表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/66

第四話    精神実験体158号    その十九


 ……無力感に苛まれながらも、オレは行動を開始する。


 四人姉妹を排除した今、この場所は瞬間的には安全だ。他の場所から怪物たちがやって来るまでは……。


 目的を果たそう。


 このナース・ステーションにやって来た理由は一つだけだ。


 叔母さんの部屋の鍵を見つけるためさ。


 オレと瑞穂ちゃんはナース・ステーションを探るんだよ。


 ……壁に、かけてあったりしないかな?……そんなことを思い付き、行動に反映する。


 脈打つ血管が、ツタみたいに這い回る壁を端から順に見ていくと……キーボックスがあった。


 キーボックスの鍵がかかっていれば不味いなと考えた。


 だが、そのフタを手前に引くと、ねちゃりとした粘液がフタとボックスの間に伸びていく感触を手に覚えながらも、キーボックスは開いたよ。


「……管理が甘いな。この世界には、侵入者がいないと考えていたのかね、御子柴は」


「……でも、ラッキーじゃない。ここ、消火器もあったよ!」


 瑞穂ちゃんは優秀な猟犬みたいに、素敵な落とし物を回収してくれるよね。


 いい子だから、頭を撫でてあげたいけれど……指には、粘液とかが付着してるかもしれないので、やめておいた。


 さてと。キーボックスの中身を探る……そこにあるのは、無数の鍵……。


 407号室の鍵を探していき、その鍵を発見していたよ。


「これだ!」


「やったね。これで、志郎お兄ちゃんの叔母さんを助けられるよ」


「ああ……間に合ったとは、言えないけどさ……罪滅ぼしには、なるかな」


「うん。なるよ!」


 瑞穂ちゃんの笑顔と言葉がありがたいよ。オレは彼女に笑顔を伝染させられながら、407号室の鍵を手に取った。


 急いで、407号室へと戻ったよ。


「叔母さん、鍵を見つけた。これで、ここを開けられる」


『そう。それは、ありがとうね、志郎ちゃん……』


 言葉とは裏腹に、叔母さんは喜んではいないのが分かった。


 ……醜い怪物に変えられた姿を、見られたくないのだと感じた。


「オレは、ここの鍵を開けて、上の階に向かうよ。院長室にある、大きな鏡。それを、瑞穂ちゃんと一緒に割る」


『……そうしなさい。そして、御子柴には二度と関わらないように……』


「……うん。瑞穂ちゃんを、巻き込めない」


『ええ。守ってあげなさい、彼女のことをね……』


「ああ、そうするよ。じゃあ、叔母さん、ここを開けるね。オレと瑞穂ちゃんは、目を閉じておくから……オレの顔を、見てくれ。大したこと出来ない、情けない大人だけど、オレ……大人になれたんだ」


『…………ええ。私を、見ないでね?』


「ああ、わかったよ。瑞穂ちゃんも、それでいいね?」


「うん」


「じゃあ、開けるからね、叔母さん」


『……ええ』


 オレは407号室の鍵を、その冷たく無慈悲な閉鎖扉に差し込んだ。


 目を閉じながら、ゆっくりと鍵を回したよ。


 冷えた金属が硬質な音を歌い、結城雪子の病室は解放されたんだーーー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