13 武器を取る者 2/3
若干のケチャップと人死にあり。
本日2つ目の更新。
ヴァーレンハイトは夢を見ていると自覚していた。
だって、目の前に親友と義父がいて、一緒に笑っているのだから。
親友の名前はカオン・ルフェーヴル。
義父の名前はゼネラウス・メルディーヴァ。
どちらもヴァーレンハイトにとって大事な存在だった。
失ったのはどちらも百年戦争のせいだ。だからヴァーレンハイトは魔族が苦手である。
嫌いになれないのは、旅をするうちに魔族すべてが悪い人ではないと知ってしまったから。
いっそ嫌いなままでいられれば、気が楽だったのかもしれないと思う。
だって親友を殺したのは年若い姿をした魔族だったのだから。
はっきりと覚えているわけではない。あの戦火の中、ヴァーレンハイトはカオンに肩を貸してもらっている程度には負傷していたときだったから。
突然現れたそいつは周囲にいた魔族、人間族、その他の種族、生き物を問わずに一掃した。そしてカオンを殺したのだ。
死ぬと思った。やつはヴァーレンハイトの心臓を一撃した。
その際に思わず反撃したのは親友を殺された怒りがなによりも勝ったから。
全身を焼く炎の槍に貫かれ、よろけたそいつは崖下に落ちていった。
ヴァーレンハイトが確認できたのはそれまでだ。気が付いたら野戦病院で目を覚ました。
目を覚ましたことが嘘だと思った。だって、自分は心臓を貫かれたのだから。
おかしいと思って心臓のある位置を見ると、見たこともない痣が浮き上がっていた。それはまるで呪いのようで。
その日からヴァーレンハイトの魔力は飛躍的に上がった。まるで自分が魔族になったかのようだった。
カオンは既に共同墓地に埋葬されたあとだった。それがまたヴァーレンハイトの怒りを増長した。
なんとなくで生きていた彼にとって初めてと言っていい怒りだった。
「ヴァル……ヴァルは、生き延びてくれよ」
カオンの最期の言葉。それが胸に棘となって残っている。
怒りでどうにかなりそうだった。
絶対に魔族を生きて逃がさないと誓っていた。
その先のことは――正直、自分でもおぼろげだ。毎日毎日、飽きることなく戦場を歩き回り魔族を狩った。命を奪うということをなんとも思わなかった。
我に返ったのは戦争が終わったと他の兵に諫められたとき。
終わった。なにが? 戦争が。もう戦わなくていい。
そう聞いてヴァーレンハイトはほっとしたのを覚えている。
ああ、これでもう殺さなくていい。復讐という、戦争中という大義名分を失った以上、ヴァーレンハイトがやれることはない。
ほっとしたせいか、それからひと月ほど眠っていたのは驚いたが。
そのとき親友と義父が夢に出てきた気がする。
今見ているこの夢のように。
「ヴァル」
「ヴァーレンハイト」
二人が自分を呼んでいる。ヴァーレンハイトは顔を上げた。
濃い茶の髪に同じ色の瞳、尻尾のような後ろ髪をうなじでくくった少年――カオン。
色素の薄い茶髪に同じ色の瞳、長い髪をだらしなく垂らし、額に布を巻き付けた青年。腰には得意とする双刀を佩いている。いつの間にかほとんど同じ年齢になってしまった――ゼネラウス。
死者は成長しない。ヴァーレンハイトはこんなにも成長したというのに。
「カオン……ゼネラウス……」
名前を呼ぶ。手を伸ばすが届かない。
二人がふと笑った。
まだこっちに来るのは早いぞ、と口々に言う。
そんなつもりはないが、死にかけていただろうか。
二人はヴァーレンハイトが死にかけるたびに夢に現れてそう言うのだ。
今日はどうしたんだろう。
ああでも二人の顔を見れて幸せだ。まだ忘れていない。
そのことに安心してヴァーレンハイトは笑った。
