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225 親友は最強!(明日のために)その6 & 父との会話

頼もしい千鶴の言葉に涙が出そうになった。私以上に私のことをわかってくれているのではないかと、思う時があるのよね。


「まあねえ、言えないっていうのはわかるんだけどね。でも、修二のこともあったんだからさ、教えておいてほしかったわね。結局どうしようもならなくてSOSを寄越したんだしね」

「うっ・・・ごめん」

「もういいわよ。それよりも、明日の朝、どうするのよ。それを決めないと眠れないでしょう」


私は枕元に置いてある目覚まし時計を見つめていた。もう23時10分を過ぎているものね。


「そうだね。でもどうすればいいかな」

「おじさん達は麻美が下平さんとバカ彦に普通に接することを望むわよね。どう、できそう?」


改めて言われると困ってしまう。私は怒っているわけではない。ただ浩二さんが私の味方をしてくれなかったのが悲しかったのだ。


「わからない」

「まあ、そうでしょうね。それじゃあ、出たとこ勝負にしましょう。麻美が二人のことを許せそうになかったら、私がフォローしてあげるわね」

「ごめん。面倒をおかけします」

「それはいいからね。でも、下平さんにはどうするか決めておきなさいよ」

「う~ん」


私は枕に顔を埋めるように突っ伏した。隣からため息が聞こえてきた。


「まあ、仕方がないか。できるところはフォローしてあげるから、もう寝ましょう。お休み、麻美」


千鶴はそういうと目を閉じた。私も「おやすみ」と言って、千鶴に背を向けるようにして、目をつむったのでした。



目覚ましが鳴る直前のカチッと針が合わさる音で、私は目を覚まして目覚ましを止めた。時間は4時10分。私は千鶴を起こさないようにそっと起きて、着替えをすると下に降りて行った。台所に行くと、ちょうど父も起きてきたところだった。お互いに無言のまま勝手口から外に出た。


父がいつものように運転席に座った。私もおとなしく助手席に座っていた。車の中には深夜ラジオが流れていた。


行きはお互いに何も話さなかった。帰り道、家まで半分くらいのところで父がボソッと言った。


「昨日は悪かった。麻美に黙って浩二君を家に入れるようなことをしてな。母さんにも怒られたよ」


普段は滅多に自分の非を認めない父が謝っている。驚きに思わず父の顔を凝視してしまった。


「どうしたの、父さん。母さんに言われたって何を」

「その、昨日の麻美の態度には、理由があったんだろうって。それを頭ごなしに怒るのは違うだろうと、な」


私はその言葉にまたびっくりした。母は父に絶対服従というわけではないけど、滅多に意見を言うことはなかったから。私が言葉を返せずにいたら、気まずさを誤魔化すためか、尚更父が話してきた。


「それに麻美も和彦と何があったのか、言わなかっただろう。仲違いをしたにしても、克義君にも協力を頼んだくらいだから、仲直りをする気があったと思ったんだよ。それなのに麻美が不貞腐れたような態度でいただろう。克義君に申し訳ない事をした気がしてなあ。つい、麻美にきつい言い方をしてしまったんだ」


私も中途半端にしか話してなかったから、父がそう考えたとしても仕方がなかっただろう。


「えーと、ごめんなさい。その、昨日は、浩二さんがいるとは思わなかったから、驚いたのよ。そうしたら、なんか和彦と結託して、半日休めたことを黙っていたらしくてね。それが悔しいというか、悲しいというか、気持ちがぐちゃ~となっちゃったのよ」


大元のことを言えるわけがないから、昨日の私が気分を害した部分だけを話した。そうしたら、少し黙った父がボソッと言った。


「ということは、浩二君を手引きした俺も悪いが、浩二君をそそのかした和彦が悪いと。それじゃあ、和彦が麻美を怒らせるようなことをしたんだな」

「ちょっと、お父さん。手出ししないでよね」

「どうして。人をだまくらかすようなやつを庇うのか」

「いや、これは私と和彦の問題だから。というかさ、やっぱり浩二さんを手引きしたのは父さんだったんじゃん。そこはちゃんと反省してよ」

「だが、娘にちょっかいだしてそのままにするのも」

「いや、だから、論点をすり替えないでよ。大体ねえ、いつの間に浩二さんをこっそり家の中に入れる約束をしたわけ? こっそり家に入れなきゃ、私が盗み聞きに怒ることもなかったのよ。浩二さんのことを信じられなくなって、結婚をやめることになったらどうするつもりだったのよ」


私の言葉に青くなった父は、家に着くまで自分が悪かったことと、浩二さんとの結婚をやめるなどと言わないでくれと、懇願してきたのでした。



家に戻ったのは5時20分。二階に行って眠る気になれなくて、少し早いけど朝ご飯の支度をしようかと思った。その前に洗濯機を回そうと洗面所にいたら、声をかけられた。


「麻美」


振り向くと浩二さんがそこにいた。洗面所に入ってくると、戸を閉めた。昨夜はあまり眠れなかったのだろう。目の下に隈が出来ていた。


「昨日はごめん。麻美の気持ちを考えてなかった。あんなことがあって、和彦君と平気で会えるわけがないと、思い至らなかった。本当にごめん」


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