19 魔法族、よもやま話 1/5
ほのぼのしたのを書こうと思ったらなんか時間かかりました。
闇魔法族の集落へ行って医者に診てもらったら、ニシキが飛んできて怒られた。
「もっと自分の身を大切にしてくださいって言ったでしょう」
ぼく――アーティアが自分の身を優先していたら、相棒の男――ヴァーレンハイトの首はとっくに繋がっていない気がする。
それを言うと今度は男も加わって怒られた。
ニシキ曰く、ぼくは右腕にヒビ、肋骨が二本折れていて、身体中の擦り傷裂傷で全治一か月から二か月。
男は骨こそ無事だが魔術の行使し過ぎで両手両目、脳の酷使と擦り傷。これは数週間ゆっくりすれば後遺症もなく治るだろうとのことだ。
ルイは肋骨を一本と全身の裂傷。全治二か月弱。
ティアナはそれほど怪我も多くなく、かすり傷程度だったようだが糸を使う指先に強い力が加わったせいでしばらく重いものを持ったり指先を使う動きを制限されていた。
ギンは肋骨二本と左腕を骨折。全身の裂傷。全治一か月。
ホウリョクは肋骨一本と脳震盪。全身の擦り傷。全治二か月。
全員(脳を揺らしたホウリョク以外)、自分の足でこの集落まで来たことを驚かれる怪我だった。
ぼくも含めて全員が擦り傷だけのつもりだったのにも驚かれたが。
「いやぁ、ひっさびさにこないな怪我したわ」
ギンは固定された左腕を鬱陶しそうにしながらホウリョクが横になるベッドを覗き込んだ。
ホウリョクは横にはなっているものの、ぷっくりと膨れてギンを睨みつけている。
「わたしの怪我のほとんど、ギンのせいじゃねーですか。どうしてくれやがるんです?」
「……すまんて」
ギンの診断で全治期間が短いのは彼が頑丈な亜竜族だからだ。ぼくもだいぶ頑丈な方ではあるが、鱗があるやつは耐性が違う。
彼ら亜竜族や龍族は元々鱗が外に出ているタイプと、ルカやギンのように衝撃を受けた場所にのみ鱗が発現するタイプがいるのだ。大抵は後者がより硬い鱗ということらしい。
ホウリョクのみ数日ベッドの住人となって様子見となるようだが、それ以外は基本的に自由だ。無理さえしなければ。ただ経過観察だとかでしばらくは闇の集落に留まるようには強く言われた。
「他の集落に行くのは?」
「……以前のように無理に走って行ったりしなければ、どうぞ」
無事ニシキの許可も出たので、ぼくたちはさっそく雷魔法族の集落へ行くことにする。
ルイたちはホウリョクがベッドの住人だし、なにより疲れたとのことで今日はそのまま休むようだ。
ぼくたちは集落を出て南西に向かって歩く。貴重品は持ち出すことを許されたが、大剣を背負うのすら禁止されているので背中が軽い。
集落を出たところで人がいないのを確認し、ぼくは振り返った。
「それで、どうしたの、ヤシャ」
ぼくたちの後ろをついてくるヤシャは目に見えて落ち込んでいた。
しょんぼりと肩を落としている。
「なんかあったのか」
男も心配そうにヤシャの顔を覗き込む。
「……俺、役に立たねぇなぁって思って」
ぼくと男は目を瞬いて顔を見合わせた。
ヤシャが役に立たなかったことはあっただろうか。
少なくともぼくは役立たずだと思ったことはない。
「んー、ヤシャがいなかったら、今回ティアが攫われてたことにも気付かなかっただろうし、朝も起きれなかったと思うぞ。それに、魔界ではルイたちに変に思われないようにこっそり見張りのいる場所とか教えてくれたし、奇襲に二手に分かれるって考えたのもヤシャだったじゃん。役に立ってないなんてこと、ないけどな」
「えっ、ヴァル、朝起きれたの!」
「ヤシャが起こしてくれた」
どやぁ、と何故か胸を張る男はともかく、よくヤシャがこの寝坊助を起こせたものだ。
疑問に思っていると、どうやらベッドや布団を触れずに動かすことが出来たらしい。
