表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/238

99 浩二さんの追及は・・・

「何のことだよ。話しながらサンドイッチを作っていただけだけど」


ポーカーフェイスで浅井さんはそう言ったけど、微かに顔色が青ざめている気がする。


「麻美に涙の痕はないから泣かされてはいないようだけど、イヤリングとネックレスと時計を外しているだろう。それだけじゃなくて、ベルトまで。手相を見ていたと思うけど、何でタオルケットまであそこに置いてあったんだろうな」


浅井さんが小さく「あっ」といった。私も声は出さなかったけど、口を「あっ」の形に開けてしまった。そういえばタオルケットは畳んでそのままバッグのそばに置いてしまったような気がする。


「ただ占うだけならいらないものだろう。何があったのか話してもらおうか」


浩二さんの言葉に浅井さんは焦った声を出した。


「ちょっと待て。変な誤解はするなよ。俺は麻美ちゃんに手を出してないからな」

「浅井、それはわかっているよ。麻美が泣いていない時点で、お前がいじめていないことはな。麻美と二人にしてお前の心が動いたとしても、手を出すようなことはしないと思っているし。そこは信用しているよ」


ニコリと笑った浩二さん。なんか迫力がない? 浅井さんの顔が引き攣っている。


「お前の彼女に手を出すわけないだろう。下平なら俺が占いを、他の奴らが居ないところで見て貰いたいという気持ちを、分かってくれると思っていたよ」

「ああ、だろうと思ったから、麻美をおいていったんだ。だけどな、麻美が倒れるような無理強いをお前がしたのなら、話は別だぞ」


浅井さんの額に汗が浮かんできた。


「だから、無理強いはしてないって。占いの反動みたいなもんらしいってば。麻美ちゃんに聞いてみればいいだろう」


浅井さんが叫ぶように言ったら浩二さんの視線が私の方を向いた。


「麻美、どうなんだ」

「あの、本当に手相占いをしていただけなのよ」


浩二さんが近づいてくる。やましいことは何もしていないはずなのに、なんか圧迫感を感じるんだけど。


「浅井のことを庇っているんじゃないのか」

「いや、庇う必要はないでしょう」

「おい、下平。麻美ちゃんに何する気だ」


逃げる必要はないのだけど、後ろむきに下がってしまう。背中に何かが当たった。手の感触から食器棚みたい。チラリと右の後ろを見たら腕が見えてドキリとした。前を向くと目の前には浩二さん。左手は私の顔の横について、逃げ道を塞ぐみたいにされてしまったの。浩二さんの右手が伸びてきて私の顎に触れた。掬いあげるように上を向かされて、浩二さんと視線が合った。


(あっ・・・)


瞳の中に心配そうな色を見つけて、私はそっと浩二さんの右手を両手で掴んだ。


「あのね、大丈夫だから」

「本当に」

「うん」


安心させるように微笑んだら、浩二さんの顔が近づいてきて唇が重なった。浩二さんの左腕が腰に回って引き寄せられる。右手も私の手から抜け出して背中から肩に回ってきた。私は空いた手で浩二さんの服を掴んだ。


「あのさ~、ギャラリーがいるのを忘れないでほしいんだけど」


浅井さんの声が聞こえてきて、目を閉じて口づけを受けていた私は目を開けた。浩二さんから離れようとしたけど、浩二さんは放してくれず、逆に絡めとられるような口づけをされた


「ん~・・・んん~・・・」


講義の声をあげたくても言葉にならなくて、浅井さんに見られているのかと思うと、恥ずかしくて涙が滲んできた。


「おい、下平! いい加減にしろよ」


浅井さんの低めた声が聞こえてきて、浩二さんはやっと唇を離してくれた。けど、そのまま頭を抱え込むように抱きしめられてしまった。そして「チッ」と舌打ちをしたのが聞こえてきた。


「下平、お前な~、あんまり麻美ちゃんをいじめんなよ」

「どこがだよ。可愛がっているだろう」

「それこそ、俺が言いたい。どこがだよ。麻美ちゃんは息も絶え絶えじゃないか。それにそんな無駄な牽制しなくていいから。麻美ちゃんは羞恥で死ねるレベルだぞ」

「浅井から麻美は見えないだろう」

「見えなくてもそれくらいわかるわ。いい加減に、麻美ちゃんを離してやれよ」


(うん。本当に放してほしい。浅井さんに見えないのはわかったけど、なんか居たたまれないのよ~)


渋々という感じに抱きしめる力が少し緩んだ。


「それで、いったい何があったのか、教えてくれないか」


浩二さんが優しい声で言ったけど、視線に厳しいものが込められていて、逃げ出したくなりました。



結局は浅井さんがピザを作っているのを横目に見ながら、二人に話すことになったのよね。


「先に言っておきますけど、本当に浅井さんは悪くないですからね。そこだけは間違えないでくださいね」

「わかったよ。麻美が言うことは信じるから」

「えーとですね、私はもともと霊力は本当に微々たるものなんです。ただ、私の守護霊が霊能者だったそうで、そのおかげで霊力が高めになっているんですよ。まあ、借り物という方が正しい気がしますけどね。それで、滅多にないことなんですけど、その守護霊が出てくることがありまして、それをされると意識を乗っ取られたようになって、自分に戻った時には疲れ果ててひっくリ返ってしまいます、まる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