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81 カツオ事件? 婚約者と悪友の会話編

なのに、なぜか浩二さんが食いつき気味に和彦に聞いていた。


「そんなに麻美は危なっかしかったのかい」

「本人はしっかりしているつもりですけど、周りの認識はそうでしたね。なんか庇護欲を刺激されるらしくって。それなのに飲み会の時なんか、さりげなく気配りしまくって、甘えたい奴なんかも落としてましたから」

「そんなことしてないのに」


そう言ったら、二人は同時にため息を吐いたのよ。


(なんで二人して溜め息を吐くかな。私は隙を見せたことはないんだけど)


ムッとして浩二さんの腕の中から抜け出そうとしたけど、逆にもっと強く抱え込まれてしまった。


「ねえ、落ち着かないから放して」


振り返って睨むようにしたら、渋々という感じに浩二さんは離してくれた。

その様子が和彦の笑いのツボを刺激したらしく「プッ」と吹き出していた。私が見たら口を押さえていたけど、聞こえたからな!


「渡辺君。麻美はそんなにもてていたのかい」


浩二さんが少し真剣な感じに聞いたら、和彦は笑いを引っ込めて真顔に戻った。それから顔をしかめたと思ったら、困ったように言った。


「えーと、下平さん。そんなに威嚇しなくても、俺は麻美のことなんとも思ってませんから」

「それにしては二人で部屋にいたりしたじゃないか」

「そうですけど、それはたまたま本の趣味が近いんで貸し借りする仲なだけですし。現に麻美と二人でいる時は部屋のドアを締め切ったことはないですからね」


言われて見ればそうだった。和彦はかならずドアを少し開けていたっけ。


「だけどさっきだって、君の方が先に仕掛けてきたじゃないか」


(そうそう。あの居心地悪い空気を作り出したのはあんたでしょうが!)


「あー、それについては謝ります。すみませんでした。麻美から変な相談を持ち掛けられたりしたから、どうなったか気になって様子を見るためにあんなことしました」


(ふ~ん。様子見ね~・・・って)


「私の様子見だったんかい!」


私は思わず全力で叫んだ。なのに二人は私を無視して話を続けていった。


「変な相談ってどんな?」

「この前初めて会った時に、俺が麻美を抱きしめていたでしょう。あの時にこいつ、最後の悪足掻きをしようとしたんですよ」


二人してチラリと私に視線を向けてきた。


(というか言わないでよ、和彦。この間はなんとか誤魔化したんだから)


私の願いもむなしく和彦は真実を告げてしまう。


「下平さんとの結婚をなしにしようとしたんですから」

「ほう~」


浩二さんの口から低い声が出た。私は逃げ出そうと腰を浮かしたら、手を掴まれて動くことができなくなった。


「麻美、何を考えたのか教えてもらおうか」


私が逃げ出さないように、また抱え込まれて、私はピンチに冷汗がでてきた。


「まあまあ、下平さん。お仕置きなら後でたっぷりしてあげてください」

「こら、変な許可をだすなー!」

「これはバカなことを考えた麻美が悪いんだろ。まあ、手加減はお願いします。さっきの俺の言動に下平さんのことを気にしてましたから」


悪びれずに言う和彦に毒気を抜かれたみたいで、浩二さんの私を抱え込む腕が緩んだ。


「君は本当になんなんだ」


呆れたような口調で言った浩二さん。


「さっきも言いましたよね。ただの本の趣味があう幼馴染みだって」

「それにしては麻美との距離が近すぎる気がするんだが」


そう言われた和彦は顎に手を当てて少し考えた。


「これからは過剰な接触は控えますから、それで勘弁してくれませんか」

「そういう事ではなくてだな」

「わかってますよ。ですが本当に俺は、麻美に特別な感情はないですから」


和彦の言葉に納得できないのか、浩二さんはなおも言った。


「だけどさっきの会話だって」

「本のことですか」


そう言って和彦は視線を浩二さんから私に移した。


「やっぱヤン・ウェンリーの知略は凄いよな」

「ラインハルト様の方が凄いでしょ。加えてカリスマ性があるじゃない」

「ハイレオンのかっこよさについては?」

「認めるけど、ラシェンの見せない苦悩とかが萌える」

「麻美のことだからディーノよりレイムのほうがいいって言うんだろ」

「そりゃそうでしょ。やっぱり金髪碧眼で魔道士だなんて萌えるしかないわよ!」

「ディーンの完璧仕事ぶりは?」

「ディーンはかっこいい。そこは大賛成!」

「カシュ―のほうがかっこよくね」

「パーンのほうがいいけど、アシュラムも好みだよ」

「シャールって間抜けだよな。詰めが甘いし。セレムのフォローがないと何もできないんじゃないの」

「そんなことないでしょ。でも私としてはバトラーさんが出てくる話が好きだけど」

「やっぱ、魔法で決着より剣だよな」

「魔法には夢とロマンがあるでしょう!!」


和彦の言葉に言い返していたら、私を抱える浩二さんの腕が急に離れた。どうしたんだろうと顔を見上げたら、口を開けて呆然としている顔が見えた。


「どうかしたの、浩二さん」

「よく出てくるな。名前だけで」

「好きなものはでてくるけど」

「ちゃんと合っていたのか」

「えーと、最初が銀英伝で、次がリダーロイスシリーズなの。その次はプラパ」

「あ、いい。タイトル言われてもわからないから」


顔を引きつらせているから、浩二さんは本をあまり読まないのだろうな、と思ったのでした。


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