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75 両家の顔合わせ 前編 *

ゴールデンウイークの5月の土曜日。私は浩二さんと結婚式場に来ていたの。丸山さんからの呼び出しです。


「お忙しいところをお呼び立てしてしまいまして、申し訳ありません。実は再来週ブライダルフェアがありまして、もしよろしければ参加なさりませんか」


ということでした。それから、式が約1年後ということだけど、もう少し参加人数がわかるといいとか、結納はどうするのかと訊かれたの。これは両親に聞かなければわからないので、来週に答えると返事をした。


そして、その翌週の土曜日。私はすごく緊張をしていたの。今日は浩二さんがご両親を連れてうちに来ることなったのよ。


約束の時間の11時。下平家のご両親と浩二さんが現れた。皆様スーツを来ていらっしゃった。うちの両親ももちろんちゃんとした格好で出迎えた。


「ようこそいらっしゃいました。どうぞおあがりください」


両親に案内を任せて私はお茶の支度をしてから奥の部屋に行った。うちの両親が床の間側、下平家がその反対側に座っていた。皆にお茶を配ると、私も両親の隣に座った。


「私は浩二の父の下平泰浩と申します。隣が妻の博美です。この度はありがたいご縁を頂きまして、ありがとうございます。不束者にございますが、浩二のことをよろしくお願いいたします」


浩二さんのお父さんが挨拶をして頭を下げた。同じようにお母さんと浩二さんも頭を下げている。


「ご丁寧なご挨拶をありがとうございます。こちらが先にご挨拶に伺わなければならないところを、お越しいただき申し訳ございません。御覧のとおり妻はヘルニアの手術をして以降、歩くのもままならない様な状態です。こんな状態の我が家に婿入りをしていただけるだけでもありがたく思っています。私は麻美の父の沢木尚志ひさしです。隣にいるのが妻の美知枝みちえです。末永くよろしくお願いいたします」


父が頭を下げるのに合わせて母と私も頭を下げた。


「それでは早急で申し訳ございませんが、これからのことを話しませんか」

「はい。もう、浩二から聞きましたが、結婚式場はあちらでよろしかったでしょうか」

「もちろんです。私共にはそういった知り合いはおりませんので、助かりました」

「では、次に仲人の事ですが、そちらで立てていただくわけにはまいりませんか」

「浩二君の仕事関係の方にお願いしなくてよろしいのですか」

「はい。浩二に聞きましたところ、仲立ちに入ってくださった方はまだ若輩者とか。その方にお願いするわけにいかないそうです」

「では課長などは駄目なのですか」

「断られたそうです。それより上の役職の方にお願いするのは筋違いになるとかでこちらに適任者はいません」

「わかりました。どなたか当たってみます」

「はい。よろしくお願いします。では結納はどうしましょうか」

「結納ですか」

「最近は簡略化で行わない場合もあると伺っております」

「結納は出来れば行いたいのですが」

「わかりました。それでは行う方向で行きましょう。時期はどうしましょうか」

「時期ですか。秋の10月頃でいかがでしょうか」

「10月頃ですね。承知いたしました」


父と浩二さんのお父さんでどんどんこれからのことが決まっていったの。


「こんなところでしょうか」

「そうですね。ああ、あと、人数がどれくらいかと訊かれていたのでしたね」

「そうですね。うちは婿取りということもあるので、村の人間を呼びたいと思っています。隣組のものが19名、それ以外の近所が4名、村の知人が10名くらい、他に親戚などを合わせますと50名ほどになります。あとは麻美の友人が何人かですな」

「こちらも浩二の仕事関係が30名ほど、親戚が20名ほどになりますな。お互いに同じくらいの人数で丁度良いですな」


浩二さんのお父さんがそう言って穏やかに笑ったの。


「そうですな」


父も相槌を打って笑顔を見せた。


「では、これくらいでしょうかね」

「そうですな」

「では、どうぞお楽になさってください」


そういって父は足を崩して胡坐をかいた。


「それではこれから娘が食事を供したいと言っております。大したものはございませんが、どうかゆっくりとなさってください」

「まあ、麻美さんがお作りになられるの」

「はい」


私は頭を下げてから立ち上がって、部屋を後にした。


台所に行ってまずは先付として用意しておいたものを持ち、奥の部屋へと戻った。


「先付として、エビせんべいとサーモンのマリネ風、だし巻き卵です」

「まあ、美味しそう。いただくわね」


浩二さんのお母さんが箸をつけるのを見てから私は下がった。


次は椀物。白身魚の剥き身を山芋と混ぜて、ふんわりとした食感になるようにして蒸したもの。いうなれば、はんぺんね。これを三つ葉と共にだしを張った椀に入れて出した。


次の向付の刺身は魚屋さんに注文して切ってもらったものを盛っただけ。


炊き合わせとして、六角に切ったサトイモ、梅の形に抜いた人参、大根、筍、椎茸を出した。


さあ、次は焼き物。これも魚屋さんに勧められた西京漬けのお魚を、焦げないように気をつけて焼き上げた。はじかみ生姜を添えて出した。


この後は酢のものを出して、それからご飯とお味噌汁。


最後に買ってきた和菓子をお茶と共に出せばこれで料理を出すのは終わり。


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