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3 ボウリング大会と居酒屋とで

京香さん主催のパーティーから3日後の火曜日、また京香さんに遊びに誘われた。11日後の土曜日にボウリングをしないかとのこと。私は承諾した。


9月の2週目の土曜日。待ち合わせ場所に行った。そこには京香さんのほかに三友紀ちゃんと原田さん、山本さんを含む十数名の人がいた。なんのことはない。京香さん主催のボウリング大会だったのだ。


この大会は個人の得点を争うのとグループの得点を争うことにすると、ボウリング場でグループ分けをした時に京香さんが言っていた。そしてその結果で、この後の食事の時の金額が変わるとも言われたの。


個人の1位は無料、2位は1000円だけ、3位は2000円だけ、グループも1位になったグループは1000円だけ負担すればいいそうだ。残りの人が差額分を均等割りにすると京香さんは言った。


私は三友紀ちゃんと原田さんと山本さんと同じグループになった。原田さんは「頑張ろうな!」と気合が入っていた。


自分たちのゲームを進めながら他のグループを見ていたけど、どのグループも上手い人とそんなに上手くない人が混ざっていて、いい勝負になりそうだ。


私は4回に1回はガーターを出していた。うちのグループの足を引っ張っているな~と思って、申し訳なく思ったの。


私が7フレーム目を投げ終わり、2回ともガーターを出して落ち込み気味に椅子に座ったら、山本さんが話し掛けてきた。


「沢木さん、気にしなくていいよ。どこのチームも似たり寄ったりだからさ」

「でも、せめてガーターは出さないようにしたいかな」

「沢木さんはボウリングをやったことはあったの」

「実は今回が2回目なの。やっぱり見ていてわかるの」

「なんか慣れてなさそうだったから。でも、投げ方は様になっているよ」

「そうかな。自分じゃわからないの。でも、もう少し真っ直ぐに投げたいのに」


そう言ったら、山本さんがコツを教えてくれた。次の私の番の時にその通りに投げたら、ストライクを出した。戻った私にみんながハイタッチをしてきた。私もみんなと手を合わせたの。


「ストライクを出すのってこんなにも気持ちがいいのね。ありがとう、山本さん」

「沢木さんがいい感じに投げれたからだよ」


山本さんの笑顔に私は視線が釘付けになった。しばらく山本さんと見つめ合っていたら、「航平、お前の番だぞ」と、原田さんに言われて山本さんは慌てて立ち上がった。


山本さんはストライクを出せなかったけど、2度目で残りのピンを倒してスペアを出した。

次が私で入れ替わる時に手を出してきたので、私も軽くタッチして入れ替わったの。私もスペアを出すことが出来て、またみんなとハイタッチをした。


次は最後の10フレーム目。私達のグループは誰もストライクが出なかった。

それでも、ボウリングが2回目の私でも97点を取ることが出来た。


結果は私達のグループからは個人の成績優秀者は出なかったけど、グループの方で1位になれた。


場所を居酒屋に移しての食事会。私達のグループは本当に1000円払っただけで、食事を楽しむことができた。座った席もボウリングでのグループごとで、そのグループをよくよく見たら男女が半々だった。


それに何となく見覚えがある人が何人かいることに気がついた。あのパーティーにいた人を見つけて私は思った。今日のこれはあのパーティーの二次会的なものではないかと。


それと、三友紀ちゃんと原田さんが何となくいい雰囲気で話していた。この2週間の間に2人の間に何かがあったのだろう。


必然的に私は山本さんと話をすることになった。だけど、私達の会話は弾まなかった。話をしたくないわけではないのだけど、会話が途切れるとそのまま二人とも口を噤んでしまうのだ。私は次の話のネタを考えるのだけど、思うような言葉が浮かんでこなかった。それは山本さんも同じみたいで、会話が途切れると困ったような顔をしていた。


見かねたのか、三友紀ちゃんと原田さんが話し掛けてきて、4人で会話をしたの。


居酒屋を出て二次会(本当は三次会?)に誘われたけど、あまり遅くなるなと言われていたので、私はこれで帰ることにした。三友紀ちゃんがとても残念がっていた。


「本当に帰っちゃうの」


と、原田さんも残念そうに言ってくれた。


「ええ。申し訳ないのですけど。両親にも早く帰るように言われていますので」

「沢木さんて、もしかしていいところのお嬢さん?」

「違います。そんなことないですよ。少しうるさいだけですから」

「そうかな~」

「本当です。先に何時くらいになると言っておけば、夜遅くなっても大丈夫ですから」


私の言葉に「じゃあさ」とニッコリと笑顔で、原田さんが続けた。


「遊びに誘ってもいいのかな」

「えーと、前もって分かっていれば大丈夫です」

「当日急には駄目なの」

「それは・・・わからないけど、無理な時が多いと思います」


私の曖昧な言葉に、原田さんはもう一度ニッコリと笑った。


「じゃあ、連絡をするね」


私はみんなと別れて帰路についた。


原田さんはああいったけど連絡先を知らないのだから、ただの社交辞令だと私は思ったの。


そう、もう会うことはない人達。


そう思ったら、不意に山本さんの顔が浮かんできた。それと共に今日、彼と過ごしたことが思い出されて、心臓がドキドキとなっているのがわかった。


でも、と思う。


もう会えることはない人なのよ。


と、自分に言い聞かせたのでした。


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