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軍服の着心地は良いようだ

「気がついた?」


 鈍い痛みで目を覚ますと、そこには女の子が居た。

 緩いパーマがかかった黒髪は肩ほどで揃えられ、清楚な印象を受ける。全く着崩していない制服もその印象を強めていた。


「ええと……俺は……」


 ゆっくりと思い出す。校門をくぐって……そう、体育館に着くと……


「そうだっ!俺の股間っ!」

「ちょ、何してるの!?やめて!」


 ズボンを脱いで玉の有無を確認しようとする俺を目の前の少女が止めた。そうだった、俺だけじゃないんだった。

 仕方なく股間を軽く触ってみると、ある。棒も玉もある。ひと安心すると同時に俺の頭に疑問ができた。


「おかしい……銃で撃たれたのにち○こもキ○タマもあるとは……どうなっている……?」

「……あの、実物出さなければいいってものじゃないと思うんだけど……」


 少女は顔を赤くした。もう少しセクハラしたい気もするが、とりあえず状況を説明するに留めておいた。

 説明終了。少女は顔をより赤らめた。


「って……そうだ、入学式は?」

「え、ああ。もう終わったよ。私は君と同じクラスの委員長」


 そういえば俺は目の前の少女のことをまったく知らなかった。

 人に名前を聞くならまず自分からということで、今更ながら自己紹介をしておく。


浅田あさだ れんだ。まあ、よろしく」

「あ、ご丁寧に……上田うえだ じゅんです。よろしくね」


 なんだろう、なんとなくこの子にはこの先ずっと迷惑をかける気がした。

 そういえば彼女がここに来た理由を聞くのを忘れていた。


「ええと……純子か。純、そういえば何しに来たんだ?」

「あ、ひどーい。重いのにここまで持ってきてあげたんだよ。よっ……と」


 純がベッドに置いたのは、大きな袋だった。中からは厚い布のようなものが見える。


「なんだこれ?」

「ここの体操服らしいよ。一人に五枚ずつ支給されるの。これは私の分も入れてるから十枚入ってるけど」


 純は袋の中からもう一つ袋を取り出した。どうやらそれが純子のものらしい。


 この高校、有名な高校で私立だというのに、なんと入学金や学費など緒経費がゼロである。では何で金を賄っているかというと、卒業後に就職した会社から礼金が貰えるらしい。ここを卒業した学生はそれほどにほしいものなのだ。つまりこの体操服も無料である。

 基本的に卒業後の進路が大企業ばかりなのは、その礼金が出せないからかもしれない。


 俺は体を起こし、袋の中身を一枚取り出した。

 広げてみると、そこに入っていたのは。


 軍服だった。


「……ちょ、は?」

「んー……ぶっとんでる学校とは聞いてたけど……」


 コスプレのようなものではない。硬くて厚い生地で作られた、かなり本格的な軍服だ。しかし、デザインは今まで見たどれとも違う。どうやらオリジナルのようだ。


「って、蓮くんこういうの詳しいの?」

「ああ、ゲームで……」

「ああ、なんか好きそう」


 純の話によると、俺たちは今からこれを着てグラウンドへ向かわなければならないらしい。

 激しく嫌な予感がする。


「あれ、そういえば更衣室ってどこだ?」

「え?……そういえば聞いてないや」

「俺はここで着替えればいいが、純はどこで着替えるんだ?」

「…………」


 しばし考える純。

 頭を抱える純。

 悶える純。


「…………ここで着替える。あっち向いてて」

「はいはい」


 まあこうなるとは思っていた。俺もさっさと着替えることにする。

 背後から聞こえる衣擦れの音からできるだけ気を反らす。自然、持っているこの服に興味は向いた。

 袖を通すと、さっきまで着ていた制服との差が激しく感じる。重い、が突っ張ったりはせず、安心感を感じる服だ。軍服とはよくできているものだ。


 「もういいよ」という声を聞き、俺は後ろを向いた。さっきまでは中学生のようだった純だが、軍服を着て髪を結び、なんだか戦う女という感じだ。


「似合うじゃないか」

「蓮くんも、なんか強そう」


 二人で笑う。そして俺と純はグラウンドへと向かった。

 時計を確認すると、気絶してからおよそ三時間が経過していた。

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