きょとんと眼を瞬いた二人は、仕方ないな、と笑う。
「ほら、早く起きないと」
「あのお嬢ちゃんにまーたどやされちまうぞ」
それは怖いなぁ。ヴァーレンハイトは眉尻を下げる。
じゃーな、とカオンが手を振る。
ああ、夢が終わるんだな、と思った。
目の前が白くなって、ヴァーレンハイトは目を閉じる。
相棒――アーティアの声が聞こえた気がした。
+
「起きろ、この馬鹿!」
アーティアの声が聞こえて、ヴァーレンハイトはぱちくりと目を瞬いた。
そっと布団の中から顔を出す。相棒が目を吊り上げて立っているのが見えた。
「……おはよ、ティア……」
ぼんやりと起き上がって頭を掻く。
アーティアはヴァーレンハイトの外套を彼の顔に投げつけると大声で言った。
「焼け死にたくないならさっさと準備して!」
焼け死に? 目を瞬いて、窓の外を見る。
なんだか嫌に赤かった。
「……は?」
「は、じゃない。ぼくはもう準備出来てる。あとはあんただけ。さっさとしないと置いていくよ」
「えぇ……」
知らぬ間に命の危機に瀕していたらしい。そりゃあ親友たちの夢を見るわけだ。
いや、そんなことを考えている場合ではない。
ヴァーレンハイトは急いで身支度を整えると荷物を抱え、アーティアの先導に従って宿を出た。
外は火の海だった。
あちこちが燃えていて、人々が悲鳴を上げて逃げまどっている。
どうしてこんなことに。
「神族だ! 傲慢なる神族どもが攻めてきたのだ!」
聞き覚えがある声がしてそちらを向けば、昼間に演説をしていた男が騒いでいる。
流石に誰も聞いてはいないようだ。
水を桶に溜めて家にかける人、茫然と燃える家を眺めている人、街を出ようと走っていく人……。そのうち走っている人にぶつかられて男は尻もちをついた。
「た、戦え! 戦うのだ! 我ら誇り高き人間族の誇りにかけて忌々しき神族どもと戦うのだ!」
男が腕を振り上げる。
けれど賛同する者はいない。
「――じゃあ、あなたが戦ってくれませんか」
いつの間にか、昼間の姉妹――シュエットが男の前に立っていた。
にっこりと笑う姿は妖艶。
だが、その声は――
「……男?」
「いつまでぼーっとしてんの、行くよ!」
ヴァーレンハイトの腕をアーティアが引っ張る。そのまま駆け出されて、ヴァーレンハイトは少々足をもつれさせた。
シュエットの後ろ姿が目に入る。――その手には片刃で細身の剣。
「ぎゃあっ」
悲鳴が聞こえて、シュエットの足元で男が血を流しているのが見えた。
「な――」
目を見開く。
アーティアに引っ張られる。
最後に見えたのはシュエットの腕が動き、男の首が飛んだところだった。
ぜぇはぁと息を切らせながらアーティアを追って走る。
煙が酷い。
空は夜であることを差し引いても黒煙で真っ黒。
煤が風に乗ってヴァーレンハイトたちを襲ってくる。
ヴァーレンハイトは口元を袖で覆いながら、前を行く相棒に声をかけた。
「どこまで行くんだよ」
街の入り口からは遠ざかっている。
まさかアーティアがこのくらいで混乱して道に迷っているとは思えない。
アーティアはこほんと一つ咳を零してヴァーレンハイトを振り返りもせずに小さく答える。
「街の入り口は閉鎖されてる。今から行くのは非常口」
非常口とはなんのことだろうか。
いつの間に街の全景を把握したのだろう。
人気のない道を走り、袋小路に出た。
火の手は背後まで迫っている。
「行き止まりだぞ?」
「大丈夫」
それだけ言って、アーティアはそびえたつ壁に手を置いた。
その手がずぶりと壁に吸い込まれる。
ぎょっとしてヴァーレンハイトはアーティアの顔を見た。
アーティアはなんでもないような顔でヴァーレンハイトに手を差し出す。
