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第五話    子守唄    その三


「カメラの映像が入ったパソコン?……を壊すのね?」


「そういうことだよ」


 オレの説明を聞いた瑞穂ちゃんは、その理解をしてくれた。


「この部屋に、つづいているっぽい」


 さっきの研究室の隣にある部屋だ。ここに、あのカメラからコードは伸びていた。


 だから?


 もちろん、ドアを開けるさ。迷っていてもしょうがない。御子柴のような人間に、オレや瑞穂ちゃんの録画映像は見せたくない。


 ドアをゆっくりと開いていく。棒状のドアノブは、抵抗なく開いた。ここにも、鍵はかかっていないようだ。


 防犯という意識は、希薄なようだな。


 ……その部屋は、警備室だったよ。モニタールーム。無数のカメラの映像が、ディスプレ

ーに表示されている。


 さっきの研究室の映像も、ここに蓄積されているはずだ。


 モニターの数はいくつもあるけど、パソコンは一台だけだった。


 管理する人物は少なそうだ。こちらとしてはありがたい。


 そのパソコンの前にあるイスに座り、電源を入れる。


 一般的なOSソフトを使っているのか、と安心する。それに、パスワードも、この病院の『誕生日』を入れれば良かったよ。


 とにかく、これで監視カメラが撮った映像にアクセスすることが出来るわけだ……カメラ映像、分かりやすいタイトルのアイコンがある。


 そいつを開くと、この部屋のディスプレーに表示された、無数の映像たちと完全にリンクしている映像が映っているウィンドウの群れが発生する。


「それなの?」


「ここっぽいね」


 ニヤリと笑いながら、映像の削除を選択する。一週間前からの監視カメラの映像を記録することが可能らしい。


 それより前は自動消去される仕組みだ。


 それに、カメラの撮影のオン・オフもここから切り替えられる。


 当然、全てのカメラの撮影を停止させる。


 そのあとで、この一週間分の映像を消去していく。簡単な操作だよ。ありがたいことにね。


 モニタールームにある画面から映像たちが消え去った。


 これだけでは、安心はしない。オレはパソコンを壊しておくことにする。


 パソコンの本体からたくさんのコードを引き抜いていく。乱暴な手つきでね。壊れるなら、壊れてもいい。


 全てのコードを外し終えると、オレはその大型なパソコン本体を抱き抱える。


 重たいが。大人の男だから、へっちゃらだ。


「どこに運ぶの?」


「一階まで運ぶんだよ」


 パソコンを抱えたまま、五階の階段前に移動する。そのまま、さらに上を目指す。屋上だよ。


 屋上の鍵は当然のように開いていた。


 外は、雨がまだ降っている。飛び降り防止のフェンスとか、この病院には存在しないようだ。


 酷い環境だが、今は利用できる……オレはパソコンの本体を、屋上から落下させた。


 パソコンが地面に衝突し、砕け散る。大きな音がした。ざまあみろ、と爽快な気持ちになった。


「これで、御子柴にバレない?」


「バレないよ」


 ……その可能性は100%じゃない。でも、かなり低いはずだ。


 オレたちは、再び五階へと戻る。監視カメラを気にしなくてよくなった以上、あとは五階を片っ端から調べればいいのさ。


 オレと瑞穂ちゃんは次々に、ドアを開いていくーーー。


「志郎お兄ちゃん!!」


「見つけた?」


「たぶん、ここっぽい。床に、絨毯とかが敷いてあるんだもの……」


 瑞穂ちゃんが開けたドアから、その中を除く……たしかに、そこは豪華な設備が存在している。


 赤い絨毯に、壁に埋め込まれた大きな水槽がある。いかにも、院長室というような金の使い方を感じたよ。


「ここに、鏡が?」


「あるはずだよ、探してみよう」


「うん!」


 この部屋は明るい。狂気の中心とでも言える場所なのにな……そう安心していたオレは、愚かだったんだよ。


 御子柴の狂気には、すぐに出会えた。それは、彼の机の上にあるパソコン……そこに、あった。


 いや。


 ……いた、と言った方が正確だろう。

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