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第四話    精神実験体158号    その二


 薬のおかげと、おそらく瑞穂ちゃんが側にいてくれることでの安心感もあってだろう。


 病院が暗くなっていく速度が遅くなっている。


 その結果、玄関ホールまで怪物どもに遭遇することなく移動することが出来ていたよ。


 ……その道中で二人して、色々と話した。


 ここが、怨霊こんがり童子が作り出した世界だとしても、あの女医は何なのだとか?


 あの女医の語った院長とはどこの誰なのか?


 どうして、この病院で彼女たちは『本物のこんがり童子』を作ろうとしているのか。


 そもそも、何でオレや瑞穂ちゃんがこの世界に連れ込まれなければならなかったのか……。


 謎は多く、どれにも答えは見つけられなかった。


 まあ、それでもいいさ。


「玄関ホールだね!」


「ああ。ここから外に出れば、元の世界に戻れるかもしれない」


「少なくとも、この病院はイヤ。怪物だらけだし……なんか、私に種付けとか言ってたし……」


 瑞穂ちゃんが死体になれば、歪んだナースみたいに、新生児室にウジャウジャいた『失敗作』の母親にされるらしい。


 そんなことはさせないよ。


「この世界から脱出できなかったとしても、この病院からは脱出したいところだ」


「うん。ここ以外なら、どこでもいいレベルだよー」


 作戦は決まった。とにかく、この悪夢病院を脱出してやるんだ。


 外は、雨だ。


 かなり強い雨。


「やったね。雨だよ、雨!」


「……陸上部員は雨が好きなの?」


 練習が休みになるからかな?


「雨は嫌い。でも、ここの怪物ども、消火器に弱いんだもの。きっと、雨にも弱いんじゃない?」


 オレも考えた発想だが、自分以外が語っているのを聞くと、ずいぶんと雑な考えだと思ったよ。


「消火剤の化学物質に弱いだけかもよ?」


「う。そっか。そうかも……?」


「それに……雨の日には、こんがり童子が体を冷ますために出てくるってハナシ伝わっているんだ」


 雨の日に子供を産むな……とかもね……。


「じゃあ、外にはこんがり童子がたくさんいるの!?」


「分からない。いてもおかしくないかも。オレたちの説では、こんがり童子がここにオレたちを呼んだわけだし」


「消火器、効くかな?」


「効くかもね……でも」


「でも?」


「……外にウジャウジャ、こんがり童子がいるなら……あの女医とか、ここの院長とかが、わざわざ本物を作ろうとするかな?……とも思うんだ」


「……そだね。あのチェーンソー女なら、こんがり童子の一匹や二匹、捕まえて来そう」


 妖怪を捕まえるか。まあ、あの人物も常世の者とは思えないしな……。


「ともかく、脱出しよう。何か……道具として使えそうなものは……?」


「タクシーが目の前に止まってるよ」


 瑞穂ちゃんが指差して場所には、タクシーが一台ほど止まっている。


 大きな病院の入り口らしいな……でも、運転手は?…………乗ってるな。


 ある意味、見知った顔ではある。歪んだナースが、運転席に乗っている……。


「ねえねえ。志郎お兄ちゃん!……アイツを倒して、タクシーもらっちゃおうよ!」

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