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第四話    精神実験体158号


「なんだか、科学的じゃないのか、科学的なのか、分からない話ね」


「この状況は、以上を極めているからさ。上手く説明なんて出来ないよ」


「……そだね。たしかに、上手く説明することとか、無理そう。変なコト起きすぎだもん」


「でも。瑞穂ちゃんの言った通り、オレはこんがり童子に呼ばれたような気がしてる」


「私の説、認めるんだ?」


「……うん。こんがり童子ってのはさ、鏡の世界にいるんだって」


「鏡の世界?」


「狂人の叔母さんが言うにはだけど。それに……小守に伝わる昔話では、そう言われてる。普段は、違う世界に住んでるのさ」


「……違う、世界」


 オレたちには、あまりにもピンと来すぎる言葉だった。


「ここは、こんがり童子がいる、鏡の世界?」


「そんなところだと考えておくと、スッキリするんだ」


「……そうかも。何と言うか、理由が欲しいんだろうね。何でもいいから、納得したいよ」


「わかるよ。ここを受け入れるには、何か説明が必要だよね」


「うん。私、志郎お兄ちゃんの説を信じることにする!……私の説も、入ってるし」


「ああ。オレたち、妖怪にこの変な世界に、呼ばれたらしい……うつ病じゃなく、オレは悪霊に取り憑かれていたみたいだ」


 おかしなテンションだったよ。


 心も体も疲れているからか、何も解決していない状況なのに、二人してクスクスと笑っていた。どちらかともなくね。


「……とにかく。脱出を試みよう」


「……玄関から、外に出るんだね?」


「ああ。この病院から出られると、いつもの世界に戻れるような気がする……」


「そだね。きっと、そーだよ」


 根拠に乏しい言葉だが、その希望にすがりたい。


 こんな世界に閉じ込められっぱなしは嫌すぎるからね。


「……とにかく。ここの玄関から脱出してみよう」


「うん!行こう、志郎お兄ちゃん!」


 瑞穂ちゃんに手を引かれて、立ち上がる。


 ……オレの背中の支えが消えても、防火扉は開くことはなかった。


「やはり、この世界にはルールがある。怪物たちは、オレや瑞穂ちゃんが閉めた扉は、開けられないみたいだ」


「……たしかに、そんな感じね」


「でも。あのチェーンソー女医や、歪んだナースたちは開けた」


「歪んだナースって名前つけてるんだ?」


「ダメかな?」


「いいよ。合ってる。歪んでるもんね、イロイロと」


「……とにかく、役に立つかは分からないけど、オレたちが閉じた扉は、奴らを止める手段にはなるかもしれない」


「うん。覚えておくね……出来れば、使わずに住めば御の字だけど……」


 無言でそれに応えたよ。


 お互いの中にある不安を、口にしたくない。希望にすがりたい。


 このまま、この病院を脱出したら……全てが終わる。そう信じて、オレたちは移動を開始した。


 もちろん。


 近場で見つけた消火器を確保してだけどね。



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