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眼鏡地味っ子と周りをよく見る妹

 女子の顔にモザイクのような靄がかかるようになって早二年と半年。この症状によって現時点で三つ程面倒事がある。


 まず一つめに相手の顔色を伺えない。基本的に人は話をする際は相手の顔や目を見て話をし、相手がどのような状態かを推し測るのだが、男子相手なら顔は見えるので問題無いのだが、女子相手ではそれが出来無い。会話の最中に目を合わせようと努力していると、相手からは呆けているように見えるらしいのか話が進まないことがしばしばあった。中学当時はこれで結構苦労した。今では自然と出来るようになっている。だが俺は女子の前では不機嫌そうな顔をするので仲の良い女子以外とはあまり話はしないが。


 二つめに女子に話しかけられる時、誰が誰だか分からないこと。仲の良い女子ならば声と髪型だけで判別出来るようにはなったのだが、いかんせん知らない女子は覚えられない。というより皆同じような髪型をしてたりするので判別出来ない。中学当時は同じクラスの女子から、


『山下君。これ先生から』

『あ、ありがとう。えっと、加宮さん?』

『篠崎だよ!?前も間違えたじゃん!』


 という感じで名前をよく間違えたりして怒られたものだ。前まではそんな事一切無かったのにいきなりこうなってしまったものだから不審に思った女子達が当時、俺と仲の良くなっていた颯太に聞いたところ、


『あいつ、いろいろあって馬鹿になったから』


 と言って納得させていた。お得意の爽やかスマイルで。

 おかげで女子達も颯太君が言うならそうなのだろう、と納得してくれた。

 だが颯太よ。俺は知っているぞ。そう言った時のお前の顔はこう言ったほうが面白そうだ、という顔をしていたな。俺は忘れないからな。ていうか"馬鹿になったから"ってなんだよ…。

 おかげでそれ以降、女子に話しかけられた時に可哀想なモノを見るような視線を感じるようになった。


 そして三つめー

 現在昼休み。今俺はその三つめに直面中である。


「こちら、隣のクラスのめぐちゃん!」

「き、木ノ下 恵です。宜しくね?」


 幼馴染みの綾が友達を連れてくる事である。これが非常に面倒。

 顔の広い彼女は同じクラスは当然として、他のクラスにも友達は沢山いる。その友達を今みたいに突然紹介してくるのだ。その度に、脳内の"これから先関わるかもしれないお友達リスト"に追加しなくてはならないのだ。

 おめでとう木ノ下さん。今日から君はお友達リストの確か15番目?に刻み込まれた。正直、リストに載っている友達で紹介以降関わりが少ない人は男女問わずうろ覚えだ。因みに一号、二号は竜汰と美歩である。


 木ノ下さんの髪は深藍色をしており、肩甲骨辺りまで伸びてあるだろう髪を二ヶ所に束ね、両肩の前に出している。

 落ち着いた雰囲気を纏っており、隣の颯太曰く眼鏡を掛けた地味っ子らしい。あと左目の下に泣きぼくろがあるそうだ。


「山下 征司。宜しく」

「新福 颯太だよ。宜しくな」

「藤崎 竜汰だ…です」

「何緊張してんのよ…。西川 美歩よ。宜しくね」


 各々の自己紹介を終え、木ノ下さんは俺達を見渡す。そして何かに気付いたのか――


「もしかして噂の女お――」

「「「「それ以上言うな!」」」」


 ついつい俺達は大声で彼女の言葉を遮ってしまう。


「っていうか女王ってなんなのよ!そんな態度とった事ないのに!」

「…俺と征司なんか竜汰のせいで付き人扱いだぞ」

「…まったくだ」

「まぁまぁ。でも美歩が俺らを監視してる姿って確かに女王様に見えるよな~」

「「「黙れ、下僕」」」

「皆ひっでぇな!?」

「ふふ、なんか漫才みたいだね」

「その言葉を使おうとするといっつもこんな感じだよ~」


 と、そんな下らない会話を見ていた木ノ下さんは笑っていた。


「ところで何で今紹介してきたの?」

「それそれ。何かあったの?綾ちゃん」


 と美歩と竜汰が綾に問い掛ける。これは聞いても意味が無いことを俺と颯太は分かっている。何故なら…


「ん~何となく?」

「「…そ、そう」」


 ご覧の通りこれといった理由など無いのだ。竜汰と美歩を紹介してきた時も今みたいな感じだった。


「まぁ、めぐちゃんは何かの用事で学校をちょくちょく休んだりしてるから、学校に居るうちに皆に紹介しておこっかな~って思って!」

「用事って何をしてるの?」

「えっと、それは秘密です…」

「私にも教えてくれないんだよ~」


 それにしても学校を休む程の用事とは何だろうか?

