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人を操る蜘蛛

『おい、あれみてみろよ!』


授業中だと言うのに翔輝が話しかけてくる。今大事なときだから黙ってて欲しいんだけど……


(何?どれ?)


『ほら、右前の席の寝てるやつの頭!』


示された人を見るとたしかに寝ているが、その頭部には特に異常はない。


(……なんもないけど?)


『いや嘘だろ?あんなでかい蜘蛛そうそういないぜ?』


そう言われても……どう見てもそんなのいない。もしや死んだ時の衝撃で頭が……?


『待て待て、なぜそうなる?』


(だってわたしには見えないし……幻覚じゃないの?)


『本当に見えないのか……もしかしてあの蜘蛛、俺を殺したやつと同じで妖怪か!?』


……妖怪だったらたしかに翔輝にみえてわたしに見えない可能性もあるか。でも……


(その妖怪はわたしが倒したんじゃなかった?そんな同じ奴がいっぱい居るんだったらもっと学校で自殺する人がいるでしょ)


『それはそうだけどさ……』


それからも度々蜘蛛の様子を報告してきたが無視していた。だが……




「む、村川さん?どこへ?」


先生の声に驚き前を見ると、さっきまで寝ていた人が立ち上がってどこかへ行こうとしているところだった。


『やっぱあの蜘蛛だって!絶対にあの人操られてるよ今!』


(……行くしかないか)


先生が理由を聞こうとしていたが、無視してそのまま教室を出ていってしまう。

ざわつき始める教室、先生はわけもわからず呆然としている。


「先生、ちょっと追いかけてきます!」


「え?ええ……」


わたしも立ち上がり村川さんを追いかける。全く、なぜこんな目立つことをしなければならないのか……


幸いにも階段を上る村川さんの歩みは遅く、すぐに追いつけた。


「ねぇ、大丈夫?どこ行くの?」


軽く肩を叩いたりしてみるが反応はなく、ただ階段を上っている。


『やっぱこの蜘蛛だよ、何とかしてまた倒そうぜ』


(どうやって?わたしには全然見えてないし、多分夢の中じゃないと無理だよ)


『うーん……ちょっと蜘蛛に触れるかどうか試したいから体借りていい?』


(……それは最終手段ね)


ただ、頭をひねっても強引に押して教室に戻すとか、そういう策しか思いつかない。


(蜘蛛の場所教えて?ちょっとその辺叩いてみるから)


『ああ、えっと頭の後ろにくっついてる』


指示に従ってその辺を叩いてみるも……


『駄目だ、なんかすり抜けてるよ』


(えー……じゃあどうしようもないじゃん!)


『だから一回体貸してみろって』


(……なんか言い方がキモイ。却下)


『いやいや……ていうかそんなこと言ってる場合じゃねえぞ!もうすぐ屋上だ!』


(……仕方ない、これでダメだったら後で……)


『わかったから、交代だ!』


(うん)


……意識の受け渡しってどうやるんだろ?と思ってたらなんか意識が沈んでゆく感覚。とりあえずこれに身を任せておこう……


(おっ!いけた!)


体の感覚が希薄になってゆく。自分じゃないものに体を動かされてる違和感、みたいなのはそんなに感じなくて、むしろ微睡んでいる時みたいな安心感がある気がする。


『……変なとこ触ったら殺すからね』


(わ、わかってるよ……)


翔輝と入れ替わってみると周りの景色はガラッと変わって、まるで夢の中のような………

ってこれ完全にいつも見てる夢の世界と同じだな。


試しにいつものようにクマのぬいぐるみを創ろうとすると、特に違和感なく創れた。


(そっちに見えてるの、お前の夢の世界だろ?だったらこの蜘蛛を何とかできるんじゃないかと思ったんだよ。)


村川さんの頭にいる蜘蛛を指し示しながら翔輝は言う。


『なるほど、一理あるね。 ……あれ?確かに蜘蛛いるね。さっきまでは見えなかったのに……』


(おお!なら俺の予想も正しいかもな!)


そう言いながら翔輝は蜘蛛に手を伸ばし、頭から払い飛ばそうとした。そしてその手が蜘蛛に触れるか触れないかというところで……


『あれ?蜘蛛が消えた?』


翔輝の視界から蜘蛛が忽然と姿を消した。

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