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93 浩二さんの親友と対決?

浅井さんはイライラしたようにソファーのひじ掛けを、左手の人差し指でトントンと叩きだした。


「大体さ、麻美ちゃんは下平に失礼なことをいっぱいしているって、自覚はないの? そうかと思えば、気をもたせるようなことを言って下平を振り回してるよね」

「私はそんなことはしてません」

「しているだろう。なんだよ、手相占いって。余興とかっていいながら、『霊感で数字が浮かぶんです』って言ったりしてさ。下平が28歳の時に環境が変わるって? それは自分と結婚したらだって言ったんだろ。麻美ちゃんは下平に気はなかったのに、キープするつもりだったんじゃないの。わざわざインチキ占いなんかで気を引くようなことをしてさ。」


私は浅井さんのことを見下ろしながら言った。


「訂正してください。私はインチキ占いなんかしていません」

「インチキ占いじゃなきゃなんだよ。マジでガチだとでもいうのかよ」

「私の占いは本当です。数字が浮かぶんです」

「どうだか。口では何とでも言えるだろ。よくある気を引くための手なんだろう」

「違いますってば! じゃあ、どうすれば信じてくれるんですか」


そう言ったら、浅井さんは待ってましたとばかりに、ニヤリと笑った。


「それじゃあ、俺を占ってみてよ。その結果次第で信じてやる」


偉そうな言い方に私はムッとした。別に信じてもらわなくても構わないけど、浩二さんを落とす手段にしたと思われていることが癪に感じたのよ。


「それなら占ってあげます。その代わりどんな言葉が出てきても責任を持ちませんよ。浅井さんが隠したいことも見透かす場合もありますからね」


半分は本気で言ったのに浅井さんは「はん」と鼻で笑ってくれた。なので、私は本気で視てやろうと思って、腕時計、ネックレス、イヤリングと、ついでにベルトも外してバッグのそばに置いてから、腰を下ろした。


「何でベルトまで外すの」


呆れたような視線を私に向けて、浅井さんが訊いてきた。


「私の霊力って弱いんです。前は少し幽霊の姿も見えたりしましたけど、うすぼんやりとしてはっきり見えなかったんですね。手相占いをするようになって、霊力も使って視てるって判ってから、手相占いに視る力を全振りしました。でも感じる力の方はそれなりにあるから、それを遮断する意味で金属の物を身に着けるようにしているんですよ」

「それって、金属が霊力を遮断するってことかな」

「イメージとしてはそうですね。本当にそんなことができるのかはわかりませんけど」


浅井さんは「ふう~ん」と興味なさそうにしていた。


「だからってベルトまで外す必要はないんじゃないの」

「でも、バックルは金属です。何かの拍子に腕に当たるかもしれないじゃないですか」

「取っちゃって困らないの」

「これは飾りベルトです。あってもなくてもかわりません」


そう、今日の服装はソフトデニムの前ボタンのワンピース。これにショート丈の白いカーディガンを合わせているの。ベルトはなくても困らないけど、ベルトがあった方が締まって見えるからしてきたのよ。


「それならいいけど・・・時間もそんなにないことだし、さっさと見てくれるかな」


浅井さんの言葉にムカムカしながらも、私はいつもの説明から話すことにした。


「それでしたら、まずは両手を見せてください」

「両手ってなんでだい」

「それはこれから説明します。さあ、出してください」


浅井さんは組んでいた足を解いて体を乗り出すようにして両手をローテーブルの上に乗せた。私は視にくかったので、ソファーから下りて床に直に正座してから身を乗り出した。


「浅井さん、両手を見ていただければわかるように、左右で同じ手相の人はいません。私はそれを見てから利き手で占います」

「利き手? 手相占いって左手でするんじゃないの」


浅井さんの言葉に私の口元に笑みが浮かんだ。


「普通でしたら、そうでしょうね。私が利き手で占うのは、とっさに物を掴む時には利き手がでるからです。なので運命を掴むのも利き手だと思っています。それにもう一つの視かたがあって、利き手は行動面、逆が内面としてみます」


そこで言葉を切ったら、浅井さんは少し動揺したようだ。顔はポーカーフェイスを保っていたけど、微かに手が揺れたもの。これは知られたくないことがあると見た。


私はほくそ笑むと浅井さんの両手をもう一度じっくり見てから言った。


「それでは利き手だけでいいですよ」

「もう? 比べながら話すんじゃないの」

「そんなことはしません。まずは線の説明をします。浅井さんは占ってもらったことはあるんですか」

「・・・ないけど、なんで」

「普通の人は手相占いを左でするなんて知りませんから」

「この前テレビでどっかの占い師が占っていたのを覚えていただけだよ」

「ああ、そうでしたか。じゃあ線の名前はわかりますか」

「感情線、頭脳線、生命線、運命線だろ。あと、太陽線とかいうものもあるとかって聞いた」


浅井さんは自分の手の平の線を指さしながらそう言った。


「正解です。ちなみに太陽線はこれになります」


私は自分の左手を見せた。浅井さんはびっくりしたように目を見開いた。


「すごくくっきりはっきりしているね」

「まあ、そうですね。でも、私の手相のことはいいので、浅井さんの手相占いに進んでいいですか。急がないと浩二さん達が戻ってきてしまいます。何も用意できていないのはまずいでしょう」

「それなら大丈夫だよ。ほとんど下準備は出来ているからね」


浅井さんの言葉に私は呆れるべきか、問い質すべきか迷ったのでした。


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