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令和百物語  作者: みるみる
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第九十五夜 マサヲとさっちゃん


さっちゃんの家の隣に、ある親子が引っ越してきました。   


ピンポーン、


「はーい。」


さっちゃんのお母さんが、産まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしながら、玄関の扉を開けました。


すると、ヨレヨレのTシャツを着てキャップを被ったおじさんと、その母親らしき女性が立っていました。


おじさんは、口から涎を垂らしていて、うちの玄関にはおじさんの涎がポトポトと落ちていました。


さっちゃんのお母さんは、おじさんの涎に釘付けでした。


「あの、隣に引っ越してきました山田と申します。あっ、この子はマサヲです。‥この子は小さい子が好きでね~。‥赤ちゃん、女の子かしら?可愛いわぁ。」


「‥あ、はい。女の子です。」


「‥ねぇ、もう少し良く見せて下さらない?この子、小さい子が大好きなの。‥ここからだとマサヲが赤ちゃんをよく見れないの‥。」


山田さん親子にそう言われて、さっちゃんのお母さんは少し警戒をしながらも、赤ちゃんを見せるだけなら‥と少し近づけて見せてあげました。


「‥あっ、赤ちゃ、ん、‥かわ、かわ、いい。」


「‥この子、本当に赤ちゃんや小さい子が大好きなの。マサヲ、良かったわねぇ。」


なかなか帰る気配のない親子に、さっちゃんのお母さんは痺れを切らして、赤ちゃんを自分の胸に寄せると、親子に向かって言いました。


「‥あの、もうそろそろいいですか?」


「‥この子がねぇ、小さな子を見るともう喜んでねぇ。」


「‥あの、もう帰って頂けますか?うちも忙しいんで‥。」


さっちゃんのお母さんがそう言った時でした。急に山田さんの様子が豹変しました。


「この子が赤ちゃん見たいって言ってんだから、見せろや!黙って見せとけや!」


「‥もう帰って下さい!警察を呼びますよ!」


「‥何だと?マサヲが何をしたって言うんだよ?警察?呼んでみろよ、おい、早く、呼んでみろって!」


「‥‥。」


さっちゃんはこの様子を見かねて、お母さんと赤ちゃんのもとへとやって来ました。


「こんにちは、幸子といいます。小学四年生です。赤ちゃんは、ミルクとおねむの時間なので、これで失礼させて頂きます。」


「‥赤ちゃんがミルク飲むところを見たいわよね、マサヲ。」


「‥ミルク、ミル、あか、ちゃ、ん‥。」

 

ウギャアーッ、アアー!