「手、握って。決まった人しか通れないようにしてあるらしいから」
そっとその小さな手を握る。ぎゅうと力強く握りこまれた。
ぐいと再び引っ張られ、ヴァーレンハイトは壁に近付く。
ぶつかる、と思った感触はいつまでもやってこず、ヴァーレンハイトが目を開けると街の外だった。
背後には街の壁がそびえている。
「……えっ」
「さっさとここを離れよう」
そのままアーティアの小さな手に引かれて歩き出す。
街全体が燃えているとわかる場所まで歩いて、アーティアは手を離した。
胸を撫で下ろすように息を吐いて、街を見る。
「馬鹿が馬鹿げたこと言い出さなければみんなで死ぬことなかったのに」
どういうことだろう。
どうしてこんなことが起こっているのか、アーティアは知っているようだった。
尋ねようと口を開く前にアーティアは野営の準備を始める。
「今日はここで寝よう」
アーティアは答える気がないようだ。
仕方なしにヴァーレンハイトも寝る準備を手伝う。
荷物を枕にして地面に直接寝転ぶ。
街の方角は空まで赤くなっているが、離れたこの辺りは星が綺麗に見える。
街で最後に見えたシュエットは一体?
珍しく目が冴えて眠れる気がしない。
隣を見ればアーティアは既に寝ているようだった。
「……寝ずの番でもするか」
もぞりと起きだし胡坐をかく。
少し、風が冷たかった。
朝になって、ヴァーレンハイトは自分が膝を抱えて眠っていたことに気付いた。
またやってしまった。寝ずの番の意味とは。
とにかく襲われなくてよかった、と小さく息を吐く。
ふいに近付いてくる気配を感じて顔を上げた。
起こそうとしていたらしいアーティアがぎょっと目を見開く。
「うわ、ヴァルが起こしてないのに起きてる……」
「……たまにはそんな日もあるだろ」
「この二年ちょい、なかったよそんなこと」
そうだったっけ。
首を傾げるヴァーレンハイトの頭をペシリと叩いてアーティアは息を吐く。
「お客さんだよ」
お客さん、とアーティアの視線を辿る。
――シュエットとコーレがなんでもない顔で立っていた。
昨日と違うのはシュエットが鞘に入れた細身の剣を持っていること、それからコーレの服が赤く染まっていることだ。
「おっはよーう」
コーレがにこりと笑う。
おはよう、と返すと嬉しそうに笑みを深めた。
「……え、なにごと?」
アーティアを見るも、アーティアの視線は二人に釘付けのまま。
「ぼくたちを巻き込んでくれたんだ。話してくれるよね」
「ええ」
頷くのはシュエット。……やはり声が男性のものだった。
「……えーと……」
戸惑っていると、我慢していたらしいコーレがふっと吹き出した。
「ごめん、もう無理! シュラ、その恰好もういいでしょ、止めて!」
あははははと腹を抱えて笑うコーレをシュエット――シュラと呼ばれた男は憮然とした顔で見ている。
仕方ないでしょう、と答えると風が巻き起こり、目を瞑った一瞬で男の姿が変わる。
長い黒髪を高いところで結い、白い前合わせの変わった服に襞のついたスカートのようなズボン、前髪から覗く双眸は赤い。
隣でぱちりと瞬きしたコーレの瞳も赤に変わった。
「……は?」
意味がわからなくてヴァーレンハイトは二人を見比べた。
どう見ても神族の男女だ。あの艶やかな美女はどこへ。
「ふふ、驚いてくれてありがと。あたしはコウ・アマネ・エーゼルジュ。神族、四天王直属の部下をやってるの」
それで、とコーレ――コウは隣を示す。
「こっちはシュラ。一応、四天王に数えられてるあたしの直接上司」
神族の四天王と言えば、神族の長<聖帝>直臣だ。そのうちの一人がどうしてこんなところにいるのだろう。
