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突如始まった同体?生活

瀬戸翔輝。わたしの幼なじみで、幼稚園から高校まで同じところに通ってきたんだけど、中学の二年の時にクラスが離れて、それ以来あまり喋らなくなった。 今は同じクラスに……いや、”元”同じクラスと言った方が正しいか。


だって……


『な?本当に居るだろ?』


当たり前のように頭に響く声。どうやら翔輝は幽霊になったらしい。本当にわけがわからない。とりあえず無視しよう。こんなのに返答してたらおかしい奴だと思われる。


『無視するなよ!』


スマホのアラームを止め、伸びをする。カーテンの隙間から漏れる陽光が眩しい。まだ学校に行く時間まではかなり猶予がある。もう少し部屋でゆっくりしていてもいいね。


『なぁ、おい!』


まぁでも着替えくらいは済ませておくか。いつまでもパジャマでいるのはね……あれ?


(翔輝、今あなたの視界はどうなっているの?)


『うおっいきなりだな……え、えっと、多分お前の視界と同じ?』


(そう……)


『あ、ああ。っていうよりやっと会話してくれたな!このまま無視され続けるのかとーーー』


「乙女の着替えを覗こうだなんて、いつの間にそんな見下げた奴になったの?」


『……! ふっ、不可抗力だ!しょうがないだろ!』


「お姉ちゃーん?なにか言ったー?」


「あ……な、なんでもなーい」


危ない危ない、声に出しちゃってたか。


(……変態)


『なっ……くっ……』


はぁ、虐めるのはこれくらいにして……どうやって着替えよう。あっそうだ。

急な思いつきのまま目を閉じる。


(どう?見える?)


『えっと、なんか変な……お前の妄想の世界?みたいなのが見える。』


(え?着替えだけに留まらず人の妄想まで覗くの?……流石にそれは……)


『だから不可抗力だって言ってるだろ!』


目を瞑ればとりあえず現実の方は見えなくなるみたいだけど…流石に慣れた自室でも目を閉じて着替えるのは無理な気がする。

……翔輝に目隠しできないかな?わたしの妄想の中っぽい場所に居るらしいし、夢の中みたいに……目を閉じて、集中……あっ!なんか翔輝が見えてきた!


『うおっ!なんか急に目が見えなくなった!』


(よし、目隠し作戦成功!)


『え?これお前がやったの?……え?』


やっと安心して着替えられる。まだなにか喚き散らしてるけど無視する。けど、ここまで脳がはっきりしてきても聞こえてくるってことはやっぱり本物なのかな?

考えている間に制服に着替え終わったので目隠しを取り払ってあげる。


『やっと見えるようになった……』


本当に死んでしまったというのなら、少し冷たくしすぎちゃったかな…… とりあえず対話を試みる。


(……本当にわたしの中に居るんだね)


『……そうらしいな』


(それで、死んじゃったんだよね)


『……そうだな』


まともに会話が通じる。ほっぺたを抓っても痛いし間違いなく夢じゃないはず。 本当にどうしてこうなったんだろ? それに……


(どうにかしてわたしの中から出られない? 流石に翔輝でもずっと一緒はちょっと……)


『それができたらとっくに出て行ってんだよ!!』




と、そんな感じで翔輝と話していると、朝食の時間になった。リビングに向かうと既に妹の陽菜が食べ始めていた。


「今日は早いね。何かあるの?」


「ん?んっ…学校の朝会があるから早いの。」


陽菜がご飯を飲み込んで答える。かわいい。


『相変わらず妹を溺愛してるんだな、お前』


(当たり前でしょ!こんなにかわいいんだから!)


わたしも席に着いて食べ始める。ニュースによると今日は晴れらしい。ただ、これから梅雨の時期に入ってくると思うと少し憂鬱になる。わたしは湿気で髪がどうこうなるタイプでは無いけど、それでなくてもじめじめとしたのは嫌い。


『雨は俺も嫌いだな』


(……さっきっからやけにこっちに話しかけてくるけど、暇なの?)


『そりゃ暇に決まってるだろ。俺はただ見ていることしか出来ないし』


(そうかもしれないけど、流石に四六時中あなたの暇つぶしに付き合ってるほどわたしは暇じゃないから。慣れて。)


『……分かった』


「じゃあもう行くね!お姉ちゃん!」


翔輝と話していたら、気づけばもう陽菜が家を出る時間だ。


「ん、行ってらっしゃい、陽菜。」


わたしもそろそろ食べ終わらないと。翔輝と話してたからあんまり進んでない。


『親は?いつも朝は居ないのか?』


(共働きでね、最近どっちも忙しいらしいの)


時折来る質問に適当に答えながら黙々と食べる。……これは黙々と、と言えるのか?

とりあえず食べることに集中したおかげで早めに食べ終わった。


お皿も片付けたし、ひどい寝癖はない。軽く髪に櫛をかけて整えて、学校への支度の再確認。わたしはえらいので昨日の夜に既に支度をし終えているのだ。


『自分でえらいとか言っちゃうのか……』


(……うっさい、死ね)


『もう死んでんだよ!』


あーー!わたしの心の声ダダ漏れなの忘れてた!恥ずか死ぬ……うぅ…


恥ずかしさを振り切るように鞄を勢いよく肩に掛けてそのまま家を出る。ちゃんと鍵閉めたし……よし、行こう。


こうしてわたしと幼なじみの同居生活が始まった。ーーひとつ屋根の下どころじゃなく、ひとつ体の中?とでも言おうか、というものだけど。

ああ、これからが憂鬱だ。

ちなみに奏は翔輝を直したことを覚えていません。

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