表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/238

88 男性向けの漫画についての知識?

浩二さんの友達の家に向かう車の中で、私達は最初は他愛ない話をしていたの。

だけど浩二さんは、先ほどの話が引っ掛かっていたみたいで、車に乗って30分ぐらいたった時に訊いてきたのよ。


「さっきの話を蒸し返すようで悪いけど、麻美はどんな本からそういう知識を得たんだ」

「そういう知識?」


一瞬何のことを言われているのか、分からなかった。なので、パチパチと瞬きをしてから、浩二さんの顔を窺うように見た。


「好きな人とする行為は素晴らしいと、書かれていたと言っていただろう」


浩二さんの頬が赤くなっている。その言葉を口に出して言うのは、恥ずかしいみたいだった。私もつられて頬に熱が溜まってくるのがわかった。


「えーと・・・そうね、女性向けの大人の恋愛小説と言えばわかるかしら?」

「女性向けの大人の恋愛小説?」


浩二さんの言葉の語尾が上がった。


(おかしいな? そんなに意外なこといったかしら?)


「それってどういうものなんだ?」

「う~ん、浩二さんは本屋にはあまり行かないの?」

「まあ、そうだな。本はほとんど読まないな」

「じゃあ、ハーレクインって聞いたことないかな?」

「ハーレクイン? すまない。わからないな」

「あっ、知らなくて当たり前だから。ハーレクインには本当に女性の大人向けの素敵な恋物語がたくさんあるのよ。ただ欧米の作家さんだから・・・その、ああいう部分がとても素敵なこととして書かれていたのよ」


(クウ~、どうしてくれよう。シークに奪われるような愛だとか、大富豪からのあり得ないほどの甘い生活を、説明なんて出来ないよー!)


「・・・まあ、欧米なら表現が大袈裟にもなるか。・・・まさか、原文で読んでいたのか」

「違うわ。翻訳されたものよ。でも、向こうの感じに近づけるためにかなり過激に感じられることも書かれていたりしたのよね」

「過激ねえ。SMみたいなことをしているわけじゃないだろうに」


浩二さんが呟くように言った。


「SMはないけど、暴力を振るう相手から逃げている話なんかもあったわね」

「暴力? そんなものまで?」

「あー、えーと、誤解をしないでほしいけど、そういう話は逃げている女性をヒーローが助けるの。実際に酷い暴力シーンがあるんじゃなくて、恋愛のスパイスみたいに使われていただけよ。実際に暴力的なものって青年誌の漫画にあったわよね。えーと、確かマッドブル34だったかしら? 孔雀王にも暴力ではないけど、呪術で意識を奪って身体を自由にするとか、ゴルゴ13でもベッドシーンがなかったかしら?」


今までに読んだ漫画を頭の中に思い浮かべてみる。いくつか他にも浮かんだけど、タイトルを覚えていなかった。


「麻美? いま、信じられないものを聞いた気がするのだけど・・・。麻美はそういうのを買って読んでいたのか」


ゴクリと唾を飲み込んでから浩二さんはそう言った。ということはいまの作品の内容を知っているということね。


「買ってないわよ」

「じゃあ、なんで内容を確信したような言葉が出てくるんだよ」

「働いていた時に寮で仲が良かった子が、そういう本を買っていて読ませて貰ったのよ。少年誌の週刊誌をほとんど網羅していたから、あの頃の作品はわかるわね」


(本当にねえ~、彼女のおかげで少年漫画に詳しくなったわよね)


当時を思い出して懐かしんでいたら、呆れを含んだ声が聞こえてきた。


「女の子なのに少年誌を網羅しているなんて・・・」

「あっ、違うの。理由があったのよ。その子の彼氏が平日は忙しくて本屋に寄れなくて、彼女が代わりに買っていたのよ。それで彼女も、漫画が好きだったから先に読んでいたのね。私も彼女と仲良くなってからそれを知って、読ませてもらうようになったのよ。もちろんただ読ませてもらうんじゃ悪いから、私も花とゆめとLaLaを買って彼女とシェアしていたのね」

「じゃあさっきの漫画は?」

「その彼氏の趣味。最初は好奇心で読んだけど、マッドブルは合わなくて1巻でやめたし、孔雀王は3巻までだったかな? ゴルゴはその彼が買っていたんじゃなくて、借り物を彼女経由で渡すときに少しだけ読ませて貰っただけね」


そう言ったら浩二さんはホッと息を吐き出していた。


「私はそれよりもバリ伝とかふたり鷹とかペリカンロードとかがいいな。あと、よろしくメカドックとかもアニメにもなったから読んだし。でも、新谷かおる先生の作品が一押しかしら?」

「新谷かおる? これも麻美と結びつかない気が・・・」

「あっ! 新谷かおる先生の作品は友達の兄が集めていて、読ませてもらったのよ。戦場ロマンシリーズとか、ファントム無頼! エリア88は我慢できなくて自分でも揃えたのよ。紅たん碧たんとクレオパトラD.C.も持っているわね。そこから奥様の佐伯かよの先生の作品にいったのよ~。彩子-サイコーからなんだけど、口紅コンバット、燁姫あきひ星恋華ほしれんげを持っていて、確かいまは緋の稜線を描いていたかな? お二人が協力しているのが凄くよくわかるのよ。かよの先生の作品に出てくるバイクや車ってほとんどかおる先生が書いているって聞いたし、かおる先生の作品の女性が線が細くてきれいになっていったのは、かよの先生の影響だとも聞いたわね」


私は嬉々として話していたの。そうしたら、いつの間にか浩二さんは無言になっていたのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