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91 浩二さんの親友は・・・

私と浩二さんは浅井さんの邪魔にならないようにしながら、指示された物の、スプーンやフォーク、スープなどを運んでいった。浅井さんはメインのパスタを茹でて、隣の鍋にいれた。中身はホワイトソースらしくて、すぐに麺に絡ませてお皿へと移していった。


それをそれぞれが自分の分を持ち、リビングのテーブルへと運んだ。


「それじゃあ、食べようか」

「ああ。いただきます」

「いただきます」


浩二さんの後に私も言ってから、パスタをフォークに絡めて一口食べた。チーズが入っていて濃厚で美味しかった。


「おいしい」

「だろう。浅井の料理は美味いんだ」


浩二さんが手放しで褒める。それを「いや~、それほどでもないよ~」と、謙遜しているけど、浅井さんが私に向ける眼は笑っていなかった。


「だけど、浅井。麻美の料理も美味いんだぜ」


浩二さんがサラダをパクつきながら、そう言った。


「そういえば麻美ちゃんは調理師免許を持っているんだっけ」

「ええ、そうです」


私は殊更ニッコリと笑って答えた。


「それじゃあ、今度何か食べさせてね」


(これって、要約すると私が作ったものは食べたくないということね)


被害妄想かもしれないけど、作ってねと言われないということは、そういうことなのだろう。この感じだと浩二さんと私が結婚したからって、浅井さんがうちに来るようには見えないもの。だからといって、この家の台所を貸してくれる気はなさそうだしね。


私はそう判断しながら、二人の会話の邪魔をしないように、相づちを打ちながら食事をしたのでした。


食事が終わり片付けくらいはやらせてもらおうと思ったのに、浅井さんに断られてしまった。でもね、私が洗剤で洗うか、水で濯ぐくらいはさせてくれてもいいと思ったのよ。



浅井さんが片付けを終えてくつろごうとしたところに電話がかかって来た。話している内容から察すると、他の友達が浅井さんの家の位置がわからなくて困っているみたい。受話器の送話口を押さえた浅井さんが言った。


「下平、あいつら曲がるところがわからないんだと。どうも行き過ぎたみたいなんだ」

「どこにいるって」

「○○ホームセンターだってさ」

「あそこまでか。ここから25分はかかるところだろう。じゃあ××街道の曲がるところがわからなかったのか」

「そうみたいだな。もう何度も来ているのにな~」

「仕方がない。迎えに行くか」

「悪いな。頼むよ、下平」


浅井さんはそういうと友達に浩二さんが迎えに行くから、そこから動くなと言っていた。電話を切って、こちらを向いた浅井さん。浩二さんは立ち上がった。私にも目で合図をしてきたから、私も立ち上がる。


「待った、下平。麻美ちゃんは置いて行ってよ」

「なんでだよ、浅井」

「だって調理師なんだろう。出来れば料理を作るのを手伝って欲しいと思って」

「珍しいな、浅井がそんなこというなんて。いつもは台所に来るな、手を出すなって言うだろう」

「そりゃあ、下平以外のやつは包丁もろくに使えない奴らじゃないか。そんな奴に手伝わせると時間が余計にかかるだろう」

「たしかにそうだな」

「下平だって酒が入ると動かなくなるだろう」


浅井さんの言葉が図星なのか、浩二さんは「ウッ」と言葉を詰まらせた。


「そういう訳で、俺は麻美ちゃんを助手に料理を作っているからさ」


ニッコリ笑顔でそう言った浅井さんの首を浩二さんは抱えるようにした。そして浩二さんは隅の方に浅井さんを連れて行って何かを言っていた。話がついたのか、浩二さんがそばに来た。


「悪い、麻美。急いで戻るから、浅井と待っててくれ」

「わかったわ」


私は頷いたけど、少し不安そうな顔をしたみたい。玄関までついて行ったら、靴を履いてこちらを向いた浩二さんに右頬に口づけをされた。


「じゃあ、行ってくるよ」

「いってらっしゃい」


こんな時なのに玄関でのお見送りだなんて、少し早い新婚気分に頬が緩んでしまった。浩二さんも微笑むとドアを開けて出ていった。


「あー、行っちゃったねえ~、下平は~」


後ろから聞こえてきた声に、私はゆっくりと振り返った。そこには全然笑みのない浅井さんがリビングの入り口で立っているのが見えた。腕を組んで私のことをじっと見つめている。


「そんなところにいないでこっちにおいでよ、麻美ちゃん」


そう言うと浅井さんはさっさとリビングの中に戻っていった。私も中に入ると浅井さんはテーブルの方ではなくて、応接セットのソファーに座っていた。


「はやく座ってよ。俺さ、麻美ちゃんと二人で話しがしたかったんだよね」


優し気な口調で言われたけど、眼は全く笑っていない浅井さん。私は浅井さんから一番離れた位置に座った。それを見て浅井さんは薄く笑った。


「そんなに警戒しなくても何もしないよ。するのは話だけだから」


そう言って浅井さんは、ソファーの背もたれに体を預けるようにして足を組んだ。


「麻美ちゃんって美人じゃないよね。それどころかたいして可愛くないし。十人並みもいいところだよね」


(・・・これって、何?)


浅井さんの言葉にどう反応していいのか、困惑した私でした。


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