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令和百物語  作者: みるみる
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第三十夜 タイムカプセル


今俺達は、10年前に卒業した中学校に来ていた。俺たちが卒業する時に埋めたタイムカプセルが、今日開封されるからだ。


「ただ今より桜田中学校平成22年度卒業生のタイムカプセルの開封式を行います。」


式典が始まったが、俺達はドキドキしてそれどころじゃなかった。


タイムカプセルが開けられたら、すぐに竹中の入れた手紙を回収しなきゃならないからだ。


竹中の手紙には、きっと俺達の事が書かれているに違いない。





竹中は、中学三年生の時の俺達の同級生だった。色白で眼鏡をかけて背が低かったが、顔が少し綺麗で霊感もあるとかで、かげで女子に人気があった。


俺達は、部活も夏休みで終わってしまい、高校も私立高校へのスポーツ推薦がほぼ決まっていた。授業も部活もどうでも良く、とにかく暇だった。


竹中は、そんな暇な俺達の興味をひいてやまない存在だった。


「おい竹中、お前霊が見えるんだろ、今日の夜に駅前の公園に来いよ。」


「竹中、来なかったらお前の小学生の妹を虐めてやるからな!」


俺達はそう言って竹中を、夜の公園に呼び出した。



「竹中、一人で来たな。親はいないな。」


竹中は黙って頷いた。


「竹中、お前このトイレの個室に入ってみろよ。」


「嫌だ!」


「ここで、どっかのおじさんが自殺したんだよな。お前ちょっとおじさんの霊の写真撮って来いよ。撮るまでドア開けさせねーからな。」


そう言うと、俺達は嫌がる竹中をトイレの個室に閉じ込め、扉の外側を皆んなで押さえた。


「やめろー!やめろ、わぁっ、だっうぅ、わぁう、うぅ‥‥。」


静かになったので、扉を開けると竹中は気絶していた。


「アハハ、学年一位の秀才のくせにダッサ。」


俺達は気絶した竹中をそのままにして帰った。


翌日、少しドキドキしたが、竹中はちゃんと登校してきた。


「おい竹中。お前ちゃんと霊の写真撮ったのか?夜の8時にスーパー大和の駐車場な。」


「その時間は塾だ。行かない。」


「お前、反抗的だな!俺達が妹をボッコボコにしてやるからな、良いのか?嫌なら塾休んで来いよ。」


俺達は、竹中が反抗した事にムカついていた。それに、塾だと?塾なんか誰が行かせるか!竹中が高校受験を失敗したら面白いだろうなぁ、なんて考えていた。


夜八時、案の定竹中は来た。


「なぁ、このスーパーの駐車場の隅で、車の中で一酸化炭素中毒で死んだ親子がいただろ。お前行って霊の写真を撮ってこいよ。」


「駄目だ!霊を馬鹿にしてると、霊が怒って酷い目にあうぞ!」


「だから、お前だけが行ってくればいいだろ。俺達は行かない。」



結局竹中は、駐車場の隅へ行った。だが、そのまま駐車場を出て走って逃げていった。


その翌日竹中が登校してきた時、俺達は竹中を連れて、体育館の裏に行った。


「おい、お前逃げたな!お前の妹がどうなっても良いのか?」


「親に言った。妹に何かあれば、教育委員会や学校へお前達の事を訴えてやる!」


「お前!」


俺達は、反抗的な竹中を何度も蹴って殴って立てなくした。顔や制服から出てる部分は、先生にばれるので何もしなかった。


それからも俺達は、竹中を事あるごとに虐めた。


けれども、竹中の親が学校にちくったり、学校の先生に虐めがばれる事はなかった。


そして卒業式の前、タイムカプセルの埋設式で、タイムカプセルの中に竹中が手紙を入れたのを見てしまった。


きっと、あの手紙には俺達の事が書いてあるはずだ。


卒業式後、竹中は志望校に落ちて自殺した。





タイムカプセルの開封式が終わり、カプセルの中身が長テーブルの上に並べられた。


「タイムカプセルの中をここに出したから、自由に手にとって見ていいぞ。」


先生がそう言ったので、俺達は、長テーブルの上の沢山の書類やアルバムの中から、竹中の入れた手紙をついに見つけた。


すみの方へ行って、俺達全員で開封して読んでみた。


平成32年のお前達へ


お前達、俺の部屋へ来い。俺の部屋の押し入れに俺の日記や手紙がある。


平成22年の竹中より




「げっ、気持ち悪っ。行くわけねーよな。竹中に何の思い入れもないし。」


「でも、あいつの自殺が俺達の虐めのせいだったら?俺達の虐めの事が書いてある日記や手紙をあいつの親が見つけたら?ネットに拡散されたらどうする?」


「やべーな。取りに行って、捨てないとな。」


そう言って、俺達は竹中の家へ行った。タイムカプセルの開封式へ行った事と、竹中のおまいりがしたいと言って、家の中に入れてもらった。


俺達は、竹中のお母さんの隙をみて、竹中の部屋を探し出し、押し入れを開けた。


空っぽの押し入れに小さな箱だけが置いてあった。


箱の中には、竹中の日記と手紙が入っていた。


手紙を開くと

 


〝うしろの正面だあれ?″



とだけ書かれていた。






令和二年二月某日


二十代男性三人が、五十代女性の容疑者宅で、容疑者に背中や首を中心に何箇所も刺されて重症を負わされた。被害者達は、容疑者の亡くなった息子の同級生だった。


容疑者は、逮捕・起訴されて、刑事裁判にかけられた。容疑者は判決が下る前に自殺した。


遺書には、息子の受けた虐めの内容や、虐めた人物の名前などが事細かく書かれていた。


この事件は週刊誌でもテレビでも騒がれて、大々的に広がった。被害者達の虐めが明らかになると、被害者達の個人情報もネット上で特定されて、ネットが炎上したという。


ちなみに容疑者には夫と娘がいたが、息子の自殺後に離婚して以降は別々に暮らしており、交流はなかったそうだ。


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