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36 思わぬ再会 1/5

読者マン、新しい話よ!|*・ω・)ノ シュッ≡≡≡≡≡[36]゜

 旅の道連れが増えて街を出てから早一日。

 朝は快晴だったのに、いつの間にか霧が立ち込めていた。山に登ったわけでもない。湿ったそれが上着を濡らして酷く不快だ。

 男――ヴァーレンハイトは外套が重たいとぼやいている。

 視界が悪くてはぐれたら面倒だなと思った。


「一旦、どこかで霧が晴れるの待った方がいいかもねぇ」


 クロウェシアののんびりした声。さんせーいとシアリスカが手を上げた。

 とはいってもどこに身を潜めるべきか。


「ティアが一番はぐれそう……白くて小さいから……」

「うっさい」


 シアリスカは暖色の髪だし、クロウェシアは黒髪に紺色の服だ。ぼく――アーティアは白髪に余り強くない色の服。まぁ、見失いそうにはなるだろう。好きでこんな髪色をしているわけでもないのに。

 とりあえず小さいは余計だ。

 男がぼくの前に手を差し出す。


「ほら、はぐれたら困るだろ」


 小さい子じゃあるまいしと思いつつ、手を取る。シアリスカとクロウェシアがこちらを見てにやにやしているのが癪に障った。

 そういえばさ、と男が能天気な声を出す。


「おれ、族長さんたちに聞こうと思ってたことがあったの忘れてた……っていうのを今思い出した」

「なんでこの状況で?」


 なんでだろうなーと男は首を傾げる。霧のせいで表情はわからなかった。


「それってヴァーンじゃなきゃわからないこと? ボクでいいなら聞くよ」


 シアリスカの橙の頭がぴょこんと揺れた。

 男はそうだなーと空を見上げる。真っ白でなにも見えない。

 意を決したように、男はシアリスカを見下ろした。


「シュラ……さん? の後ろ姿に見覚えがあって。……メルディーヴァ孤児院のゼネラウスって人間族ヒューマシムの男を殺したことがないかって」


 シアリスカは目を瞬かせる。


「それって何年前?」

「十七年くらい前かなぁ」


 シアリスカはほうと息を吐く。


「じゃあそれ、シュラじゃないんじゃないかな。だって、そのころは百年戦争終盤の余波でみんな忙しくしてたし。地上に降りたのは部下たちだけじゃないかなぁ」


 そうか、と男はあっさりと頷く。

 んん、とクロウェシアが首を傾げた。


「それって、神族ディエイティストじゃなくてスッピーじゃないかなぁ」

「スッピー?」


 前にも聞いたことがある名前だが、誰だ。

 クロウェシアはこくんと頷く。


「スッピーはわたしと同じ<五賢王>の一角だよ。ダークスピネル。どんな姿にも変化出来る能力があるんだ。十七年前くらいなら、神族の誰かの姿を借りてあちこちうろついてたと思うし」

「ダークスピネル……」


 男は噛み締めるようにその名前を口の中で転がす。

 ぼくは男を見上げた。やっぱり表情は見えない。


「……復讐する?」

「しない」


 即答だった。ぼくだけでなく、シアリスカとクロウェシアも目を瞬かせる。


「別にそういうつもりで聞いたんじゃないよ。ただ、なんとなく気になってただけ」

「えぇ、復讐しないの?」


 心底不思議そうにシアリスカが首を捻る。

 うん、と男は簡単に答える。


「誰かを恨んで憎むのは百年戦争のときにもう一生分やったからな。あれは疲れる……」

「本当、ヴァーレンハイトって面倒くさがりだね」


 シアリスカが呆れている。

 男はくすりと笑った。


「それがおれだからねぇ」


 まぁ、確かに復讐に燃える相棒の姿なんて想像出来ない。

 男はちらとぼくを見る。繋いだ手をぎゅうと力強く握られた。


「……」

「復讐しなきゃ死ぬわけじゃないしなぁ」


 男は肩をすくめる。


「スッピーに会ったらどうするの」

「んー、覚えてるかどうかくらい聞いてみるかなぁ」


 男の手が温くなってきている。これは眠たくなってきたな?

