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コント「ランチ」

作者: 桜耳

コント「ランチ」

客……ツッコミ

店員……ボケ


○店内


客、入店。


客「ここが、ランチが安くて美味しいと評判の店か。オシャレだな。夜はバーになるのか」


店員「そうだよ、いい店だろ。いらしゃい」


客「店員が馴れ馴れしいな」


店員「こちらの席へどうぞ、個室で手洗い場も近くてラベンダーの香りがします」


客「それお手洗いだろ。嫌だよ」


店員「人気の席なんですけどね」


客「そこのテーブル席がいいです」


店員「予約済で」


客「あの窓際の席は?」


店員「3人以上のお客様用で」


客「テラス席は?」


店員「ペット同伴のお客様用です」


客「俺、トイレで食べるの?」


店員「はい。一名なので」


客「便所飯させるなよ。衛生って知ってる?」


店員「しょうがないですね、今日はまだ混んでないので」


客「早く席に座らせて」


店員「テラス席へどうぞ」


客「なんでわざわざテラス席?」


店員「ペット同伴のようですので」


客「いや、いないよ」


店員「腸内に寄生虫を飼われているので」


客「飼ってないわ。いないよね?」


店員「……」


客「無言怖いな、気にしないでおこう。メニューをください」


店員「店内の壁に貼ってますよ」


客「テラス席じゃ見えないだろ。店内に行くの面倒だな」


店員「それでは口頭でお伝えします。本日のオススメは、虫下しです」


客「やめろよ笑えない、後で病院行くよ。料理の話をしてよ」


店員「虫下しは、『蒸し鶏のクリームパスタ、ダージリン紅茶、シャーベット』の略ですが」


客「分からん。絶対通じない略称だな」


店員「当店のメニューは全て、薬の名前になっております」


客「食欲無くすわ。なんでなの?」


店員「オーナーが薬剤師なので」


客「理由になってないよ。誰か止めろよ。他の料理は無いの?」


店員「他には、胃腸薬、解熱剤」


客「分かんない、正式名称でお願い」


店員「うるさい早くオーダーしろ」


客「厳しいな。ええと、虫下しの詳しい説明を聞きたいです」


店員「かしこまりました。古来より人類は寄生虫に悩まされており、海藻や木の皮が薬として利用され――」


客「薬の説明はいらないよ。料理の説明をしてくれ」


店員「前菜のサラダ、メインは蒸し鶏のパスタで、飲み物は紅茶、デザートはシャーベットです」


客「全然情報が増えてないな。まあいいや。それでお願いします」


店員「かしこまりました。虫下しで。紅茶はホットとアイスがありますが」


客「ホットで。前菜と一緒に出してください」


店員「かしこまりました」


店員、店に入る


客「変な店だけど、料理は普通そうだな。あ、値段を聞いてなかった、高かったらどうしよう?」


店員、料理を持ってくる。


店員「前菜の蒸し鶏のサラダです」


客「サラダにも蒸し鶏? ここは蒸し鶏の店なのか」


店員「お好みでこちらの特製ドレッシングをお使いください」


客「何ドレッシングですか?」


店員「紅茶はポットでの提供です。カップに移してお飲みください」


客「なんのドレッシングだよ、説明しろよ。怖いな」


店員、店内に戻る。


客「行っちゃったよ。どれ、紅茶は透明でオレンジ色。それにいい香り。……紅茶は美味しい。問題はドレッシング。なんか赤黒いんだけど。それに生臭いにおい。やめとこ、サラダは素材の味を楽しもう」


店員、料理を持ってくる。


店員「お待たせしました、メインの蒸し鶏のクリームパスタです。あと、こちらデザートの特製シャーベットです」


客「メインとデザートを同時に出しちゃダメでしょ。シャーベット溶けちゃう」


店員「常温で少しとかした後に食べると美味しいので」


客「なるほど。お腹減ってたから、すぐに料理が来て助かるよ」


客、パスタを食べる。


店員「こちら伝票です。ごゆっくりどうぞ」


店員、店外で作業する。


客「パスタもとても美味しい。ええと伝票。虫下しは税込で、九百円。確かにお得だな」


客、サラダとパスタを完食。


客「シャーベットを食べるか。あれ? これまだ固いぞ。まるで氷だ。店員さんすみません」


店員「お呼びですか」


客「シャーベットが固すぎて食べられないんですけど」


店員「一人だからですよ。二人以上で来店すれば食事しながら会話するでしょう? メインを食べる時間が長くなって、シャーベットがとけて食べ頃になります」


客「一人客に厳しいな」


店員「複数人の方が稼げますからね」


客「変なところ正直だな。正直ついでに、これは何ドレッシングなんだ?」


店員「……」


客「なんで沈黙なんだよ、全く」


店員「私、シャーベットの味も言っていないのですが、気にならないのですか?」


客「あ、確かに。何味なの?」


店員「当ててみてください。ヒントは普通の食材です」


客「ヒントになってないよ。……美味しい。甘くてしょっぱい。繊維質の歯ごたえ。そして最後に旨味が残る。これはやっぱり」


店員「生肉です、厳密には冷凍肉」


客「蒸し鶏じゃないのかよ。冷凍肉とか、何がシャーベットだよ」


店員「生肉にはコレが必須。はい、虫下しです」


客「もうやめて~」

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