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23 風邪の見舞いに来た友人の爆弾発言! 後編

睨むように私の事を見つめている千鶴に、和彦がやんわりと声を掛けた。


「まあまあ、千鶴。それは別の時に話そうか」

「なんでよ。ちょうど良いから麻美に徹底的に教え込もうと思うんだけど」

「あのな、それをされると話が進まなくなるんだよ。俺は言ったよな。話が終わるまで口を挟むなって」

「さっきまでは挟んでたけど何も言わなかったじゃない」

「それは相槌だったからだな。脱線させるならもう話さないけど」


それは困ると、私は視線に込めて千鶴のことを見つめた。千鶴は一度大きく息を吸ってから、フウ~と吐き出した。


「ごめん。続きをよろしく」

「ああ。で、麻美、お前は否定するけど、周りから見ればお前は十分箱入り娘だよ。資産家とはいわないけど、それなりの家と見られている。それは判ったな」

「・・・納得は出来ないけど・・・判った」


私は渋々頷いた。


「でも、彼は家にきたことないのよ」

「デートの後に家まで送ってもらってないのか」

「そこの広い通りまで。うちの前の道って狭いじゃない。なんか家の前まで送ってもらうのは悪くて」

「・・・それは、おじさんも知っているのか」

「うん。話した」


和彦の眉間にしわが寄った。


「それじゃあ、おじさんが会いたくないと言い出すわけだ」

「どうして」

「近いったって通りから家までかなり暗いだろ。女の子を一人で歩かせるなんて父親としては許せないだろう。この道は狭いけど、車で通れないわけじゃない。夜なら対向車の心配はないだろうから家のところまで、送ったっていいわけだ」

「でも、それは私がいいって言ったから」

「麻美がいいって言っても、送るべきだ。そいつは配慮が足りなさすぎる。おじさんが麻美のことを大事にされてないと考えるのも、もっともだと思うぞ」


えっ? 父さんはそんな風に思っていたの?


「ああ、そうなのね。だから麻美にお見合いをさせようと考えたんだ」

「そうだろうな」


だから、私が帰ってくるといつも玄関にすぐにきていたの? 車の音がしないかと耳を澄ませて?


「ねえ、でもさ、和彦が彼の気持ちがわかるって言ったのって、まだ何かあるんでしょう。今のはおじさんの気持ちなんだし」

「ああ。その前にさ、千鶴は彼氏とのつき合いってどうなっているんだ」

「はあ~? なんでいきなり私に話を振るのよ」

「いや、だから、お前は彼氏を家族に紹介しているかどうかが知りたいんだけど」

「そうならそうと。えーと、今まで母親に合わせたのは一人だけね。って、あら」

「そうだろう。麻美の家がそういうことをちゃんとしたい家なのはわかっているけど、先のことを考えていない『おつき合い』の状態で彼女の家に行くのは、彼的に重いんだと思うな。俺も大学の時につき合った彼女の家に、挨拶に行くことを考えたことがあったけど、結局行かずじまいで別れたしな」


和彦の言葉に頷きながら私は言った。


「そうでしょ。私もそう思っていたから、両親にはまだ早いと言っていたのよ」

「だけどな、それはケースバイケースだよ。麻美の両親が気にしている時点で、一度顔を見せにくればよかったんだ。別に麻美の両親も顔を合わせたからって、すぐに別れろなんて言わないだろう。ただそいつの人柄を実際に見て知りたかっただけだ。それが出来ない時点で、おじさん達の気持ちはマイナス方向に傾いても仕方がないと思うな」


和彦の説明はわかりやすかった。わかりやすい分、自分の気付かなさに嫌気が差してくる。


「麻美、そんな顔をするなよ。まだおじさん達も本気で麻美と彼とを別れさせようとしてないだろ。とにかく一度顔を見れば安心するだろうから、彼氏を連れてくればいいんだよ。お見合いだって本気じゃないだろうし。伯父には俺から言っておくからさ」


多分情けない顔になった私に、和彦が元気づけるように言ってくれた。


「そうよ。おじさんもおばさんも、麻美のことを心配しているだけなんだから。顔を知らないと安心できないだけよ。連れてきて顔を合わせたら、すぐに出掛けちゃえばいいのよ」


千鶴も軽い調子で言ってきた。私は引きつった笑いを口元に浮かべると、力なく言った。


「もう、遅いかも」

「遅くないわよ。なんなら私に会わせなさい。その男の首根っこを押さえてでも、麻美の両親と会わせてあげるから」


千鶴が頼もしく言ってくれたけど、私は首を横に振って言葉を続けた。


「もう、会う約束をさせられているの」

「誰と」

「見合い相手と」

「誰が?」

「私が」


千鶴と和彦は顔を見合わせた。そうして二人して口をそろえていった。


「「はあぁ~?」」


もう一度二人は顔を見合わせると矢継ぎ早に言い出した。


「なんなのよ。それは」

「どこの誰と見合いすんだよ」

「どういうことなのよ」

「誰の紹介なんだ」

「麻美はいいわけ」

「いつ会うんだよ」

「親の言いなりになるの?」

「そんな見ず知らずのやつとするんなら俺でもいいだろ」

「ああ、もう。和彦、うるさい!」

「千鶴のほうがうるさい!」


コンコン


返事をしようと息を吸ったら、不意に咳が出た。


コンコンコン

ゴホッ ゴホッ

ゲホッ ゲホッ ゲホッ


発作のように咳が続く。喉に張り付くような感じがして、気道が半分塞がれたような気分になる。咳の合間に息を吸おうとしてヒューヒューと音がなる。


「麻美! 大丈夫」


千鶴が背中をさすってくれたけど、中々咳が止まらない。5分近く続いた咳に、涙が滲んできた。

和彦が水を持ってきてくれて、それを飲んだら横になるように言われたの。

二人はそのあとすぐに「話はまた聞くから」と言って帰って行ったのでした。


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