 早くどこか休めるところを探さないと歩きながら寝る可能性もある。

 ぼくは呆れながら周囲を見渡した。

 既に結構な距離を歩いているはずだが、霧を抜ける気配もない。これは同じところを回っている可能性もあるなと思いながら視界の悪い中、目を凝らした。

 ゆらりとこちらへ向かってくる影がある。

 遠目でわかりにくいが、人だ。数は三人。


「……人が来る」

「こんな霧の中でよく見えるねぇ」


 シアリスカもぼくと同じ方向を見て、影を確認した。

 ゆらり、ゆらり、彼らは動く。動きがおかしいと思ったのはすぐだった。


「なに、なに?」


 クロウェシアも影を確認したのか、きょとんと目を瞬かせる。

 ゆらり、ゆらり、現れたのは額に青い石を嵌め込まれた三人の冒険者の姿。

 口から泡を吹き、白目を剥いている姿は異様でしかない。ビキビキと額の石から伸びる青黒い血管のような筋が鼓動に合わせて膨らむ。


「あオ、イ石……ホしイ……アおい、いシ……」

「力……ほシイ……助けて……ちカら、もット……」

「モっトぉぉォォおオおオオおっ」

「ア……あァ……イし……ヨこせ……殺しテ……アぁ……」


 もうほとんど理性がないのは明白だった。けれど、言葉の合間に意識を取り戻し助けを求める。まだ完全には青い石に乗っ取られていない。

 ぼくは大剣を抜くべきか迷った。

 その一瞬で飛び出したのはシアリスカとクロウェシア。

 パシンと鋭い音がしてシアリスカの鞭がしなる。三人の冒険者はびくりと身体を止めた。

 クロウェシアが手を宙で払うとむき出しの土しかなかった地面から勢いよく蔓が伸び、冒険者たちを拘束する。ミシリと骨が軋む音がした。


「ああ、もう駄目だね」


 シアリスカの鞭が冒険者の心臓を貫く。同時に全員の首が反転し、絶命した。クロウェシアが蔓で軽く捻っただけでことは終わった。

 しゅるしゅると蔓はなにもなかったかのように地面に帰っていく。


「ボクたち、まだ青い石を持ってないのに、どうして近付いてきたのかな」

「この青い石のこと? 気持ち悪ぅい」


 少年たちは完全に沈黙した冒険者たちを見下ろした。

 よく見れば冒険者たちが吐き出した血が青黒い。そっと近付いて、初めて彼らが人間族だと気付いた。


「直接触らないようにって言われたけど、布越しだったら大丈夫かな」


 シアリスカがポケットからはんかちを取り出し、それに膜で覆うように魔力をまとわせてから青い石を包むようにした。

 大丈夫そうだと気付いたシアリスカは鷲掴みするようにして石を毟り取る。


「おお、これが青い石かー」


 青黒い魔力を垂れ流すようにして、はんかち越しにシアリスカの掌に納まるそれはなにかを反射して鈍く光る。


「これで三つ手に入ったわけだけど……ちょっと少ないかな。アーティア、入ってる魔力がどれくらいか見える?」


 くるりとシアリスカがぼくを振り返る。

 ぼくはじっと彼の掌の石を見た。


「……なんとなく、保有魔力量が少ない気がする……」

「じゃあ、もう少しあるといいかな」


 シアリスカは大事そうに石をはんかちで包んでポケットに仕舞った。


「魔術陣を展開する暇もなかった。判断が早い……二人がいれば、おれはなにもしなくてもいいのでは……?」

「いや、動いてよ」


 しかし、確かに二人の判断は早かった。ぼくは一瞬でも彼らが助かる可能性を考えてしまった。それに対して二人は即座に三人は助からないと気付き、行動に移した。

 最初に気付いたのはぼくだったのに、それすら上回る判断力と行動力。

 ほうとぼくは息を吐いて感嘆する。

 これが神族四天王。

 これが魔族五賢王。

 ぼくはまだまだ弱いのだと気付かされる。


「それにしても、本当にどうして真っ直ぐおれたちの方へ向かって来たんだろうな」


