第二十五夜 未来
2009年5月30日
我々はついにタイムマシンを完成させた。下町の中小企業の我々が誰も成し遂げられなかった野望をついに叶えたのだ。
「社長、誰が乗りますか?」
「運転席に俺が座るから、助手席にあと一人か‥‥。」
「社長、僕は両親も妻も子供もいません。だから、宜しければ僕に乗らせて下さい。」
「桝田君、本当にいいのか。」
「はい。お願いします。」
「‥‥では、皆んな行ってくる。万が一我々が戻って来ない時は、後のことは頼む。」
「はい。どうか無事に帰ってきて下さい。」
こうして、私と桝田君の二人でタイムマシンに乗って未来へと向かった。
2020年5月30日
「社長、ここが未来なんですね。人口がとても減っていますね。」
「桝田君、少し降りてみるか。」
我々はタイムマシンを予め決めておいた隠し場所に隠して、東京の街をしばらく歩いた。
街は商店街もシャッターが閉まった店ばかりで、人影もなく閑散としていた。
飲食店も全て閉まっている。
「何だか様子が変だな。道行く人もまばらで、しかも皆マスクをしている。」
「我々もマスクを買おうか。」
そう言って薬局へ向かった。薬局の前では人々が、ある一定の距離を保ったまま行列を作っていた。我々もそれに従った。
中に入ると、マスクは全て品切れだった。
しかも、マスクなしで歩く我々を他のお客さんが訝しげに見ていく。
「桝田君、ハンカチを三角に折り、頭の後ろで結んでマスクがわりにしよう。このままでは、我々はどこへ行っても不審者扱いだ。」
こうして、我々はマスクを諦めて薬局を出た。マスクがなく、人影もまばらだということは、感染症が流行しているということか?
我々は一旦タイムマシンに戻り、この時代のネット回線に繋がり情報を得た。
「社長、これまでにないウイルスが世界中で流行し死者も大勢出ています。世界中で医療崩壊も起こっています。渡航や県を跨いだ外出も禁止されてます。
日本でも、学校は休業し、仕事も自宅で作業をするリモート出勤が主となっているようです。テレビも出演者達はリモート出演をしているようです。
飲食店や娯楽施設、芸術関連のイベントも禁止され、世界中で失業者が溢れて、犯罪が増えています。」
「桝田君、この世界は滅亡へ向かっているというのか。心配だ。もう少し未来へ行ってみよう。」
2023年5月30日
「桝田君、降りる前にネットに繋がって情報を得ようか。」
「はい。あっ、すぐに繋がりました。動作がとても早いです。あれからもウイルスは何種類か流行したようです。でも、その都度ワクチンや治療薬の開発に成功したようです。
ただ、世界地図が変わってます。日本も一部中国に変わっています。水道等の利権も中国が握っています。
インドが世界で一番影響力を持っているようです。アメリカはどうしたんでしょうね。
それにしても‥‥人口がこんなに減るとは驚きですね。世界中で出生率が極端に低下しています。お年寄りの安楽死も合法化されました。」
「桝田君、さっきからタイムマシンのまわりが騒がしいが‥‥。」
いつの間にかタイムマシンのまわりは、ロボット達に取り囲まれていた。
我々は高いビルの中に連行され、ロボットによる尋問を受けた。
そして、スクリーンで今の世界や日本の状態を詳しくみせて貰えた。
我々はロボットにタイムマシンまでついてきて貰い、無事に元の時代へと戻る事が出来た。
2009年5月30日
「社長、桝田君、お帰りなさい。無事で良かったです。それで、どうでした?」
「ああ、これから15年もたたない未来では、人類は皆自宅から出ない生活を送っていた。
バーチャルリアリティシステムで、家にいながら学校や仕事、旅行やコンサートにも行けるらしい。
食事も家で注文すると、ロボットが届けてくれるんだ。
外にはウイルスや犯罪者が溢れていて危険だからな。
それに出生率も極端に減っていて、老人の安楽死もごく自然に行われている為、人口は激減していた。
警察や消防といった危険な仕事は全てロボットが行っていた。
とにかく不思議な光景だったよ。だって、人々が家にこもっているせいか、街にはロボットだけが歩いているんだ。
まるで、人間が皆バーチャルリアリティの中で生きて、現実世界で生きてる事を忘れてしまったかのような世界だったよ。」




