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夢はいつでもハッピーエンド

キラキラと紫色の光の粒が舞う。その光景はとても幻想的で、とても蜘蛛が砕け散った後だとは思えない。

十花さんはそれに見惚れているかのように目を離さない。


……いつもならちょうど敵を倒すか倒さないかくらいで目覚ましに起こされるのに、今日は遅いな。


「あれ?あそこに何か繭みたいなのがありませんか?」


十花さんの指さした方向は未だに光の粒が舞う場所。近づいてみるとたしかに何か繭みたいなのがある。


ーーーまさか第二形態とか?


流石にそのパターンは見たことないけど、と思いつつ、適当に普通の剣を創り出して繭をつっつくと解けるようにして中身が顕になる。その姿は人のようで……あれ?


「翔輝……? なん……え?」


「ひっ……」


ゆっくりと赤い液体がその繭から広がってゆく。それは間違いなくその中身のものから溢れているもので……それは見知った人の姿をしていた。


足が変な方向に曲がっている。全身に切り裂かれたような傷がある。とても直視できないであろう光景に、反射的にわたしは()()をした。


「違う!翔輝は死んでない!死んでないからっ!!」




ーー

ーーーー


「ーーーさん……神原さん!」


……朝から騒がしいな、今日はなにか予定でもあったかな……?


「んん…あれ……ここは?」


目を開けて見るとだいぶ暗い。それにベッドがめっちゃ硬い……っていうかこれ床か。


「あ!神原さん起きた!どうしたの!?何があったの?!」


「あれ?部長、なんで……ってそうか!まだ学校探索の途中だったっけ。」


「そうだよ!本当になんで寝てたの?何かあったの?」


「……よく覚えてないです」


どうやらわたしは学校探索中に寝てしまったらしい。記憶をたどってみるも、ギリギリ思い出せるのが旧校舎に入ったあたりまでのことだ。


「あっ!部長!十花さんも起きました!早くこんなところから脱出しましょう!」


「そうね、真希は天崎さんをお願い。私は神原さんを連れてく。」


その後何事もなくわたしは部長に連れられて学校を出た。旧校舎に入ってからのことは十花さんもよく思い出せないようで、部長と真希先輩の質問にも上手く返答できなかった。


念の為、わたしには部長が、十花さんには真希先輩が一緒に家まで送ってくれることになった。真希先輩と十花さんは家が結構近いみたいだけど、わたしの家と部長の家は遠いはず。いつも振り回されてばかりだけどこういう時は面倒見がいいらしい。わたしの部長に対する評価が二段階くらい上がる。


「……で、結局あそこで何があったかは思い出せないのか?」


「うーん……寝ている時の夢は、少し思い出せそうなような……」


「夢、か……どんな夢だったんだ?」


「えーとたしか、めっちゃ大きい蜘蛛を倒す夢だった……かな……あと、十花さんも夢に出てきたような」


朧気な記憶を頑張って掘り起こしてみるも、寝てしまった原因は思い出せない。そもそも、歩いてる途中で意識を失うなんてどうやったらそんなことになるのかさえ想像がつかない。それも二人一緒にとなると……


「人智を超えた何かが旧校舎にあるのかな……?」


「よし、じゃあ次の部活は旧校舎の探索だな!」


意気揚々とそう言う部長。え?本当に行くの?


「安心しろ。次は部のみんなで行くから、な?それも昼だ。」


「えぇー……」


困ったことに部長はこの未知に興味がおありらしい。今後の部活動に憂鬱になりつつもわたしは無事に家にたどり着いた。






時間はだいたい22時くらい。家族に伝えていた帰る時間もだいたいそのくらいだったので、特になにも言われることもなかった。

というよりわたしが帰るなりお風呂に入ってすぐに自分の部屋に入ってしまったのが主な理由だと思うけど。


そしてそのまま眠りに入ってしまったのだが……今この状況はなんだ。なぜ……


「なぜわたしの夢に翔輝が?」


「俺も分かんねえけど、多分お前に助けられたから、かなぁ……?」


翔輝が言うには、わたしが学校で見た夢の中に出てきた蜘蛛に囚われていた翔輝の魂を解放したからだと言う。


たしかに、今は夢の内容をほぼ思い出したから助けたのは覚えているけど、それは夢の中の翔輝であって、本物の翔輝ではないはず。

だけど目の前の翔輝は、


「俺は本物だ。嘘だと思うなら今すぐ起きて調べてくれてもいいよ。多分俺死んでると思うから。」


って言うんだ。一体どういう事なのかさっぱり。今日見る夢はやっぱりどこか変だ。疲れてるのかな、わたし。


というかそもそも魂を解放って何?厨二病?


「じゃあ、本物だとして、なんで翔輝は死んだの?」


「あー……多分自殺ってことになるかな」


「へー自殺。それはまたどうして?」


「なんか、あの蜘蛛に取り憑かれてさ、操られてたんだよ」


「……妖怪みたいなのがそんな回りくどいことする?」


「………さあな」


こんな要領を得ない会話が続いて……


ピピピピピ………


「……時間切れみたいだね」


「いや、起きてみろ。そしたら俺が死んだのが現実だって分かるはずだ」


「はいはい……」


そう適当に返しながらわたしは意識が浮上してゆくのに身を任せた。







◇◇◇◇



「ーー送り込んだ蜘蛛の反応が消えた……」


蜘蛛が死ぬのは別に意外なことでは無い。どこかで術者と出くわせばそこまで戦闘力のない蜘蛛など簡単に殺られてしまうだろう。だが……


「死んだ感覚もなく一瞬で消されたような……だとすれば?」


それを成すのは相当な実力者か……未知の術式か……なんにせよ厄介だ。

早急に魂を集めねばならないのに……まさかこのような邪魔立てが入るとは。


「……近いうちに確かめねば。」


ただでさえ効率が悪いこの方法が更に悪くなるのは避けたいところだ。我々の計画に遅れが出てしまう。……だが、


「これ程大量に集めて……あの方は何をなさるお積もりなのか……」

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