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土蜘蛛のあなぐら

最近、妙な気配をひしひしと感じていた。しかし、辺りに使い魔を飛ばそうが、何をしようがそれをしっかりと認識できることは無かったのだが……


「まさか地下だったとはね……」


この前の連続自殺事件の犯人、もとい犯霊のねぐら。それが香澄に倒されてからは全く目も向けなかったのだけれど、もっと早く調べるべきだった。


パタパタと洞窟の中を折り鶴が飛んでゆく。それに意識を集中させて洞窟の規模、内部の霊力反応の数、その強さまでを調べてゆく。


「これほどの規模は見たことがない……それに数も多い。一体一体もある程度の実力はありそうだね」


大まかに偵察を終えたと判断し、進路を入口の方へ戻す。今気づかれるべきでは無いのは明白だ。

慎重に視線を潜り抜け、使う霊力を極力抑えて飛行させ……止まった。


「……何かに引っかかった?……いえ、これは……」


突然、ぷつりと繋がりが絶たれ……と思ったら再び繋がった。途端感じる凄まじい霊力。間違いなく見つかった。


折り鶴が何者かに掴まれ運ばれてゆくのを感じる。幸いにも……なのか、未だに探知は出来るらしい。しかし何の目的で……


『あー……聞こえているかな?』


「っっ……」


頭の中に声が響いた。恐らく向こうの何者かが話しかけているのだろう……が……


(私の折り鶴は音声を届けられるようには術式を組んでいないはず……であれば……)


『ちょっと術式いじらせてもらったけど、どうかな? そっちからも話せるようにできたと思うけど?』


術式の書き換え。間違いない……だが有り得ないと言えるほどに難易度の高い芸当だ。


「……あなたは何者ですか」


私の知る限り、初見の術式でこんなことができる人間は居ない。そもそも術者によって同じ効力の術式でも特有の癖が出るものだ。当然それに合わせて書き換えなければならないためほぼ不可能とされているというのに……


『僕?……まぁいいか。ここまで来れたご褒美ってことで……』


そんなことが出来るのはあの伝説に語られる夢の神子様か……


『僕は白。昔は土蜘蛛とか呼ばれてたけど……分かる?』


妖怪ぐらいのものだ。




◇◇◇◇


『ーーー天ケ峯市にて、再び自殺者がーーー』


テレビのニュースが地元の大学の校舎を映し出す。キャスターはその事件を一通り説明し終えると、その近辺の自殺件数について触れ始めた。


『なぁ神原、これって……』


(あの蜘蛛の悪霊が関係してるって言いたいの?)


『そうだけど……』


翔輝がはっきり言いきらないような返事をする。多分、大元を倒した所を見たからこんな感じになっているんだろうけど……


(流石に偶然じゃない? 海鶴さんもああいう狡いのは珍しいとか言ってたしさ)


『…そうだよな』


またしても同じような返事。お父さんと再び話してからは割と元気になった感じで、関係も元に戻ったけどなんか今日はテンションが低い。


(元気無くない?どうしたの?)


『いや……何となく自殺のニュース見てると……親父が頭に浮かんで』


ああ、なるほど。と納得がいった。多分翔輝はその自殺のニュースを通してその家族の気持ちまで見えているような気分になってるんだ。


多分まだデリケートな部分な気がするから再び触れないようにしようと決めて、テレビを切った。きっとこのまま見せていても悩み続けるだけだろうし。


『なんかするのか?』


やることがなくて何となく立ち上がったわたしに問いかけてくる。時間は夜の十時。お風呂も入ったし、後は寝るだけって感じなんだけど……


(うーん……部屋で練習でもする?)


『宿題はしなくていいのか?』


(めんどくさいから明日やる)


『……期日明後日だが?』


(間に合うでしょ。それより今日はなんの練習しようか)


翔輝の小言めいた言葉を躱して強引に話を通す。呆れながらも翔輝がちょっと楽しそうな雰囲気になってくるのを感じる。


『全く……じゃあ今日は波涛拳の練習するか!』


(家の中でやる技じゃないじゃん)


『どうせ出ても光だけだから良いだろ』


(は? 今日こそちゃんと破壊力乗せるが?)


さっきまでの翔輝の暗い雰囲気はどこかへ消え去り、その夜は楽しいまま過ぎていった。


……結局破壊力は乗せられなかった。

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