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令和百物語  作者: みるみる
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第六十八夜 更衣室


「千春、また告白されてたね。付き合うの?」


「ええ〜、芽衣見てたの?」


「だって相手が、田村先輩だったから気になったんだもん。二人の後をつけちゃった。」


「‥やだ、全然気付かなかった。」


「で、田村先輩と付き合うの?」


「‥う〜ん、まだ分からない。」


「えっ、何それ。断るなら、ちゃんと断らないと先輩が可哀想でしょ。‥千春っていつもずるいよね。そうやって何人もキープしてさぁ。」



私は大学卒業と同時に地元のまあまあ有名な企業に就職しました。


同期は男女合わせて10人。それなりに仲良くやってきましたが、私はこの芽衣の事が少し苦手でした。


芽衣は入社してからずっと、先輩や同期の男性を恋愛対象として見ており、毎日仕事帰りに職場の男性の誰かを誘っては飲みに行っていました。


一方私は、実家の門限が厳しい為夜8時には帰宅しなければならないし、仕事も覚える事がたくさんある為、恋愛をする余裕はありませんでした。


それが職場の先輩達、特に男性に好印象を持たれ、時々デートのお誘いやお付き合いの申し込みをされていました。


それを良く思わない芽衣は、いつも就業後の更衣室で、こうして私に突っかかってくるのでした。


私はいい加減うんざりしていたので、この際はっきり迷惑だと言ってやろうと思いました。


「‥芽衣は何で私の事をそんなに気にするの?私の事を芽衣にとやかく言われたくないの!」


「‥千春のそういう所が嫌いなの!だから同期に嫌われてんのよ。」


「どうせ芽衣が私の悪口を言って、私が嫌われるように仕向けてんでしょ。私の悪口を言ってるのを聞いた事あるんだから。」


「‥千春、本当のあんたの事を田村先輩にも言ってやるんだから!」


「‥どうせまた嘘を吹き込むんでしょ。まぁ、良いわ。そんな嘘を信じる人なんていないだろうし、いたとしてもそんな人は、こっちから願い下げよ!」


私は芽衣にそう言い放ち、更衣室を出ました。



翌朝、出勤してすぐ更衣室のロッカーを開け、着替えようとしたところ‥使用済みのナプキンが私のロッカーに捨てられてました。


私はあきらかに芽衣の嫌がらせだと思いました。


そして、就業後にまたロッカーを開けると、今度は会社の給湯室の生ゴミがぶち撒けられていました。


私は芽衣の方を向いて睨みましたが、芽衣は知らん顔をしてさっさと更衣室を出て行きました。


私は掃除道具入れの雑巾でロッカーを掃除し、もう二度と更衣室のロッカーを使わないようにしようと決めました。


それからしばらくして、田村先輩が行方不明になりました。会社に警察が来て、私も事情聴取を受けましたが、田村先輩とプライベートでは一切接点がなかった為そんなにしつこく聴取を受ける事はありませんでした。


それからまた何日か後、私は仕事帰りに同級生と食事に行く約束をしました。その為に、久しぶりに更衣室のロッカーを使用しました。


着替えや持ち物を更衣室のロッカーに入れ、お気に入りのスカーフも掛けました。


鍵もかけたいところですが、貴重品はロッカーに入れずに各自で持ち歩く決まりになっていた為、掛けられませんでした。


以前に、ロッカーを部外者に荒らされた事があった為にそういう決まりになったそうです。


私は、就業中もお気に入りのスカーフや、久しぶりに会う同級生に渡すプレゼントの事が気になっていました。


そして就業時間になり、急いで更衣室へ向かおうとしたところ、課長に呼び止められてしまいました。


「悪いな、急な来客なんだ。急ぎで頼むよ。」


そう言って、課長に大量のコピーを頼まれたのです。


私は時計と睨めっこをしながら、10分以上もコピー機にくっついていました。


キャーッ!


廊下の方から悲鳴が聞こえたので、私も気になって皆んなと一緒に見に行くと、更衣室から血を流して這い出して来た芽衣がいました。


芽衣の手には、私のお気に入りのスカーフが握られていました。


芽衣は私の姿に気が付くと、


「千春ー!お前のせいだぞ!」


そう叫んで気絶しました。その時、更衣室から血塗れのハサミを持った見知らぬ男性が出てきました。


「‥千春の物を取ろうとした女を成敗してやった。アハハハハ、ざまぁみろ。千春、この女殺す?」


見知らぬ男はそう言って、私に近づいて来ましたが、通報を受けた警察官の到着により、その場で逮捕されました。


芽衣も救急車で運ばれて、救急外来へ連れて行かれましたが、命には別状はないようでした。


警察の調べによりますと、犯人の男は私を以前からストーカーしていたようで、私のロッカーからは盗撮機と盗聴機が発見されました。


犯人の男は取り調べで、田村先輩の殺害についても仄めかしていたようです。


芽衣が刺されたあの日、犯人は私のロッカーに入って私が来るのを待っていたそうです。


私が来たら襲ってやるつもりだったのだそうです。


そこへ、何も知らない芽衣が私のロッカーにあるスカーフをハサミで切ろうとして、ロッカーを開けたところ、犯人と出くわしたようです。犯人は、芽衣の持っていたハサミを奪い取り、芽衣を刺したのだそうです。



事件から二週間が経ちました。芽衣は、傷がなおっても出社する事はありませんでした。どうやら退職したようです。


この事件以来、会社の従業員用の扉には、特別な鍵がつけられ、完全に外部の人が入れないようになりました。


勿論ロッカーに鍵もつけられました。


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