おじさんが赤ちゃんに手を伸ばした、その時でした。赤ちゃんがとうとう火がついたように泣き出してしまいました。


「‥お母さん、幸子ね、お隣さん家に行ってみたい。おばちゃん達行こう。幸子と早く行こうよ。」


さっちゃんは、そう言って山田さん親子の腕を強く引っ張って、強引に山田さん家に行こうとしました。


「幸子、だめ!行っちゃだめ!」


さっちゃんを心配して引き止めるお母さんに、さっちゃんは言いました。


「大丈夫。お隣りさんと少しお喋りしてからすぐに帰るから。」


さっちゃんのお母さんは、それでもさっちゃんの事が心配でしたが、さっちゃんはさっさと山田さん家に行ってしまいました。


さっちゃんは、山田さん家に入ると、とりあえずリビングへと通されました。


「幸子ちゃん‥さっちゃんでいいかしら?」


「うるせー、名前なんか呼んでくるな!くそばばぁ!」


「なっなんて子なの!親のしつけがなってないわねぇ。本当に口が悪い子ね。‥さっさと帰りなさい!マサヲちゃんにまで口が悪いのがうつっちゃうじゃない!」


山田さんは興奮した様子でした。それに、とにかくさっちゃんを家から追い出したいようでした。


「マサヲ、てめぇよくも家の玄関を涎まみれにしたな!お前の涎は臭いんだよ!てめぇの迷惑考えやがれ!」


「マ、マサヲちゃんの涎のどこが汚いのよ!帰って!もう二度と来ないで!」


山田さんはヒステリックにそう叫ぶと、台所の布巾をさっちゃんめがけて投げてきました。


「ばばぁ、てめぇ、何しやがる!」


さっちゃんは、そう言うと山田さんに体当たりして、転倒した山田さんの上に馬乗りになりました。


そしてマサヲを呼び、いつの間にか手に持っていたお椀にマサヲの涎を集めてから、山田さんの鼻にその涎を垂らしてから塗りたくり、口の中へも流し込んでやりました。


「やめろ!オェッ、臭え。‥オェーッ。」


さっちゃんは、山田さんの上に馬乗りになったまま、マサヲに向かって近くのカップやタオル、新聞紙、バナナなどを投げました。


「アハハハ、よけてやがる。よけてるのに当たってやがる!」


「どきなさい!マサヲを何するの!許さないから!」


「ばばぁは、大人しく気絶しとけって。」


さっちゃんはそう言うと、コーヒーメーカーを手に取って山田さんめがけて投げました。ですが、コーヒーメーカーが頭に当たった山田さんはとても興奮した様子で、なかなか気絶しませんでした。


「けっ、警察呼ぶわ!この悪魔!警察に捕まっちゃいなさい!」


「アハハハ、いいぞいいぞ。呼んでみな。」


さっちゃんはそう言って、馬乗りになって拘束してた山田さんを解放し、警察に電話をする山田さんを見守っていました。


ピンポーン、


「お取り込み中、失礼します。亀山署の者です。ご近所から、こちらでトラブルがあったようだと通報を受けてお邪魔しました。」


「‥あっ、ご近所?家ですよ、通報をしたのは。」


「‥ちょっと中に入らせて下さい。」


「‥あっ、ちょっと。」


警察は、荒れたリビングを見回した後、涎を垂らしたおじさんに首を絞められてもがいてる少女を発見し、すぐさま少女を保護しました。


「‥こい、つ‥ママを‥いじ、めた‥。悪いや、つ‥。ころす!」


「‥マサヲちゃん、もう大丈夫よ。警察の方がこの悪魔を捕まえてくれたから。」


山田さん親子は勝ち誇った顔をして、さっちゃんの顔を見ました。


ところが、さっちゃんはとても愉快そうに笑っています。


「‥未成年者の誘拐未遂と暴行の容疑で、あなた達を署に連行します。」


「‥あっ、えっ、ちょっと被害者は私達なのよ!あいつが私にコーヒーメーカーを投げてきたんだから!」


山田さんが警察に、さっちゃんの暴行についても訴えましたが、その時さっちゃんが泣き出してしまった為、警察は山田さんの話に聞く耳を持ってくれませんでした。


「うぇーん、だっておばちゃんが怖くて必死だったんだもん。うぇーん、怖かった。早くあのおじちゃんとおばちゃんを捕まえてー!お母さーん!」


山田さん家の玄関に来ていたさっちゃんのお母さんが、さっちゃんに走り寄って抱きしめてあげました。


実は、山田さん家から聞こえる物騒な音や声が気になった為、さっちゃんのお母さんが山田さんよりも先に警察に通報をしていたのでした。


「‥ちっ。くそガキ!演技しやがって!」


山田さん親子はさっちゃんに、そう言い放ってから警察に連行されて行きました。



その後、山田さん親子はここに居づらくなったのか、いつの間にか引っ越していました。



「‥幸子、もう他人の家に上がりこんじゃだめよ!世の中には怖い人がたくさんいるんだからね。‥幸子は大人しくて可愛いから、お母さん心配でしょうがないわ‥。」


そう言ってさっちゃんを心配するお母さんに、さっちゃんは抱きついて言いました。


「うん、お母さんやお父さん以外の大人は、皆んな悪い奴ばっかだもんね、気をつけるよ。


でもね、心配いらないよ。私がお母さんとお父さん、妹の美知瑠を守るからね。‥‥悪い奴は皆んな、私がやっつけてやるから。‥フフフ。」


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