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95 浩二さんの親友の真意は?

浅井さんは私の前にマグカップをおいた後、冷蔵庫からいろいろと取り出していた。それを私が座るテーブルに並べていったの。


「守護霊って、そんなこともするの?」


手を止めて私のことを見ながら訊いてくる浅井さん。私はマグカップを両手で持って飲みながら答えた。


「さあ、どうなんでしょう」

「麻美ちゃんもわからないの」

「わからないですよ。今までに意識を持っていかれたのって、二回しかないですもの」

「なんか面白そうだね。そこのところを詳しく」

「話してもいいですけど、浩二さん達が帰ってきちゃいますよ。そうしたら浅井さんが聞きたい話は、みんなの前で話すことになりますけどいいですか」

「それは困るな~。じゃあ、それはまたあとで教えて貰おうかな」

「他の人がいる所では言いませんけど、いいですね」

「下平も?」

「浩二さんなら話してもいいですけど・・・」

「けど?」

「これ以上引かれないかと心配なんですよ」

「それは大丈夫だよ」


浅井さんは薄切りパンを持ってテーブルに戻ってきた。


「サンドイッチを作るんですか」

「そう。これなら挟んでおいて、あいつらが来たら切ればいいだろう。ただねえ、いつも時間が経つと乾いてぱさぱさになるのが難点なんだよね」

「それなら、筒状に巻いてそれぞれをラップにくるんでおくのはどうですか」

「筒状? それって海苔巻きみたいに?」

「はい。それなら乾きにくいですよね」


少し思案した浅井さんはラップを持ってきた。


「麻美ちゃんも手伝ってくれるかな」

「手伝っていいんですか」

「もちろんだよ。お願いするよ」


私達はサンドイッチ作りを始めた。ツナ、タマゴ、ハム、チーズを四分の一に切ったパンに、のせたり塗ったりしてクルクルと巻いていく。それをラップに包んでいった。


「それで、麻美ちゃんは俺の事をどう思ったの」

「どうって、めんどくさい人だと思いましたけど」

「最初から?」

「最初からです」

「・・・普通さ、もう少しオブラートに包んで言わないかな、そういうことは」

「いや、今更でしょう。仕掛けてきたのは浅井さんですからね。最初は何がしたいのだろうと思いましたけど」

「まあそうだね。でもさ、麻美ちゃんはあんなに失礼なことを言われたのに怒らないの」


(失礼なことか~。でも、浅井さんに言われたことは本当の事よね。私こそが浩二さんに失礼なことをしていたんだもの)


「う~ん、言われたことは事実だったし、浅井さんが浩二さんのことを友達として大切に思っているんだなと、感じましたけど」


そう言ったらしばらく浅井さんから返事はなかった。顔をあげてみると頬を赤くしている。


「麻美ちゃんって、素でこれなの? なんでそんなに素直に受け取るの。もう少し悪意を疑おうよ」

「いやいや、どこに悪意がありました? ちゃんと最初から私のことを歓迎してくれていたじゃないですか。浩二さんを祝うだけなら、私を呼ぶ必要はないですよね。浩二さんを焚きつけたのだって、本当に浩二さんを思って助言したんでしょ。まあ、私と会って浩二さんに相応しくないと思ったら、仲を壊そうぐらいのことは思っていたのかもしれませんけどね」


また浅井さんは黙ってしまい、しばらく返事はなかった。


「本当にやりにくいな、麻美ちゃんは。なんかいろいろ見透かされてそうで嫌なんだけど」


渋い顔で言われて、私は口をニヤリという形にしてみせた。


「身近に浅井さんと似た人がいますから」

「・・・なんか嬉しくない」

「褒め言葉でいってないですし」

「・・・楽しくもない」

「なんなら落としてあげましようか」

「・・・実は麻美ちゃんてサド?」


浅井さんのことを半眼で睨むように見据えて、ニヤリと笑う。


「おとなしそうに見えたのに。実はSM好きだったなんて」

「誰がSM好きですか」

「違うの?」

「いい加減にしないと、浩二さんにいいつけますよ」

「そういうのって嫌いなんじゃないの、麻美ちゃんは」


サンドイッチを作りながらの会話は、本来したい話から脱線しまくりの、ポンポンとした言葉の応酬になっていた。向かい側で立ってサンドイッチを作っている浅井さんは、楽しそうに見える。眉間にしわはよっているけど・・・。それなら脱線したままでいいかと思った時に、浅井さんが訊いてきた。


「話が逸れたけどさ、麻美ちゃんは俺の事『めんどくさいやつ』って思ったんでしょ。それって手相にも出ているの」

「えーと、まあ、そうですね」

「どんな感じに?」

「・・・聞きたくないから話を逸らしたんじゃないんですか」

「麻美ちゃんの乗りの良さにつられたんだけど?」

「・・・やっぱり落としましょうか」

「出来るの? 麻美ちゃんに」


揶揄うような表情に私の中の仏心が消えた。


「出来ますよ。なので、もう一度左手を見せてください」


浅井さんは黙って左手を私の方に見せてくれた。


「もういいですよ」

「見ながら占わなくていいの」

「今から言うのは性格と過去視ですから、視ながらでなくても大丈夫です」


私がそう言ったら浅井さんは手を戻して、サンドイッチ作りを再開した。私は一度大きく息を吸うと、ハア~と吐き出して浅井さんのことを見据えたのでした。


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