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プロローグ
ふわふわふわと、漂い行く。
目的もなく、行き過ぎる。
最初こそ、ちゃんとした記憶があったのに。
薄れゆくのか、思い出せなくなってくる。
私はだあれ?
もうだれでもないよ。
あとはただ、真っ白に、まっさらに、きれいに消えていくだけよ。
名残惜しいけど、仕方ない。
なんで名残惜しいのかもわからない。
自分という記憶が曖昧に。
ふわふわふわと、流れゆく。
もう思い出せないあの日々を。
砂のように零れ落ち。
微笑み合う、あのふたりの姿さえもが消えていく─
ハッとして。
その記憶をつかみ取る。
真っ白だった空間に。
黒いシミが生まれていく。
──許せない──
──許しちゃいけない──
声がする。
誰の声だろう・・・
・・・そうだ。
これは、"私"の声だ。
薄れていた記憶の断片が、繋ぎ合わされていく。
──このまま終わってたまるものか──
私は・・・
あいつらに・・・
復讐しないと──
世界が、明滅する。
──気が収まらないいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!
世界が、暗転した。