有名なマンモス校
『次はー、千条高校、千条高校ー』
バスの運転手の無機質な声が聞こえた。その声と共に俺は憂鬱になる。
今日から学校かあ。
しかもとびきり凶悪な。
受験を勝ち抜いたご褒美、楽しかった春休みを思い返す。今年の春休みはゲーム浸けだった。受験で失敗しないため冬休み以降ゲーム絶ちをしていたのだ。
しかし、むしろ失敗した方がよかったかもしれない。
そう思わせるほどの個性が、本校、千条高校にはあった。
バスが停まった。諦めて運転手に金を渡し、バスを降りた。
ーーー
私立千条高校。
高い偏差値に見合い、卒業後の就職率は驚異の95%。それもほとんどが大企業だ。
ではその高校には何があるのか?
その問いの答えは簡単だ。
鬼のように厳しい指導がある。
つまるところ、その教育に耐え抜き、そして勝ち抜いた生徒は社会でも使えるということだ。
しかし、教育についてはほとんどが謎。
わかっているのはたった三つだけだ。
苛烈な教育。
厳しい競争。
そして、独自のカリキュラムを導入していること。
それゆえ色々と噂も出る。体罰が横行しているとか、治外法圏だとか。
しかし、これだけは言える。
この高校は、全寮制だ。
もう、戻れない。
俺は豪華なアーチと高い高い壁が付いた校門をくぐった。
中を見て思ったことは、まず広い。
以外と校舎とかは綺麗で、近所の市立高校よりよほど清潔そうだ。
ちなみに、広いのも当然。土地が余っているという利点を生かしてか、この学校100ヘクタールある。東京ドーム100個分である。
校舎の向こうにも何かがありそうだが、さしあたって向かうべきは体育館だ。入学式を受けなければ。
ちょうど向こうにそれらしき建物があった。おれはその建物の扉をがらりと開ける。
と。
ズギューン!
「この建物に入るなぁ!」
美人な先生が、発砲してきた。
適当に撃ったのだろう、その弾は。
俺の玉に命中した。
「…………っ!」
俺は声にならない声を上げ、そのまま倒れた。