「え、すごい。これからヴァルのことヤシャに任せられる」
「毎朝はちょっと荷が重いかなぁ」
「そこは頑張ってほしい」
全く役に立ってないなんてことないじゃないか。
なのに何故、急にそんなことを思ったのか。
聞いてみると、どうやらヘルマスターたちやナールたちと戦っているのを見ているだけだったのが気になっていたらしい。
「……物理的に触れられないんだから、仕方ないんじゃない?」
「うん、おれもそう思う。なんでもかんでもヤシャに頼ってたら、おれたちのやることなくなるしなぁ。……いや、その方が楽なのでは?」
「幽霊に生活を支えてもらおうとするな。ヤシャはそれじゃ不満ってこと?」
不満っていうか、とヤシャは口を尖らせる。
「なんか、見てるだけってのが性に合わねぇ」
生前からまず自分が動くタイプだったのだろうか。性分なら仕方ないが、幽霊になってまでなんでもしようとするのは無理があるだろう。
そもそもものに触れないのだからやれることだって限られている。
「いつもの魔獣討伐依頼のときだって戦ってないじゃん」
「……だっておまえら、特に怪我もせず終わらせるじゃねーか。けど、今回は……」
ああ、要するに目の前で怪我をしたのが堪えたらしい。
男がヤシャの頭の辺りを撫でる。触れられているわけではないが。
なにすんだよとヤシャは目を丸くした。
「目の前でなすすべなく怪我されるときっついよなぁ」
言いながらぼくを見下ろす。
「……なにか言いたいなら言えばいいのに」
「いいえ、なにもー?」
ヤシャはきょとんとして、ぶはっと吹き出した。腹を抱えてくくくと笑う。
「そうだなぁ。生きてても届かないもんはたくさんあったんだ。死んでりゃ、そりゃあもっと届かないもんもあるよな」
なにか思い至ったようだ。
悪いな、とけろっとした顔でヤシャは笑った。
「しっかりしてよね。ヤシャには朝、ヴァルを起こすっていう使命があるんだから」
「うわっ、それ決定事項なのかよ。毎朝は勘弁してくれ。そんな使命はなんか嫌だ」
「おれは怒ればいいの、悲しめばいいの」
おまえにどちらの資格もない。
だらだらと話している間に雷の集落に着いた。
「ありがとな」
というヤシャの言葉は、人がいるので無視した。
+
「ティアちゃん!」
ジェウセニューの家に向かってみようかと歩いていたら声を掛けられた。
見れば買い物袋を提げたモミュア。
一人だが大丈夫なのだろうか。
「モミュア」
「わぁ、久しぶりね。今日はどうしたの?」
会うだけで嬉しそうに微笑むモミュアを見上げ、ぼくは言葉に詰まる。
「あ……えっと、ちょ、ちょっと近くまで来たから……」
「嘘吐け」
「モミュアのご飯食べたいって言ったのティアじゃん」
後ろで男二人がなにか言っているが知ったことではない。
モミュアはそうなのね、とにこにこと笑っている。
「ちょうどよかった。今からセニューの家に行こうと思ってたの。一緒に行かない?」
「い……行く」
背後から男二人の生暖かい視線が鬱陶しいが、ぼくはモミュアと並んだ。
「今日はグラタンを作ろうと思って。ティアちゃん、グラタンは好き?」
「……好き。嫌いなもの、あんまりない」
「えらいね」
モミュアがぼくの頭を撫でる。ぼくは振り払うことも出来ず、ただ俯いた。
「おお~、ティアが大人しいの面白れぇな」
「初めての友達だからな~」
男二人はあとで〆ようと思う。
集落のはずれにあるジェウセニューの家に着くと、ジェウセニューが驚いた顔で迎えてくれた。
「ティアちゃん、遊びに来てくれたんですって」
「本当か! いつまでこっちにいるんだ?」
「……怪我が治るまでだから二か月くらい」
「ってティア、また怪我したんか」
