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第二話    悪夢は雨の日に産まれた。    その一



 …………目を覚ます。眠ってしまっていたらしい。


 頭が痛いな。風邪を引いたのか?……いや、うつ病なだけか。謎の痛みが、体を襲うしね。


 そして、幻覚を見るようになる。


 ……いいさ、今は魔法の薬と、グアテマラの神秘の豆があるんだ……。


 体を起こす。


 暗い……?


 電気が消えているのか。看護師さんが寝ているオレに気を使って消してくれたとか?……だったら、毛布ぐらいかけてくれてもいいのにな。


 しかし、こんなに暗いって、今は何時なんだ?


 スマホを見る。


 スマホの画面には、15:26と表示されている。


「昼間じゃないか」


 なのに、どうしてこんなに、暗いんだ?


 疑問に思って、窓に近づいていく。カーテンがしまっている。クリーム色のカーテンを手で避けて、外を見る……。


 暗い、雨が降っている。大雨ではないけど……台風みたいに分厚い雲が、上空を覆っているみたいだ。


 スマホを見る。天気予報はまさかの晴天表示だ。我が故郷は、どうなっているのか……。


「どこもかしこも、狂ってる……」


 サイテーの故郷の悪口をつぶやきながら、オレは窓から離れた。


 背後に振り返った直後に、オレは廊下から看護師さんがやって来たことに気がついた。


「……あ。すみませんでした、寝てしまって……っ!?」


 他のことにも、気がついた。


 薄暗い廊下からやって来た看護師は、うなだれている。体が、やたらと猫背になっている。醜く前傾した彼女の頭は、胸の前にまで落ち込んでいた。


 異様な姿勢だ。


 それに、それに……彼女の腹は、とても大きく膨らんでしまっている…………さっきの、妊婦みたいに。


 白衣がキツそうだと思うぐらいには、腹は大きい。妊娠している看護師が産婦人科で働いていることもあるだろうけど……。


 ……これは、そんな状況じゃない気がする。オレは、怖くなり、一歩だけ後ずさりする。


 すると、彼女は二歩進んだ。いや、そうじゃない、三歩も四歩も五歩も、ペタペタとイヤな音を立てながら、オレに近づいてくる。


 オレは気づく。


 彼女は裸足だった。それに、彼女の足は焼かれたように赤くただれて、皮膚が大きくズルリと剥けていた……っ。


 ありえない。


 こんなことは、ありえない。これは幻覚の一種だ。そうに違いない。除霊珈琲が切れたのか、さっきの嘔吐で魔法の薬が切れたのか、オレは、より酷い幻覚を見るようになったらしい!


「くけひこきききあかあ!!」


 聞いたことのない音を発しながら、歪んだナースが飛びかかってくる!!


 恐怖から、オレは横に飛び退いていた。歪んだナースは、オレが避けたせいで、腹から床にダイブしてしまった。


 赤ちゃんが!!


 そう心配するが、歪んだナースは元気そうに膨らんだ腹を床にこすりつけながら、オレに近づいてくる。


 意味不明の音を黄色く汚れた歯の間から放ちながら……オレは、後ずさりする。壁に当たる。逃げ場が、無いかもしれない。いや。でも、大丈夫だ。


 落ち着け、こんなの幻覚なんだ。だから、大丈夫。どうってことない……っ!?


「くけけけこここききいい!!!」


 謎の音を叫びながら、歪んだナースが飛んだ。まるで、蛙みたいに跳ねたんだ。


 恐怖感から、オレは右に逃げた。でも、歪んだナースの手が、オレの左手首を掴んでいた。


 感じたのは。


 熱。


 熱したフライパンでも押し付けられたような熱さを、左手首に感じる。慌てて、振り払うが……。


 オレの手首は、そのときすでに燃え始めていた。

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