 男がぼくの手を握りながら首を傾げる。焦りを見透かされたようでバツが悪い。

 くくと突然せんせいが笑った。


「恐らく、アーティアとヴァーレンハイトくんの身体に残る青い石の魔力に引き寄せられたのだろうね。見たまえ、先頭にいたこの冒険者、目が青黒くなっているじゃないか。石の力の影響だろう」


 徐々に霧が晴れていく。

 冒険者の中にいた魔術師が霧を発生させていたらしい。シアリスカが魔術師の額から石を取り外した途端だった。

 風が吹いて、霧を飛ばしていった。

 近くに大きくない村があるのが見えた。


「この距離だったか」

「やっぱり似たような場所をぐるぐる回ってたみたいだ」


 ぼくは男の手を離して上着の裾を絞る。べしょべしょとして気持ちが悪い。

 男も外套を絞ると足元に水たまりが出来たほどだった。

 しれっとシアリスカは魔力の膜で自身を覆っていたらしく、髪の毛一本濡れていない。


「あー、そうか、そうすればよかったのか……」


 男が悔しそうに呟く。

 クロウェシアだけは濡れても楽しそうにきゃっきゃとはしゃいでいた。

 冒険者たちに軽く黙祷をして、村へ向かって歩き出す。



「宿のある村だといいな」

「お風呂……」


 ぼやきながら村に着く。

 しかし不気味にしんとした村に、ぼくは警戒を強めた。


「……?」


 人がいない。

 まだ日が高いというのに、遊ぶ子どもの姿すら見えない。


「なんか変だ」


 男たちも頷く。

 カタンと音がして、人が見えた。いや、気配は至るところにあるのだ。

 だが動きがおかしい。ゆらり、ゆらり、酔っ払いのように覚束ない足取り。それには見覚えがある。

 つい先ほどのことだ。

 ぼくは大剣を抜く。

 男が魔術陣を展開した。


「青い石……!」


 クロウェシアが村人を指差す。その額には先ほど見たばかりの青く光る石が脈動していた。

 シアリスカがさっと周囲に視線を走らせる。

 あちこちからゆっくりと動き出すのは村人だったものたち。


「イ……し……」

「おナかスイた……」

「ち、カら……ホしィぃぃイイいいィ……」

「イイイいシィィぃいいいィィイイ」


 大人も子どもも男も女も関係ない。村人全ての額に青い石が寄生していた。

 先ほどの冒険者たちと同じか、それ以上に浸食された肌は見るに堪えない。

 ぼくは走って男性の首を落とした。

 一瞬、ほっとしたような顔を浮かべて彼は地面に倒れる。

 植物があちこちから伸びて村人に絡みついていき、動きを止めた。

 ぼくが首を落とし、シアリスカが鞭で貫き、男が魔術で動きを止め、クロウェシアが植物を操って首を折る。

 最後は作業のようだった。嫌な作業だ。

 足元に転がる赤子の遺体を見て、ぼくは顔をしかめる。その額にも青い石が埋め込まれていた。


「……一歩間違えば、おれもヤシャも――ティアもこんな風になっていたのかもしれないな」


 その言葉を聞いて、一瞬だけシアリスカの動きが止まる。

 それでも彼はまたもとのように黙々と石の回収を始めた。


「もし失敗したら、シアちんどうするの」


 クロウェシアがぼくたちでは聞けないことを平然と口にした。

 ぎょっとして彼女を見るが、クロウェシアは丸い目をぱちくりと瞬かせるだけだ。

 シアリスカは動きを止めず、クロウェシアの方も向かない。


「どうって……そのときはシリウスの首を落とすよ。そんでボクも死ぬ」


 けろりとした口調だった。


「ヴァーンたちには悪いけど、今のところ、四天王が前線で活躍するような場面はないしいいんじゃないかな」


 多分みんなもわかってるよ、とシアリスカは笑った。

 どういう精神構造をしているのだろう。その笑顔にぞっと背筋が凍るような思いがした。


(きっと、ぼくには真似出来ない)