やんちゃだなぁとジェウセニューは笑い、モミュアは心配そうに眉を下げた。
「旅をしてるんだから当然かもしれないけど、気を付けてね。傷が残ったら大変」
以前、負傷した左腕の傷は薄くはなったがよく見れば残っている。今更だと思ったが、モミュアが気にするのならもう少し気を付けた方がいいのかもしれない。今回は不可抗力だけど。
こくりと頷くと、モミュアはほっとしたように微笑んだ。
「おれが何度言っても聞かないことを一度で聞かせるとは」
「まぁ、近しいやつが言うより、ちょっと離れたところにいるやつが言った方が聞くことってあるよな」
モミュアが台所に材料を広げるのを横から眺める。
ジェウセニューは「肉とってくる」と言って出ていった。……なんの肉かは考えないことにする。
「あ、」
モミュアが声を上げた。
どうしたの、と尋ねれば、モミュアは困った顔で首を傾げる。
「……お塩、買ってくるの忘れちゃった……」
「わかったぼくが買ってくるからモミュアはここで先に出来ることしてて」
早口に言うと、モミュアはこくこくと頷く。
また港町に塩を買いに行ってジャングルの奥に入られたら堪らない。
ジェウセニューが戻ってこないのを確認して、ぼくは男を引きずって外に出る。
一応モミュアのこだわりがあるらしく、どの店のどの塩を買ったらいいというのは教えてもらった。
「いや、ティア一人でも平気じゃないか?」
「……なにもないとは思うけど、モミュアと成人男性二人にするのは事案かなと思って。なにもないだろうけど」
「流石に未成年には手を出さないわ……」
出したら事案だって言ってんだろ。
何故かバナナの房を持っている男を引きずって南の方にある港を目指す。徒歩十分から十五分ほどの距離なので迷うことはない。……モミュアは迷うが。
指定の店を見つけ、言われた通りの塩を買う。依頼完了。
あとはジェウセニューの家に戻るだけだと集落に戻ったところでリークが走っているのを見かけた。
向こうも気付いたらしく、ぱっと笑顔を咲かせて駆け寄ってくる。
「ティア! ヴァルさんも! 来てたなら言ってくれればいいのに!」
「さっき来たばっかりなんだよ。あとジェウセニューの家しか知らないし……」
「……そうだったっけ。まぁいいわ。今度、招待するわね」
それより、とリークはちらりと男を見た。男は首を傾げる。
「そのバナナ、頂戴!」
「……バナナ?」
そういえば、と見れば男は何故かバナナの房を持っている。ジェウセニューの家の周りで見つけたから取って来たらしい。勝手にいいのかと思ったが、ジェウセニュー自身がいいと言ったらしく、なら問題ないかとぼくはリークを見た。
リークは両手を組んで必死な様子だ。
男はひょいとバナナの房をリークの前に差し出す。
「そんなに言わなくても、あげるよ」
「ありがとう!」
リークは大切なもののようにバナナの房を抱えると、「じゃあまたあとで!」と手を振って神殿の方へ去っていった。多分ニトーレ絡みだろう。
なんだったんだろうと思いつつ、塩を持ってジェウセニューの家に戻る。
ノックして家に入ると、ちょうど二人はモノを取ろうとして手が重なって……というシチュエーションの真っ最中だったらしく、顔を真っ赤にして離れた。
「先にヤシャに様子見させてから入ればよかったかな」
「俺はその様子を目撃することになんじゃねーか」
顔を冷まそうと手でぱたぱたと仰いでいるモミュアに「邪魔してごめんね」と言いながら塩を渡す。どもった声で礼を言われた。
「ちょ、ちょーっと狩りに行ってくるかな!」
「え、えええ、ええ、そうね、わかったわ!」
不自然なやり取りのあと、ジェウセニューは家を飛び出した。
家主のいない家で料理をする友達というシチュエーションには疑問を持たない二人の関係性がよくわからない。
