えた?」

「レーダーや通信設備の不調はあれ、目立った外傷は無いので他の艦艇が沈没したって事はないでしょうが・・・」

「【あかぎ】より巨大な【クイーン・エリザベス】もか?」

「・・・有り得ませんね。」 


 そう言って2人は有り得ない事として話を一旦区切った。

 現代の艦艇がそう簡単に沈む筈無く、もし沈んだとしても艦艇間距離数kmの近さにいた自艦を始めとする日本艦艇に何の外傷も無いのはあり得ないからだ。


「それよりも私としては海底地形のデータが既存のデータと一致しないのが気になる。それと他の一切の通信をも傍受しないのもな・・・」

「そうですね。南太平洋ならば民間・軍事問わず通信が飛び交ってますから。」


 彼等が予測する位置は南北太平洋のほぼ中間地点だが、ハワイとアメリカ西海岸の間であり、当然北アメリカ大陸とユーラシア大陸間の船舶の往来も激しく多数の民間旅客機が飛び交ってる空域でもあった。

 なのに、一切の通信をも傍受できていない事に彼等は薄ら寒さを覚えていた。


「これ以上頭を捻っても仕方がない。レーダーが回復しなくても【あかぎ】の艦載機が周辺警戒をするし、異常事態だから一旦オアフ島に戻る事になってる。ハワイに近づいたら何か分かるだろう。」




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