 もしぼくが同じように大切な誰かを助けるためにあの青い石を提示されても、一歩踏み出せるかどうか。

 息を吐いて頭を振る。

 考えても仕方ない。実際にそうなってみないとわからないことだろう。

 村人たちの亡骸を道の端に寄せる。一つの村を壊滅させたのが青い石――アライアだと思うと腸が煮えくり返りそうだ。

 なんのためにこんな関係のない人たちが巻き込まれなければならないのか。

 その元凶の血を引いているということに怖気が走る。

 口を引き結ぶぼくの頭を、男がぽんと軽く叩いた。


「無事な人がいないか、探してみよう」

「……うん」


 家を一つ一つ見て回る。

 どの家も空っぽで、住人は外に転がっている状態だ。

 誰も残っていないか、と諦めかけたとき、男がぼくを呼んだ。

 とある家の納屋の前で立ち止まる男のそばに寄る。

 そっと戸を開けると、子どもが赤子を抱えて蹲っていた。


「青黒い魔力は見えない……生存者か」


 男が一歩近付くと、子ども――少年がびくりと身体を揺らす。


「こ、こないで……!」


 ぎゅうと胸に抱いた赤子を強く抱え込む。赤子は眠っているようだった。

 少年は目に大粒の涙を湛えてぼくたちを睨んでいる。


「ひ――人殺しっ!」


 少年が叫ぶ。


「父ちゃんと母ちゃんを返せよ……この人殺し!」


 外にいた誰かがこの少年と赤子の両親だったのだろうということはすぐに気が付いた。

 確かに、彼らの生命活動を止めたのはぼくたちだ。

 けれど、彼らはもう思考すら残っていないただの動く人形のようなものに成り下がっていた。

 そうは言っても少年にはわからないだろう。突然、村人たちや両親の様子がおかしくなっただけでなく、いきなりやってきた旅人が両親もろとも村人たちを殺して回ったのだから。

 ぼくはなにか言おうとして、言葉がないことに気付いた。

 なにも言えないまま、時間だけが過ぎる。

 男も固まったまま動けないでいる。

 そんなときにやってきたのはシアリスカとクロウェシアだった。

 青い石を回収し終わったのだろう。どこかから調達した布製の鞄から青黒い魔力が漏れている。


「どしたのー?」


 能天気に話しかけてくるのはクロウェシア。シアリスカも首を傾げている。

 人殺し、と少年がまた叫んだ。涙がぼろぼろとこぼれ落ちている。


「人殺し……それがどうかしたの」


 シアリスカはきょとんと目を瞬かせている。

 少年がびくりと震えた。


「確かにわたしたちはこの村中の人の生命活動を止めたよ。けど、その前から人格は死んでたよ。心臓は動いてても人として死んでるなら、それを殺したところでなんだっていうの?」


 クロウェシアも不思議そうに少年を見ている。


「ああ、そっか。クロエ、こういう人たちはね、例え心や脳が死んでても心臓が動いて呼吸をしていたら生きているって判断するんだよ。だから仲間が殺されたら怒るんだ」

「ふぅん? 意思疎通も出来ない、ただ動くだけの屍でも?」


 そうだよ、とシアリスカは頷く。


「それって自分の命より優先することかなぁ」

「人はビダンが好きだからね。見捨てたらすぐに周囲が後ろ指差して怒るんだ。ボクも神魔戦争のときとかにも言われたことあるよ。でも戦争が終わったらボクは英雄の一人として持ち上げられた。そんなもんだよ、人なんて」


