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41 悪友な幼馴染みの指摘?

私の話を聞き終わった和彦は渋面で私の事を見ていた。最初は真顔でいたのに、初詣の約束の話をしたあたりから眉間にしわがより、こめかみの辺りがピクピクとしだした気がした。


しばらく無言でじっと見てくるから、私は何故か緊張してきた。


「麻美、そいつと別れろ」


口を開いたと思ったら、この台詞。私は和彦を睨みつけた。


「和彦に言われたくないんだけど」

「言われたくないったって麻美、体調崩してまで会いたいような相手とは思えない。お前のためだ。さっさと別れろ」


私は頬を膨らませて黙り込んだ。和彦に話したことで、山本さんとの交際に対する自分の態度がわかったから。


(認めたくないけど・・・認めるしかないのかな)


唇を噛んで考えていたら、一度席を立った和彦がもう一杯コーヒーを入れて、私の前においてくれた。


「ところで麻美。喧嘩の元になった見合い相手とのことも話せよ」

「えっ? 話すの? それも」

「どっちがいいか公平に判断してやる」

「・・・判断はしなくていいから。でも、私もわからなくて意見が欲しいことがあったのよね」

「俺でよければな」


私は下平さんと会うことになった経緯いきさつと、千鶴をつき合わせて最初に会った時のことと、二人で出かけたことを話した。意見が欲しかったのは二人で出かけた時のことだから、そこは思い出せる限り詳細に語った。


話し終わったら、何故か和彦はプルプルと震えていた。


「それで、意見が欲しいのは・・・って、和彦どうかしたの?」

「ブッ、わっははは~」


和彦は吹き出したと思ったら、豪快に笑い出した。しばらくの間お腹を抱えて笑っている姿を、私は呆然と見ていた。


「お、俺・・・下平さん、応援・・・する」

「はあ~?」


息も絶え絶えになりながら、和彦は言った。この後もまだしばらく笑い転げていた。私はそれをただ見ているしかなかった。


「あ~、久々に大笑いしたわ」


滲んだ涙を指で払いながら晴れ晴れとした表情で言われて、私のほうは渋面で和彦のことを睨みつけた。


「麻美、お前、山本と別れて下平さんとくっつけ」

「どうしてそうなるのよ」

「だってお前、下平さんに気に入られてるじゃねえか。というかさ、どこが嫌われようとした行動だよ。ポイント上げまくって、落としてんじゃん」

「はあ~? どこをどうとったらそうなるわけ」


まったくもって意味がわからない。


「麻美、理由を聞いたら落ち込むだろうけど、知りたいか」

「・・・癪だけどわからないから教えて」


和彦はニヤリと笑った。


「まずなあ~、根本的なところを間違えているだろ」

「どこがよ」

「あのな、おばさんがお願いして麻美の婿になっていいという奴を探してんだぞ。頼まれた中野さんはそれに見合った奴に声を掛けたはずだ。お前、下平さんの家族構成を訊いたか」

「えーと、両親と祖母、それからお兄さん夫婦に姪と甥がいるって言ってたわ」

「ほら見ろ。長男でなければ婿入りの可能性が上がるじゃないか」

「あっ・・・」


そんなところまで思いもしなかった。そういえばこの間の時に、居酒屋で会った時の話をして、前田さんは長男だと言っていたような。


「それから、お前さ、嫌われたかったらあの対応は間違いだ」

「どの対応よ」

「奢られるのが嫌だってやつ。嫌われたかったらポリシーなんか捨てて、奢られときゃよかったんだよ」

「でもね、無理やりつき合わせているんだから、それは悪いじゃない。それに、断ってもらうつもりだったし」


私が言い訳がましく言ったら、和彦はデコピンをしてきた。


「痛いじゃない。何するのよ」

「だから、そこも間違ってんだろ。絶対下平さんは無理やりつき合わされたとは思ってないって。それどころか、麻美に興味があったから来たんだろ。現にそう言ってたし」

「うそ、そんな会話してないけど」


そう言ったら、もう一回デコピンをされた。


「痛いな~、もう。いつそんな会話をしたのよ」

「お前な、帰りの車の中での会話で言われてただろうが。大体嫌われようってやつがフォローなんかするなよ。そんなこと言われたら、真面目な奴なら真剣に考えるだろ」

「でも、それじゃあ、悪い気がして」


和彦はもう一度デコピンをしようとしてきたので、私は両手で額を隠して少し和彦から離れた。


「だから、バカだろ、麻美は。天然にしてもほどがある。そこでフォローしなきゃ下平さんも落ちなかったのに」

「ねえ、私が下平さんを落としたみたいな言い方しているけど、どこをどう取ったらそうなるのよ。全然そんな行動をした覚えはないんだけど」


私がそう言ったら和彦は今度はわざとらしい溜め息を吐いた。


(く~、腹立つ~!)


「一つ一つあげなきゃわからないのかよ。水族館と博物館での行動はまだいいんだよ。その後の昼を食べた時。何が残すのが嫌だから、だ。嫌われたかったらそこで減らさずに残せ。そんな気遣いが出来る時点でマイナスになるか。あと、会話。なんで普通に会話してんだよ。どうせなら不機嫌丸出しでいるか、話し掛けられても返事をしないとかすればよかったんだよ。ああ、相手に悪いからとか言うなよ。麻美のその考え方は普通に正しいけど、嫌われたかったら逆効果だからな」


目からウロコ・・・。私が常識的に考えたことは、嫌われたい相手には逆効果だったとは。ということは、逆に好感度を上げていたってことなの?


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