メシヤを待ちわびて
外は大粒の雪が降っていた。風が吹けばカタカタと窓が揺れた。
打破しなければならない現状がある。腕を組んで、軽く眼を瞑って――。脚は炬燵に入れたまま、吾妻は思考を巡らしていた。
男四人、大学以来からの友である。たまの休みとの事で集まり、炬燵を囲いての徹夜麻雀と話が進んでいった。持ち寄りを頼んでいなかった。そして、誰一人としてメシの準備をしていなかったのが失敗の始まりとなった。
何とかなるさと楽観的なことを言い放ち、メシ屋に出前を頼めばいいと吾妻も頷いていた。缶ビールを片手に麻雀に興じている内に、時間は流れていった。
誰かの腹の音が鳴り、そろそろメシでも頼もうかと顔を上げて、壁に掛けた時計を見やるや零時を過ぎていた。途端に顔中の血の気が引いていくのが判った。出前を頼めるはずもない。--メシ屋はもう来ない。冷蔵庫はあるが、この日のためにと缶ビールしか入れていなかった。
「腹が減ったな」との呟きが聞こえてきた。しかし、誰一人とて炬燵から脚を出そうとしない。
「よし、判った。こうしよう」
膝を強く叩いて、吾妻は三人の注目を得た。
「次局で負けたヤツが点数分のカネを出して、勝ったヤツが最寄りのコンビニまでメシを買いに行く。一点一円。釣りは駄賃。これでどうだ」
最寄りのコンビニまで歩いて片道十五分。そこならば確実にメシがあると算段した。
異議は出なかった。専ら腹減りの解決をと三人とも納得したようだ。直ぐに牌を掻き回して、山を作る。
――負けたくはない。
ビールを買い揃えたために、財布の中身が薄くなっているのを思い出した。三人の酔いに頬を赤くした顔を見ると、惜しさが込み上がる。
びゅうびゅうと冬風が空を切り裂いている。窓の外へと視線を送れば、真っ黒の空に吹き荒ぶ雪で玉模様を成していた。咄嗟に身体を窄ませていた。
この中を三十分歩かなければならない。考えるだけで酔いが醒めて、身体もぶるぶると縮むように冷えてきた。
――とはいえ、勝ちたくもない。
舌を打って、吾妻はメシヤの登場を願った。