 シアリスカは呆れたように肩をすくめる。


「でもこのままこの子たちをここに置いておけないよね、どうしよっか」


 シアリスカがちらりと少年を見る。少年はひぅと喉を鳴らした。


「他の人里って近くにある? 連れていくくらいなら出来るよね」


 ぼくは黙って頷く。

 男が荷物の中から辛うじて濡れなかった地図を取り出した。


「ええっと……ああ、南西の方角に小さい町があるみたいだ」

「じゃあそこに連れていこうか。他に生きてる人はいないみたいだし」


 少年たちを放って、彼らの処遇が決まる。

 どちらにしろ、彼らに選択肢はないだろう。赤子を連れたまま、幼い少年がどこかに行けるとも思えない。

 びくびくと震える少年の前にシアリスカがしゃがみ込んで、彼の顔を覗き込む。


「今からおまえたちを南西の町に連れていくよ。そこで誰かに引き取ってもらえば、生活出来るよね。赤ちゃんがいるから、若い女の人がいた方がいいかな?」

「な……なんで……」

「なにが?」

「ひ、人殺しが……どうしてオレたちを生かそうとするんだ」


 きょとんとシアリスカが目を瞬かせる。


「だって、おまえたちはまだ生きてるじゃない」


 なにを意味の分からないことを、と言わんばかりにシアリスカは首を傾げた。

 立ち上がろうとしない少年の手を引いてシアリスカは立ち上がる。

 そのまま納屋を出た。いつの間にか夕日が山の向こうへ消えようとしている。

 少年は夕日に目を細めた。ぽろぽろと涙がこぼれる。


「泣くのは南西の町で人に事情を話すときにしたら。ボクたち相手に泣いても、なにも出てこないよ」


 ひっくと少年が涙を詰まらせた。

 南西の方角の町を今から目指すつもりだろうか。今日は一晩どこかの家を借りて休んだ方がいいと思うが。

 シアリスカは首を振る。


「それだと一晩中、こいつはボクたちと一緒にいるストレスに晒されることになるでしょ。さっさと向こうの町に置いてった方がまだ消耗しないと思うよ」


 クロウェシアはよくわからないとまだ首を傾げている。


「ボクがちょちょいと行ってくればすぐ済むよー」


 そう言って転移魔法を発動させようとしたとき、村に入ってくる何者かの気配を感じてシアリスカは動きを止めた。

 くるりと振り向くと、男性の声で「うわ、なんやこれ」と叫ぶのが聞こえる。


(……聞き覚えがある声?)


 ぼくは男を見上げる。男も気付いたらしく、ぼくを見下ろして首を傾げた。


「仏さんがぎょーさん……なにがあったんや、ここ。……ん?」

「ちょっと、ギン。いきなり止まるんじゃねーですよ。もう少しで蹴るところだったじゃないですか」

「いや、踵踏んどるやないかい」


 ぎゃあぎゃあと騒がしい声がして、それが近付いてくる。

 家の影からひょいと顔を出したのは、見知った亜竜族ノ・ガルブスの顔。


「あっ、白髪ネギ!」

「うっさいトカゲの黒焼き!」

「滋養によさそうやないかい」

「栄養豊富そうじゃん……」


 なーにやってんですか、と亜竜族――ギン・カヨウの後ろから顔を出すのは妖精族フェアピクスのフレー人。


「ホウリョク」

「あ、アーティアじゃねーですか!」


 その後ろからはやはりルイとティアナ・ウィンディガムが顔を出した。


「あらあら、また妙な場所で会ったわね」

「……なにがあった?」


 ぼくと男は顔を見合わせる。

 客観的に見て、赤子を抱える泣いた少年を囲んでいる不審者だ。

 ルイが不審そうに眉間に皺を寄せた。

 その更に後ろから見覚えのある顔――ノエルが顔を出したのを見て、ぼくは天を仰ぐ。

 面倒くさい気配がひしひしと近付いてきていた。


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