……女装までして。
思わず男――シュラを見ると、彼はため息をついてコウを示した。
「コウが姉妹姿で潜入した方が油断を誘えていい、と言ったからやったまでです。趣味嗜好はそちらにはありませんよ」
にこりと笑うシュラに、ぞっと背筋に悪寒が走った。
「いいじゃん、似合ってたのに」
「嬉しいと思います?」
……コウは本当にシュラの部下なのだろうか。敬語を使うとか、敬うとかそんな姿勢が見られない。
「それで、なんで街ごと焼き払ったの。首謀者を殺すだけじゃ駄目だったの」
アーティアが言う。見れば彼女は無表情で二人を見上げていた。
「……出来ればその方が楽だったのですがね、残念なことにあの首謀者の男に賛同している者が多くって」
「なんかよくわからないオマジナイも流行ってたみたいで、そのオマジナイを実行すると神族に会えるとか神界に行けるとか胡散臭いことやってくれちゃってたんだよ。で、そのオマジナイをやったやつらが神族の暴行殺害、器物破損に火付けその他もろもろやってくれちゃったんだよねー」
なんだそのオマジナイ。効果絶大で怖いな。ヴァーレンハイトは口に出さずに黙っておく。
「で、首謀者の男はここに来るまでに既に同じような演説を各地でやっておりまして。話し合いに向かった部下の一人が殺される事態になったので、私たちが粛清にやってきたというわけです」
あの男、結構とんでもないやつだった。
「オマジナイは封じて実行出来ないようにしましたし、首謀者の男も黙らせました。私たちが請け負った任務は以上です」
「でも……関係ない人もいたんじゃ……」
ちらりとシュラがヴァーレンハイトを見る。
首を振った。
「残念ながら、武器を取った時点で敵対意思ありとして対応しました。大分、武器の類が集まっていたようでしたし」
ふうと頬に手を当ててため息を吐く。
「今度は百年、神族と人間族の間で戦争だなんて笑えませんからね」
十二年前に集結した百年戦争は、もとは小さな小競り合いから始まったと言われている。
「……戦争を起こさないために、街は犠牲になったのか……」
複雑な気分だった。
そういえば、どうしてアーティアは抜け道を知っていたのだろうか。
アーティアを見れば、肩をすくめる。
「ぼくは二人を見たときから神族が変装しているんだって気付いてたからね、それで宿に荷物を置いたあと二人を探して話を聞いたんだ。そのときに事情と、昨晩のことを聞いた。抜け道と一緒にね」
それで一人、宿を出ていったのか。
納得して、ホッとする。あのとき様子が変だったのはあの街にいるはずのない神族がいたからだったのか。
でも、とアーティアは首を傾げる。
「わざわざ四天王の一角が出てくるようなものだったの?」
いくら神族が多数殺傷されたとはいえ、だ。
それとも殺されたのは幹部レベルの人物たちだったのだろうか。
それに対してシュラは首を振る。
「いわゆる無辜の民ってやつですよ。いくら神族とはいえ、世界に関わらず平凡に暮らしている非戦闘民だっています」
他の組織は知りませんが、とシュラは前置きしてヴァーレンハイトとアーティアを見る。
「私たち神族幹部は手を出されたのが名も知らぬ民間人だろうと立ち上がります」
「……それで自分の手を汚すことになっても?」
シュラはアーティアを見下ろす。目が細められ、ふと笑った。
「私は、ヴァーンが傷付く前に自らの手を汚します。ええ、彼のためならばいくらでも汚しましょう」
シュラが手を握り締める。その拳は真っ白だった。
「彼が目指す世界を見るためなら――」
シュラが顔を上げる。真っ赤な目が燃えているようだ。
「私は喜んで、鬼神にすら成りましょう」
