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第三話    産まれてしまったからには。    その十六


「……ぐぅうッッ!!?」


 熱は、瞬く間に炎へと変貌する!!


 オレの左手首が燃えていく!!熱い、そりゃそうだ……燃えてるんだからなッ!!


「志郎お兄ちゃん!!」


 瑞穂ちゃんが、その事態に気がついてくれたよ。オレの燃え始めた手首と、オレを掴んでいる黒い手に消火剤を吹き付けてくれる。


 おかげで、小さな怪物とオレの左手首を燃やす炎は消え去っていたよ。


 そのまま消火剤は切れるが、どうにか防火扉を閉めきることに成功した。


 ドン、ドン!ドン!ドンドン!!


 成功したけど、ヤツらは元気だなぁ……体当たりか。赤ん坊と変わらないサイズしかないから、そこまで力はない。


 この扉を開くまでは、やれないさ……一応、背中で防火扉を押さえてはいるけどね。


 でも、これも過ぎた用心かもしれない。ここの怪物たちは、何故かは分からないけど、ドアを開けないみたいだしな……っ!


「ぐ、ぅう……っ」


 凡人の限界か。数秒間、焼かれただけだってのに……皮膚が焼けただれて剥がれ落ちそうだ。


「ああ、そ、そんな、志郎お兄ちゃん……ご、ごめんなさい……わ、私、ちゃんとあの黒い赤ちゃんたちを、お、追い払えなくて……っ」


「大丈夫さ」


「酷い火傷だよ!?」


「……ああ。でも、良い薬がある。いい実験の口実でもあるよ」


「ど、どういうこと?」


「まあ、見てて。これ、名医にもらった魔法の薬……精神を安定させて、リラックスさせてくれる薬なんだ」


 オレは右手でその錠剤を瑞穂ちゃんに見せる。


「この病院が、オレの悪夢である証拠の一つを見せられると思う。よく、見てて」


「う、うん……?」


 困惑する女子高生の顔に出会う。そりゃそうだろう。何のことか、分からないさ。


 でも、論より証拠。そっちの方が、瑞穂ちゃんのような子には分かりやすいと思うしね。


 錠剤を口に入れ、奥歯で噛み潰してのみこんだ。


 すると、オレの焼けただれていたはずの左手首の大火傷が、瞬く間に治癒していく。


「す、すごい……っ。なにそれ、魔法の薬……?」


「きっと、ここが現実じゃないからさ。オレの悪夢だから、オレの精神が安定すると、傷も言えるし……ほら、何故か明かりも強くなる」


「……ほんとだ!」


「それに……今までは、怪物どもも消えてくれたんだよ」


「え!?」


 ドンドンと防火扉にぶつかるこんがり童子の失敗作どもの勢いが弱まる。


 ……でも、消えない。


 弱くはなっているが、バンバンと、諦め悪く手で防火扉を叩き続けていた。


「コイツらにも有効みたいだけど、他の怪物と違って、消えちゃくれないみたいだね」


「……よくは分からないけど、その薬があれば、ケガも治るし、怪物も消えるし……」


「この病院も、マトモな光景に近くなるっぽい」


「不思議ね。でも、そんな薬があるなら、たくさん使えば……」


「あと二つしかない」


「そ、そっか……」


「貴重なものだから、慎重に使いたい。おそらく、これは瑞穂ちゃんにも有効だと思うんだよ」


「私にも?」


「うん。何となくだけど……そう思う。瑞穂ちゃんは、オレの幻覚じゃなくて……何かに、ここに連れて来られた、本物なんだと思う……たぶん。体は本物じゃなく、魂とか精神だけの世界なんじゃないかな、ここは」

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