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26 母の暗躍? 親友の策略?

下平さんと会った翌日。千鶴もいるのに、母が朝からうるさかった。


「それで、昨日会った人はどうなんだい」

「う~ん、別に?」

「別にって、何なのよ」

「だから、別に何とも思わなかったのよ」

「それは相手に失礼でしょ。何か思わなかったのかい」


母はしつこく聞きだそうとしてきた。それに千鶴がこんなことを言った。


「おばさん、麻美に聞いてもわからないと思うわよ」

「どうしてなの、千鶴ちゃん」

「あのですね、私も一緒で4人で会ったわけでしょ。そんな状態で相手のことがわかるわけないと思うんですよ」

「そうなのかい。でも、何か印象に残ったこととかないのかい」

「麻美どう?」


千鶴も聞いてきた。目が笑っているから私の答えなんかわかっていることだろう。


「だから、印象も何も二人で話していないから分からないってば」


叫ぶように言ったら千鶴はニヤリと笑った。


「ね、おばさん聞きまして。麻美は今度は二人で会いたいんですって」

「まあ、そうなのかい。それならそういえばいいものを」

「ちょっと待って! 私は会いたいとは言っていないでしょう」


母と千鶴で不穏な方向に話を持っていこうとしているから、私は慌てて口を挟んだ。


「それに一度会ったんだから、断ってよ」

「麻美、相手の為人ひととなりを知る前に断るなんて、相手に失礼よ」

「千鶴、そんなことないでしょう」

「あら、こちらがお願いした話なんでしょう。断るのならあちらからでしょう。もしくはもう一度会ってからよね」

「なんで、そうなるのよ、千鶴」

「それが相手への礼儀だと思わない?」


そう言われて私は黙ってしまったの。確かに千鶴のいうとおりだと思ったから。私の様子を見て千鶴はニッコリと笑い、顔を母のほうに向けた。


「そういう訳でおばさん。相手の方にもう一度会う気があるかどうか、仲介してくれた人に訊いて貰ってくださいね」

「ええ。千鶴ちゃんありがとう」

「いえいえ。じゃあ、麻美はしばらく借りますね」

「ええっ。ゆっくりして頂戴ね」



私の部屋に移動して、千鶴が訊いてきた。


「それで麻美、そんなになるなんて、いったい何があったのか、説明して貰うわよ」

「それよりも、さっきの母とのやり取りは何よ。なんで、もう一度会わなきゃいけなくなるのよ。それに昨夜は何も言わなかったのに何で今聞いてくるわけ」


私はイライラしながら声を荒げた。


「それはさっき言った通りよ。もう一度会って下平さんのことを知ってみるべきだと思ったのよ」

「だから、会う必要はないってば」

「麻美」


千鶴が少し強めの声を出した。こういう声を出すときの千鶴には逆らわない方がいいと経験上知っているから、私は口を噤んだ。


「麻美は異性を知らなさすぎるのよ。いい機会だから普通の男の人を勉強してきなさい」

「そんなことないよ。男の人なら知っているもの」

「例えば?」

「恭介とか智樹とか」

「それは知っているうちに入らないでしょ。というか、あいつらは男の人じゃないわよ。学友。そこを間違えないの」

「でも、異性じゃない。どこが違うの」

「大違いでしょ。麻美、本当はわかっているんでしょ」


黙ってしまった私の事を見て、千鶴は溜め息を吐いた。


「ねえ、私は昨日麻美に会って驚いたのよ。なんでこんなに痩せちゃったのよ。それに眠れてないんでしょ。目の下に隈がすごいもの。昨夜だって麻美は何度も目を覚ましてたみたいじゃない。本当にさ、何があったの」


だから千鶴は突然泊まるなんて言ってきたのかと思った。


「そんなにひどい顔しているかな」

「まあね。心配するレベルにはね」


私も大きくため息を吐き出した。


「本当に大したことじゃないのよ。ただ、彼・・・山本さんと喧嘩しただけなの」


千鶴にそう言いながらも、あれは喧嘩になるのだろうかと思う。一方的に怒らせただけのような気がするし。


「喧嘩って、どんなことで」


私は2週前のことを話した。会った時から少し機嫌が悪い感じがした事。手作りチョコを喜んでくれたこと。黙っているつもりだった昨日のことを話したら怒りだしたこと。


「うっわ~、ちっさい男ね」

「そんなことないよ。交際相手が見合いだなんて、私だっていやだもの」

「でも、事情があってしょうがないことじゃない」

「そうなんだけど・・・。それで、このままは嫌だったから私から電話を掛けたりしたのだけど、結局喧嘩別れになっちゃったし」

「何を言ったのその男」

「お見合いをするのなら、それが済むまで会わないって」

「うわ~」


千鶴は引いた顔をしている。


「それに・・・なんか訳が分からないことを言われたの」

「どんな」

「俺以外のやつには笑顔を見せるとかなんとか」

「麻美は彼に笑顔を見せてないの」

「そんなことはないと思うけど、彼がいう俺以外のやつに心当たりがなくて」


本当にそこがわからない。


「ねえ、その喧嘩した日に彼と一緒に、誰か知り合いに会ったりしなかった」

「ううん。出掛けた先では車から降りずに話をしていたから。でも、彼が迎えに来る前に和君とおじさんに会ったけど」


思い出しながらそう答えたら。


「それよ。きっと麻美が和彦と話しているのを見たのよ」

「でも、すぐに別れたのよ。おじさんも和君も車から降りてこなかったもの」

「だけど、それしか考えられないでしょ。きっと和彦と親しく話していたから嫉妬したのね」

「私は助手席のおじさんと話していたのよ」

「それって他からはわからないんじゃないの」

「じゃあ、なんで和君だと思ったのかな」

「会ったのって公民館のところ? じゃあ、麻美の家に行くためには右に曲がるから、運転席が後ろの車から見えるわね。和彦って整った顔をしているから、嫉妬してもおかしくないわよ」


千鶴の言葉に信じられない思いで凍り付いた私でした。


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