エピローグ
全ては悪夢の中の出来事のようで、私は志郎お兄ちゃんに抱きついて、驚くことしか出来なかった。
悪夢はまだ続いているのかと思ったけれど、お兄ちゃんに抱きついていると、安心することが出来た。
あの悪夢の病院からも、志郎お兄ちゃんと一緒だと帰ってこれたから。
私たちは、すぐさまに他の病院に運ばれた。
頭を検査されて。何も無いことが確認されたので、安心した。
……あのまま御子柴は焼け死んだらしい。病院院長が、謎の焼死現象に巻き込まれたと、夜のニュースの頃には大騒ぎだった。
お父さんとお母さんがやって来た。叱られるかと思ったけど、志郎お兄ちゃんの車に突っ込んだ車の方が悪いしね。お兄ちゃんも怒られなかった。
むち打ちにさえならなかったし、ピンピンしてる。
というか、本当は意識を失うほどのダメージじゃなかったんだと思ってる。
きっと、お兄ちゃんに取り憑いていた、こんがり童子が、私たちの意識を連れ去ったんだと思う。
結城雪子おばさんを、助けるために。
……おばさんは、もう半年前に亡くなっていたみたい。
志郎お兄ちゃんが、実家に電話して聞いたらしい。御子柴が何かしたのかもしれない。そう感じもしたけど。
亡くなられていたことを知らされると、怒りよりも悲しみが深かった。
おばさんが亡くなられたから、こんがり童子はお兄ちゃんを呼びに来たのかもしれないなと考える……。
口には出さなかった。
こんがり童子のことは、もう口に出さないでおきたい。御子柴のことも忘れよう。あの病院も、もう終わりだろう。
御子柴は、亡くなった。あの悪夢が実在のものだったとしても、そうでなかったとしても、もう続かないだろう。
こんがり童子に手を出せば、どうなるか。出資者たちも思い知ったんじゃないかって、お兄ちゃんは言っていた。
こんがり童子に、悪人たちは怯えることななるだけだろうって。
……そう。
全ては、終わったんだよね。
翌日も私は精密検査で、お兄ちゃんは事故現場で警察と色々と話していたみたい。
心理的な影響も鑑みられて、二日連続で病院に泊まった。人が焼死する瞬間を見ていたから……まあ、あれ以上のものをたくさん見たけどね。
ーーー温泉旅行どころじゃなくなったと落ち込んでいたけど……温泉宿の方が事情を知ってくれて、三日目にキャンセルが出ていたお宿に泊まれることになった。
お兄ちゃんも行くことになった。お宿が二部屋用意してくれたからだ。
……私たちは、雪子おばさんの墓にも行かなかった。お兄ちゃんも一生そこには近づかないと言った。
こんがり童子が、いるかもしれないからだ。
私たちでは、どうすることも出来ない、とんでもなく危険な存在。
そんなものには近寄らないことも、正しい選択だって気がしている。
気に入られたら、最後なんだ。
嫌われても、終わり。
抱きつかれたら、燃やされて死んじゃう…………私たちは、とにかく、もうあの妖怪と関わりたくなかった。
そうすることでしか、身を守れないことだってあるもの……。
ヒーローには、なかなか、なれない。
でも、それでもいいや。
……私は、私の高校生活最後の夏休みをがんばるんだ。
お兄さんと、来年以降も一緒にいるために……。
おしまい。
初めてのホラー小説です。怖さが足りないかもしれませんが、一生懸命に書きました。
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