「手伝うこと、ある?」
「ティアちゃんは座ってて」
怪我人なんだから、とテーブルの方へ向かされる。怪我と言っても右腕のヒビと肋骨くらいなのだが。
そういうと眉を吊り上げて怒られた。そもそも歩き回ることがおかしいらしい。
「……だって、モミュアの料理食べたいなと思ったんだよ」
「うっ。……そ、それは嬉しいけど、言ってくれたらいつでも作るわ。だから帰ったらちゃんとゆっくりして、治してね」
わかった、と頷くとモミュアはホッと息を吐く。
男が目や脳を酷使したと知ると、すぐさま椅子に座らせ、温めたタオルを目に置いてやっていた。男は嬉しそうにそのままの体勢で眠り始める。
モミュアは優しい。なんでそんなに優しいのかわからないくらいに。
ぼくはテーブルに突っ伏しながら料理するモミュアの背中を眺める。
(友達っていうより、話に聞くおかあさんみたいだ)
ぼくの母は叱るのも怒るのも苦手で、ぼくが勝手に外に出て怪我をしたときも治る怪我だけでよかった、帰ってきてくれてよかったと泣くだけの人だった。
ふわりと香る香辛料のにおい。母は料理苦手だったなと思い出す。
(……別にモミュアに母親を求めてるわけじゃないけど)
あくびを噛み殺す。
なんだかとても眠たくて、気が付いたらぼくの意識は夢の中に旅立っていた。
+
ちょっと早めの晩ごはんとしてモミュアのグラタンを食べて、ぼくたちはジェウセニューの家をあとにした。
明日はお見舞いに行くからちゃんとニシキのところで寝ていなさい、と叱られたので明日の予定は決まった。
男はモミュアの料理も食べたし明日はベッドでゆっくり出来ると知って大喜びだ。あんまり表情は変わっていないが。表情筋まで怠惰なやつだ。
ルイたちはそれぞれ割り当てられた病室に戻って休んでいるらしい。
男はルイ、ギンと同じ部屋、ぼくはホウリョクとティアナと同じ部屋だそうだ。
部屋に入ると髪をまとめたティアナがベッドの淵に座っていた。ホウリョクはベッドの中で眠っている。
起こさないように静かに扉を閉めると、ティアナが「おかえりなさい」と言った。
「……た、ただいま」
ぼくもベッドに座って右腕に気を付けながら上着を脱ぐ。髪は解いてゆるくまとめなおした。
ティアナはそれほどの傷じゃないからと病室に入るのを固辞していたが、どうせ宿のようなものはないのだからと押し切られていたなと思い出す。
「お友達のところは楽しかった?」
「とっ、とも、だち、って……」
「あら、違った? ヴァルがそう言ってたのだけど」
やっぱりあとで〆よう。いや、間違っては……間違ってはいないのだ。
「……と、友達、の、家、行ってきたん、だけど……」
俯いたぼくの顔はきっと赤い。
ふふとティアナは笑った。
「楽しかった?」
「……う、ん」
よかったわね、とティアナは手を伸ばしてぼくの頭を撫でた。
翌日。
今日は病室でじっとしていると言うと、ニシキは目に見えて嬉しそうにしていた。そんなにぼくたちは出歩くのが危険か。
ホウリョクはそろそろ横になっているのも飽きたらしい。頭を振ったりぶつけたりしなければ起き上がることを許されてほっとしたように微笑んだ。
「床ずれ出来ちゃいますよ、じっとしすぎてたら」
「ああ、じゃあ定期的にヴァルの様子見てもらわないと危ないかもね」
ティアナはくすくすと笑っている。
昼過ぎにはジェウセニューたちがリークを連れて見舞いに来てくれた。
女ばかりの部屋にジェウセニューはちょっとぎょっとしていたが。
「具合はどう?」
「怪我してたならちゃんと寝てなきゃ駄目じゃない。普通に歩いてるから元気なんだと思ってた」
「いや、普通に元気はある。ただちょっと折れてるだけで」
「それはちょっとじゃないかな……」