 この学校で虐めとかは聞いたことないし、きっとその類いではないのだろう。まぁこれ以上勘繰るのは止そう。


 このように顔が広い綾は友達が多い。故にコミュニケーション能力の塊である。

 某少年漫画で例えるなら俺の見知らぬ女子に対するコミュ力がたったの5であるなら、綾のコミュ力は53万である。


 コミュ力…たったの5か…ゴミめ…


 等と脳内であの有名な台詞を思い浮かべながら、俺は机に突っ伏し片耳にイヤホンを着け最近よく聞く音楽を流す。

 昨日は日課のソシャゲのし過ぎで夜更かしをしてしまった。なので今寝ておかないと午後の授業で先生から教科書脳天直撃の刑を食らう羽目になる。

 丁度女子達もガールズトークに花を咲かせているので今のうちに眠っておこう。

 そう思い瞼を閉じているともう片方のイヤホンを自分の片耳に着けたのか、颯太が俺に聞いてくる。


「この曲なんてやつなんだ?俺聞いたこと無いけど」

「最近デビューした"柊花"ってシンガーソングライターの『君は気付かない』って曲。中一の時にたまたま路上ライブしてたのを見て以降好きになってな。現役女子高校生で顔出しはしてないっぽい」

「もしかしてあの下手くそなギターを弾くようになったのって…」

「下手くそいうな。お前に協力する為にあんときは必死こいて上手くなっただろうが。あれはあの路上ライブで衝撃受けた影響」

「あの時は助かったよ。でももう弾けないだろ?」

「まぁ、そうだな…」

「何々?何の話してんの?」


 俺と颯太が過去の話で盛り上がっていると空気気味だった竜汰が話に入ってくる。


「中学の頃の文化祭の話。あの時俺と征司と後三人でバンドを組んだんだよ。」

「まじか!かっけえじゃん!」

「毎夜練習しすぎで毎日が寝不足だったな…」

「お前のギターって素人が噛った程度だったじゃんか。俺らがどれだけ苦労したか…」

「助かりました。感謝しております」

「じゃぁ今年は俺らでやってみようぜ!」

「「音楽嘗めるなよ馬鹿」」

「ひっでぇなおい!?」


 たかが噛った程度の素人が一曲引けるまでどれだけ苦労したか。そのおかげで周りがどれだけ大変だったか。俺と颯太は経験しているからこそ断言出来る。


「まぁそれはおいといて、この曲良さげだから帰ったら聴いてみようかな」「是非そうしなさい」

「俺頑張るからー!だから助けてくれよー!」

「あ~はいはい、そうですねー」

「なんか俺への対応酷くね?」


 そろそろ寝たい。そう思い意識を落としていく。残り10分だけど寝ないよりはマシだろう。


「ん?どうしたの?綾と恵。二人して固まっちゃって」

「あはは~何でもないよ?」

「わ、私も、えっと何でもないよ?」

「何か怪しいわね…」


 女子達が何か気になる話をしていたが、俺の意識はもう夢の中まっしぐらである。






 放課後、昼寝をしたのにも関わらず教科書脳天直撃の刑を受けた俺は教室で数学の勉強をしていた。数学の先生から寝ていた罰として明日出す問題を解けと先行指名されたからだ。家で勉強などしたくないため俺は今頑張って解いている。

 何だよsin,cos,tanって。訳わかんねぇよ。俺の嫌いな範囲選択しやがって。あれ?これって一年の時に習ってたやつだっけ?


(シンコスタン…あれ?なんか語呂がシスコンに似てるな)


 と軽く現実逃避をしながらそんな事を思っていたせいなのか、突然教室の扉が開いた。


「お姉ちゃ~ん。あれ?居ないな」


 扉を開けた人物へ目を向ける。制服の赤リボンを見るに一年生が入ってきたのだが聞き覚えのある声だった。


「あれ?有美か?。入学式以来だな」

「あ、征司さん。どうもです」


 彼女は中村 有美。綾の一つ下の妹だ。因みにお姉ちゃん大好きっ子。昔から俺、綾、有美の三人でよく遊んだりしていた。姉と同じ髪色をしており、髪を姉同様肩まで伸ばし、左だけ束ねている。所謂サイドテールというやつだ。姉の綾と有美はよく似ていた。中学二年の後半からは顔は見えないので今もそっくりなのかは分からないが姉同様可愛くなっている…筈だ。

 性格は姉が明朗快活に対して妹は沈着冷静。周りに流されず常に落ち着いて物事を見る彼女はなかなか勘が鋭い。中学時代、姉が体調不良なのにも関わらず周りに元気な素振りを見せていた時も、妹の目だけは誤魔化せなかった。さらには保健室に連れ込み、休み時間はつきっきりで看病したりと、出来た妹だ。


「征司さん。お姉ちゃんが何処に行ったのか知りませんか?ここで待ち合わせしてたんですけど…」

「あ~悪い。何処に行ったのかさっぱり分からないな。まぁ何時もの事だろ」

「そう言われると何とも言えないです」


 姉をよく理解している分、彼女も苦労をしていそうだ。


「そういえば征司さんに聞きたい事があったんです」

「ん?何だ?勉強の事か?」

「いえ、勉強の方じゃなくてですね…なんと言えばいいのか…」


 ふむ、有美が躊躇う素振りをみせるとは、そんなに聞きづらいことなのだろうか?

 そんな事を思っていた俺は、彼女の次の一言で息を呑む。




「最近、いえ…正確には中学三年生手前ですかね?お姉ちゃんは気付いてないみたいですけど、何かありました?」

「ーっ!」



 ――そういえば、俺に対しても勘が鋭いんだったな。こいつは。

最後まで読んでいただきありがとうございます。白熊です。

昨日もう1話書きます宣言しておきながら寝落ちしてました。

そして電源を着けたらあら不思議。書いてた文が消えておりました。

夕方、起きたあとに知り合いと飲みが入ったのでそのまま投稿できず仕舞いでした。楽しみにされてた方、申し訳ないです。(居るかはわかりませんが…)


さて、今回でだいたいの登場人物の紹介のようなものは終わりました。


次回から読者が面白く感じるようより一層頑張っていきますので宜しくです!

因みに途中出てきた歌手と曲の名前は適当に着けました。意味などありません!


では次回をお楽しみに~!

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