くるりと踵を返し、シュラは遠ざかっていく。
「目指す、世界……?」
その背中を眺めながら、コウが笑う。
「――子どもが理不尽に泣かなくていい世界」
「え?」
「あたしたちが本当に欲しいのは、ただそれだけなんだよ」
ちらりとアーティアを見、じゃあね、と手を振ってシュラを追いかけていくコウ。
それを茫然と見送って、ヴァーレンハイトは息を吐いた。
なんだか疲れた。
それにしても、シュラのあの背中、どこかで見た覚えがあるような。
ヴァーレンハイトは腕を組んで唸る。どこだったっけ。
随分昔のような気がする。
少し考えてみたが、やっぱり思い出せない。諦めてヴァーレンハイトは頭を掻いた。
アーティアは「せめて消耗品の補給くらいさせてほしかった」と言いながら荷物から携帯食料を取り出している。
ヴァーレンハイトもそれに倣った。
もそもそと二人無言で美味しくもない携帯食料を食べる。以前、魔法族の集落で貰った特製の携帯食料は美味しかったのにな、と内心ひとりごちながら口を動かす。
ごちそうさま、と出たゴミを荷物にしまい、アーティアが立ち上がる。
「さて、今日も元気に歩きますかー」
ちょっとおどけたようなその声に、ヴァーレンハイトはくすりと笑う。
おー、と返事をして、彼も立ち上がった。
街の方を見ればもう火は落ち着いたらしく、灰色の煙を少しだけ吐き出しているのが見えるだけだ。
空は街があんなことになったというのに、青い。
さっさと歩きだすアーティアの小さな背を追いながら、ヴァーレンハイトは考える。
きっとアーティアがシュラたちを見つけたのではなく、彼らがアーティアを待っていたのだろう。そして街から逃げるように言ったのだろう。
アーティアが子どもの姿だから? ……それだけではない気がした。
「なぁ、ティア」
呼んでみると、すぐになぁに、と返事が返ってきた。
いつも通りの顔でヴァーレンハイトを振り返る。
「あの二人、知り合いだったのか」
「知らない」
おや、とヴァーレンハイトは眉を上げる。
「でも、多分向こうはぼくを知っていたんだろうね」
何故、と問えば、
「神族の偉い人の誰かが母の身内らしいから」
「えっ」
ではアーティアはその偉い人の親族ということになる。
「偉い人って誰」
「知らない。顔は見たことあるんだけど……覚えてない」
小さいころだったからね、と肩をすくめる。
相棒の意外な関係に目を瞬く。その人のところへ行かなくていいのだろうか。
ヴァーレンハイトが首を傾げていると、考えていることがわかったのか、アーティアはため息を吐く。
「ぼくは狭い世界に閉じ込められてオジョウサマごっこなんてするつもりはないよ。それに、ぼくには旅が性に合ってる」
確かに、とヴァーレンハイトは吹き出した。
失礼なやつだとアーティアは憤慨して足を速める。
その背を追いながらヴァーレンハイトは顔も知らない彼女の親族に彼女を引き取らなくてありがとうと心の中で礼を言う。もし引き取られていたらヴァーレンハイトはアーティアとは出会えなかった。
アーティアに並ぶ。
その小さな頭を見下ろして、ぐしゃりと混ぜ返す。
「うわっ、なにすんの」
手を振り払われて、怒られる。
「ティアがティアでよかったと思ったんだよ」
はぁ、とアーティアは首を傾げたが、ヴァーレンハイトは答えるつもりはない。
アーティアが純粋な神族でなくてよかった。そうだったらあの街で殺されていたかもしれない。
ふとそんなことを考えて、ヴァーレンハイトは苦笑する。
(おれって結構薄情な人間族だな)
同族よりもこの小さな存在の方が大事だ。
それを自覚して、ヴァーレンハイトはひとつ、あくびをかみ殺した。