わいわいと騒がしくなるが、不思議と不愉快ではなかった。
あ、そうだ、とリークが取り出したのは酒瓶。そんな重そうなものどこに隠し持っていたのやら。
「昨日のバナナのお礼。本当はニトーレさんに貰ったんだけど……あたし、未成年だし」
「……だろうね」
何故ニトーレは未成年に酒を渡した。
「それで、ヴァルさんなら飲めるかなぁと思って持って来たんだけど」
リークはくるりとラベルを回した。
隣のベッドでホウリョクがカッと目を見開く。
「そっ、それは幻の魔族殺しじゃないですか! それを作ったと言われる酒造は今では代替わりして同じ味を出せなくなってしまい看板を下ろしてしまったとか……名前の由来は飲んだ魔族をことごとく酔い潰すほどの力強さと辛さ。しかしその中に感じる甘みは絶妙で、魔族でなくとも一口飲めば死んだ心地になり、飲み終わるころには何度も生まれ変わったような錯覚を覚えるとかで一部では危険視されて破棄されてしまい総数はもはや数えるほど……そんな幻の酒が目の前にあるなんて!」
長い、三行で。
こほん、とホウリョクは咳払いをしてリークに詰め寄った。
「お願いします、譲ってください! いえ、お金なら払いますよ! もちろん! お金ならギンが持ってやがりますから! どうか!」
結構騒いでいるが、大丈夫なのだろうか。
「そんなにすごいお酒なんだ、これ……」
とリークはドン引きだ。
ぼくもドン引きする。そんな大層な酒をぽんとバナナの礼として未成年に渡すニトーレに。
「なんやうっさいのう」
ノックもなしに扉を開けてきたのはギン。その後ろには男とルイもいる。一気に人口密度が上がった。
ギンもリークの手にある酒瓶を見て目を剥く。
「そ、それは幻の魔族殺し……! それを作ったと言われる酒造は――」
「あ、それもうホウリョクがやったからいいよ」
「だからって遮んなや、白髪ネギ」
「でかいのが多くて邪魔だから外出てくれる、炙りトカゲ」
どうどう、とルイがギンの首根っこを押さえた。
バナナの礼がとんでもないものに化けたらしいと気付いた男は面倒くさそうにしている。こいつも割と酒飲みな方だが、面倒と酒どちらを取るかと言えばそれはもう明白だ。
どうしよう、という顔をしているリークに左手を差し出す。右手は重いもの禁止令が出ている。
「お礼なら貰っておく」
「あ、うん、ありがとう。ほんと、助かったんだ」
バナナでどう助かるかはわからないが、よかったのならよかったということにしておこう。
酒瓶片手に男を見ると、男は首を横に振る。
「ホウリョク、なんか交換して」
「へ?」
バナナの礼として貰ったものだ。なにかと交換するなら構わないだろう。
リークを見ると、意図を理解したのか頷いている。
「えっ、譲ってくれるんですか。マジですか、やったぁ!」
「交換だけどね」
「じゃあギンあげます!」
「勝手に人と酒交換すなや!」
「え、いらない」
ですよねーとホウリョクはケラケラと笑った。
いや、本当にいらない。
結局、ホウリョクからはどこぞの洞窟で拾った(マイルド表現)という緑の石がはめ込まれた指輪を貰った。
光にかざすときらきらとしていて、風魔法族の目のように美しい。
彫刻も凝っていて、それなりの値段になりそうだ。
酒は無事、ホウリョクの腕の中に納まる。
「えへへへへ……幻の魔族殺し……どんな味がしやがるか楽しみですねぇ~」
「しばらくお酒は飲まないでくださいね。血管が影響受けるので」
部屋の前を通りがかったニシキが無慈悲に言い捨てていく。
がくりとホウリョクはベッドの上で崩れ落ちた。
「勝手に一人で飲むなよ」
「……わかってますよーだ」
ホウリョクはニシキに酒瓶を没収されるまで大事そうにそれを抱えていた。