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作者: 黒昭

短いうえにあまりきれいな文章とは思えないかもしれません。それでもよろしければ。

 仕方なかったとは思うのだけど、死から逃れられないという事は悲しいというより悔しかった。


いままで、結構精一杯生きていたと思う。


いじめにあっても、受験に失敗しても、それをきっかけに家族に軽蔑されても。

死にたくなるようなことなら、それこそ、死ぬほどあってきた。


だけど、死ななかった。


生きていればいいことがある、なんて事は考えなかった。実際にそうだったから。

でも、負けたくはなかった。


負けず嫌いな自分は死ぬことそれ即ち負け、と考えていた。

今にしてはかなり幼稚な考えだが。


私の死因は癌だそうだ。


医者はあと半月の命だといっていたが、二年近く生きてしまった。

いや、生かされたというべきか。


腹の中に直接栄養を入れられ、排泄物もまた、腹の中から。

痛みを感じないように麻薬を飲まされ、気付けば今が何時かもわからないような脳みそになってしまった。

本当に、何のためにこんなことを。


答えは私の妻が答えてくれた。


「死ぬなんて、卑怯すぎるよ。これだけ私たちを悲しい気持ちにさせておきながら、何の責任も取らずに消えていくなんて・・・。」


必死に生きようとしている夫に対してそんな言い方はないんじゃないかな。

でも、理解できた。

多分、今の今まで生きてこれたのはまわりの人たちがそう望んでいてくれたから。

だから、死ぬことが負けだとか、どれだけ不幸だったとか、そんなことじゃないんだと思う。


どれだけ人に想われているか。

どれだけ人に望まれているか。


人間が生きる理由なんてそんなものだ。


ここで私は死ぬことがいけないだとかなんだとかというようなご高説を垂れるつもりはないのだけれど。

死ぬことがまわりの人間に与える影響、精神的なことはもちろん経済的なことなどまで様々だが、少なくはないはずだ。


だから、自分の命なのだからどうしようが勝手だということを考えている人がいたら、考え直したほうが良いと思う。


その命、おまえの思っている以上に縛られているんだぜ。


さて、生きている以上、誰の仕業かなんて知らないが、勝手に義務とか責任とかが付いてくる。


果たさなきゃねぇ。


私に付いてきてくれた、最愛なんて言葉は似合わない、私だけの妻。


愛情込めて育てたら、全く私に似なくなってしまった、聡明で冷静で意外と寂しがり屋な我が子。


お前たちに残しておきたい言葉がある・・・。



いまだけうごけ、わたしのからだ。

このひとことだけをつたえておくれ。


しゃざいと、こうかいと、かんしゃを。



「ありがとう」



願わくは、この言葉が出来るだけたくさんの人に聞こえるよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 神の声(第三者の声)の聞こえてくるものだと感じます。文章も良くなくないと思います。 少なくとも自分よりは文章が安定していると。 お粗末ながら、緋桜 閏でした。 時間に都合が…
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