42 悪友な幼馴染みの指摘だろうか?
和彦はまた大きくため息を吐き出した。本当にこれ見よがしな態度にむかっ腹がたった。
「それから、手相占いをしたのも間違いだぞ。お前は自分の占いがどんなものか、わかってなさすぎ。恭介達が離れていかないのも、お前の占いによるところが大きいし」
「はあ~? 私の手相占いが? なによそれ。いつも余興程度にしか視てないじゃない」
「あれで余興って、お前霊感の使い方を間違えているぞ」
「仕方ないじゃん。別に意識して霊感を手相占いに使ってないし。それに手相占いって疲れるんだから」
「疲れるって、どうして」
「だから霊力を使うからか、視終わった後疲れるのよ。余興以外の使い道がないじゃない」
私は前に話したはずなのにと思いながら説明した。そうしたら、和彦の表情が驚いたものに変わった。そしてその後渋面に変わっていった。
「おい。そういうことは早く言っとけよ。まったく。道理で皆の手相を見た後、元気がなくなると思ったら・・・。あいつらにも言っておかないと」
(あれ? 話してなかったっけ?)
「お前、千鶴にも言ってないだろ。過保護なあいつが止めないなんておかしいと思ったら」
「おかしいな。話してあると思ったんだけど」
私は首を捻りながら考えた。誰かには話した記憶があるけど、手相占いに関しては記憶があいまいになるから、頼まれてみた誰かだったのかもしれない。
「まあ、いい。このことは皆で集まった時に話すことにするぞ。とにかく、お前の占いは当たるんだよ。お前さ、高校2年の時に大学進学志望組に、どこの大学に進学するか聞かれて見ただろ」
「そんなの視たっけ?」
「忘れているのかよ」
「仕方ないじゃん。なんでか占ったことは覚えていられないんだもの」
「そういえば、そんなこと言ってたな。でも、ところどころ覚えているだろ」
「そうだね。印象に残ったものは覚えているね」
本当に不思議なのだけど、視た内容は覚えていられなくて視終わると忘れてしまうのよ。でも、次に視るとまったく同じことを言うらしい。本当に変な霊力だと思う。
「あの時、大学の話を聞いたのは、本当に余興程度だったんだよ。皆も本気で聞いてなかったし。麻美の答えも大学名ではなくてその大学がある地方もしくは県の名前だったから。だけど、俺達が大学生になった年の夏休みに皆であつまって、その時に修二が皆がどこの大学に入ったのか訊いてわかったんだ。麻美の占いが当たっていたことに」
「そんな話したっけ? 私覚えがないけど」
「その時麻美は、仕事の関係でこっちには帰って来れなかったんだよ。だからその後、麻美の帰省に合わせて集まるようになったんだ」
・・・道理で毎回しつこく千鶴に聞かれたんだ。この日は大丈夫かって。
「そんな麻美の占いだけどな、当たるかどうか知らなくても、あんな意味深な占いされたら、意識してくださいって言っているようなものだってのは・・・解ってなかったか」
和彦は私の顔を見ながら言った。
そんなの知るか。占いに関しては自分で意識して言葉を選んでいるわけじゃないもの。気がつくと滑り出ているのだから、どうしようもないじゃない。
「無意識って怖いのな。でも占いが証明しているじゃないか」
「何がよ」
「だから、結婚線が見れなかったんだろ。それって麻美に関係しているから見れなかったと、下平さんに受け取られたと思うけど」
「・・・うっそ。なんでそんなことに」
私は小さな声で呟いた。その声が聞こえなかったのか、和彦は言葉を続けている。
「それになんだよ。28歳の時に環境が何から何まで変わるっていうのは。続けて出た台詞が『私と結婚して名字が変われば』って、誘っているとしか思えないじゃないか」
「それに関しては、私もまずいと思ったのよ。本当に口から滑り出てしまったから」
「どっちにしろもう遅いだろうな。プリンアラモードを一緒に食べてとお願いされた時点で、落ちかけてたんだろうし」
「はっ?」
「いや、麻美のことだから無意識の潤んだ瞳でお願いポーズを水族館辺りから繰り出してたかもしれないし」
「はい? なんか聞き捨てならない言葉が聞こえてきたけど?」
私がまた眇めた視線を向けたら和彦はニヤリと返してきた。
「だってそうだろ、たいして仲良くない奴にプリンアラモードを一緒に食べて欲しいなんてお願いするか? 裏読みすれば『これからよろしく』ってとれるし、フォークが一つしかないから一緒に使おうって、何プレイを望んでたんだよ。挙句にしっかり間接キスしているし」
「えっ? いつ? 私そんな迂闊なことしてないよ。下平さんがフォークを頼んでくれたから、別々に使ったもの」
「キウイを差し出されて食べたって言っていたよな」
「ええ。見ているのも嫌なくらい嫌いかと思って・・・た」
(うっ。あれは・・・あの後、私がキウイを食べた後、下平さんはメロンを食べて・・・。あれが間接キス。・・・マジか~)
「それにな、二人で仲良く一つのものを食べていれば、周りからはバカップルに見えていたと思うけどな」
衝撃の事実に私は赤くなればいいのか青ざめればいいのか、表情の選択に困ったのでした。




